MAとCRMの違い|中小企業がどちらから入れるかを決める5つの確認
マーケ専任がいない会社の順番の決め方
MAとCRMの違いと、入れる順番の結論
MAとCRMは役割が違うので、最終的に両方使う会社は多いです。ただ、マーケの専任がいない、あるいは1人という規模で2つ同時に入れると、2つとも入力が止