製造業の品質管理とは|中小工場が最初に整える基準・検査・記録の進め方
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

この記事は製造業のAI活用・業務効率化 完全ガイドの一部です。
結論
検査を増やす前に、不良を数えて基準を直す
品質管理は、検査担当の仕事ではなく、基準・記録・見直しをつなぐ工場全体の仕組みです。まず1か月、不良の種類と件数を数えることから始めてください。
- 品質管理は、基準を決める、つくって測る、ばらつきを見る、直して基準に戻す、の4つを回し続けることです
- 検査は受入・工程内・出荷の3か所に置けます。不良の原因に近い所から整え、自社の加工に原因があるなら工程内検査、外注品や材料に原因があるなら受入検査からです
- 道具はチェックシート・パレート図・特性要因図の3つから始め、一番多い不良1種類から直します
- 数値で測れる合否は標準化し、数値にしにくい判断は担当を見える形にして残します
「検査は厳しくしているのに、不良が減らない」「ベテランが休むと品質がぶれる」「何から手をつければいいか分からない」。中小の製造業の現場で、よく聞く悩みです。この記事では、製造業の品質管理とは何か、品質保証や検査とどう違うのか、中小工場が最初に整える順番を整理します。
品質管理とは|品質保証・品質検査との違い
品質管理とは、お客様の求める品質を満たす製品を、安定してつくり続けるために、製造の現場で行う活動の全体です。検査はその一部で、検査だけを厳しくしても品質は安定しません。JIS Q 9000では、品質管理を「品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部」、品質保証を「品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部」と定めています。
| 言葉 | 中心になる問い | 現場での例 |
|---|---|---|
| 品質管理 | 決めた品質を、毎回つくれているか | 作業手順の決定、測定、ばらつきの確認、手順の見直し |
| 品質保証 | つくれていることを、お客様に示せるか | 検査成績書、工程の記録、監査への対応、クレーム対応 |
| 品質検査 | この製品は基準を満たしているか | 受入・工程内・出荷の合否判定 |
中小製造業では、品質管理・品質保証・品質検査の3つが「検査担当の仕事」にまとめられていることがよくあります。ただ、不良を減らす力があるのは品質管理のうち「基準を決める」「原因を直す」の部分です。検査だけでは不良は減りません。結果を原因の修正につなげて初めて減ります。
品質管理の基本の流れ|基準を決め、測り、直して、基準に戻す
品質管理の基本はPDCA(計画・実行・確認・処置)です。製造現場では、基準を決める、つくって測る、ばらつきを見る、直して基準に戻す、の4つを繰り返す形になります。
1. 基準を決める
何を良品とし、何を不良とするかを、数値か写真で決めます。「きれいに仕上げる」のような言葉の基準では、人によって合否がぶれます。寸法なら公差、外観なら限度見本の写真など、誰が見ても同じ判定になる形にします。
2. つくって測る
決めた手順で作業し、測定値や合否を記録します。記録が無いと、3の段階で何も分かりません。紙でも構いませんが、あとで集計できる形で残すことが条件です。
3. ばらつきを見る
記録を集め、どの不良が多いか、どの工程・設備・担当・ロットに偏るかを見ます。ここで使うのが、後で説明するQC七つ道具です。
4. 直して基準に戻す
原因が分かったら、作業手順や基準そのものを書き換えます。「次から気をつけよう」で終わらせると、担当が替わった時にまた同じ不良が出ます。手順書に反映して初めて、直したことになります。
検査を置く3つの場所|受入・工程内・出荷
検査は置く場所によって役割が違います。3か所すべてを一度に整える必要はなく、不良の原因に近い所から始めます。
- 受入検査:購入した材料や外注した部品を受け取るときの検査です。外注先の不良を自社の工程に持ち込まない関門になります。
- 工程内検査:つくっている途中で測る検査です。不良が出た時点で止められるので、手戻りが小さく、原因もたどりやすくなります。
- 出荷検査:お客様に出す前の最後の検査です。ここで見つかると、すでに加工が終わっているので、作り直しの量が一番大きくなります。
検査の記録を紙から入力画面へ移す手順は、品質検査の電子化の進め方に分けてまとめています。
不良の原因を見つける道具|QC七つ道具のうち、まず使う3つ
QC七つ道具は、チェックシート、パレート図、特性要因図、ヒストグラム、散布図、管理図、層別の7つです(グラフ・層別の入れ方には流派があります)。7つすべてを使う必要はありません。筆者の支援経験では、次の3つから始めれば足りる現場が多くあります。
| 道具 | 使い方 | 最初の一歩 |
|---|---|---|
| チェックシート | 不良の種類と件数を、その場で数える | 不良を「傷」「寸法」「欠け」など5種類程度に分けて、正の字で数える |
| パレート図 | 件数の多い順に並べ、効く所を絞る | 1か月分のチェックシートを多い順に並べ、上位2〜3種類だけ直す |
| 特性要因図 | 原因の候補を、人・機械・材料・方法で洗い出す | 上位の不良1種類について、現場で「なぜ」を出し合う |
パレート図は、不良の種類を件数の多い順に並べた棒グラフです。上位の少数の種類が不良全体の大部分を占める傾向があるので、全部を直すのではなく、上位から直すのが近道になります。不良率や歩留りの数字の取り方は、歩留り率・不良率の見える化で詳しく扱っています。
品質管理が回らなくなる現場のサイン
製造業の支援では、次のような状態の工場で、品質管理が「検査担当の個人技」になっていることが多くあります。
- 検査記録がExcel・紙・口頭で回っていて、不良が出たときにロットの記録を探すのに時間がかかる。
- 担当者ごとに合否の判断ややり方が違い、同じものが人によって通ったり弾かれたりする。
- 不良の原因が、設計・購買・製造・出荷と複数の部門にまたがり、会議をしても誰の宿題か決まらない。
- 手順書はあるが、現場の実態と合っておらず、新人は先輩の動きを見て覚えている。
1つでも当てはまるなら、検査を増やす前に、業務の流れを整理するほうが先です。
標準化する所と、人の腕として残す所を分ける
品質管理を進めると、必ず「ベテランの勘をどうするか」で止まります。製造業の現場を支援する立場から見ると、全部を標準化するか、全部を人に任せるかの二択にしないほうがうまくいきます。考え方の目安は、7〜8割は手順と基準に落とし、残りの2割は個人のセンスとして、誰がどの工程を担うかが見える形にしておく、というものです。これは支援先での経験にもとづく目安で、割合に統計的な根拠があるわけではありません。
| 標準化する(7〜8割) | 人の腕として残す(2割) |
|---|---|
| 寸法・重量など数値で測れる合否基準 | 微妙な色合い・風合いなど、数値にしにくい外観の判断 |
| 検査の頻度・タイミング・記録項目 | 材料のくせに合わせた段取りの微調整 |
| 不良が出たときの連絡先と止める基準 | ベテランが持つ不具合の予兆の勘(言葉にして記録する努力は続ける) |
残す2割は、放置するのではなく「この判断はこの人が担当している」と見える状態にします。見えていれば、その人が休んでも代わりを決められます。スキルの継承の進め方は技能伝承のデジタル化に書いています。
自社の業務とデータの詰まりを診断する
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中小製造業が品質管理を始める5つの手順
- 不良を数える:1か月、不良の種類と件数だけを、現場で記録します。精度より続けることを優先します。
- 上位の不良を1つ選ぶ:パレート図の考え方で、一番多い不良を1種類だけ選びます。
- その不良の工程の流れを書く:工場全体ではなく、選んだ不良に関わる部分だけ書きます。
- 基準と手順を直す:合否基準を数値か写真にし、手順書に反映します。
- 1か月後に件数を比べる:同じ方法で数え直し、減ったかを確かめます。
品質管理を始める手順のうち「不良の工程の流れを書く」では、工場全体を書き切ろうとせず、不良の多い工程だけを書けば足ります。全体を書こうとすると、書き終えるまでに長い時間がかかるためです。支援先のある製造業では、営業から納品まで順に業務フローを書いていたところ、長期間かかる見込みになり、全体の地図を見てから問題のある所だけを書く進め方に見直しました。品質管理でも同じです。書き方は製造業の業務フローの見える化を参考にしてください。
効果は、不良件数、手直しにかかった時間、お客様からのクレーム件数の3つで測ります。数字は「直す前の1か月」と「直した後の1か月」を同じ数え方で比べます。
品質管理の記録は何を残すか|原因探しに使う項目だけに絞る
記録が増えると、今度は誰も見ない記録が増えます。支援先の製造業の社長に、日報を読んでいるか聞くと、少し黙って「正直、読めていない」と答えたことがありました。品質記録も同じで、項目が多いほど現場は埋めることが目的になり、見直しに使われなくなります。記録項目は、不良の原因を探すときに実際に使うものだけに絞り、3分で書ける量を上限の目安にします。整理整頓から始める場合は5Sの仕組み化も役立ちます。
まとめ|品質管理は、検査を増やす前に基準を直す
製造業の品質管理は、基準を決め、測り、ばらつきを見て、基準に戻す活動です。検査を増やす前に、不良を数え、上位の1種類から手順を直すところから始めてください。SalesDockは、経営管理・業務・データ・仕組みが成長に追いついていない中小企業に、業務を整理してから仕組みを入れる形で伴走しています。品質管理も、まず業務の流れの整理から取りかかります。製造業の業務改善の全体像は製造業のAI活用・業務効率化 完全ガイドにまとめています。
定義はJIS Q 9000(品質マネジメントシステム 基本及び用語)にもとづきます。規格は改定されるため、最新の内容は日本規格協会などの公表元でご確認ください。
よくある質問
品質管理とは何ですか?
お客様の求める品質を満たす製品を、安定してつくり続けるために行う活動の全体です。基準を決める、つくって測る、ばらつきを見る、直して基準に戻す、の4つを繰り返します。検査はその一部です。
品質管理と品質保証の違いは何ですか?
品質管理は決めた品質を毎回つくれているかを管理する活動、品質保証は、つくれていることをお客様に示して確信してもらう活動です。JIS Q 9000でも別の定義が置かれています。現場では、品質管理が日々の作業と記録、品質保証が検査成績書や監査対応にあたります。
中小製造業は品質管理を何から始めればいいですか?
不良の種類と件数を1か月数えるところから始めます。一番多い不良を1種類選び、その工程の合否基準と手順を直します。工場全体の仕組みを先に作ろうとせず、1つの不良で回してから広げるほうが定着します。
QC七つ道具は全部使う必要がありますか?
全部は必要ありません。チェックシート、パレート図、特性要因図の3つから始めれば、不良の数え方、絞り方、原因の探し方がそろいます。必要になったらヒストグラムや管理図を足します。
ベテランの勘は標準化したほうがいいですか?
数値で測れる部分は標準化し、色合いなど数値にしにくい判断は、誰が担当するかを見える形で残すのが現実的です。支援の経験上の目安は、7〜8割を標準化、残りの2割を個人の腕として扱うことです。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
代表者情報を読む →この記事の数値について
本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。
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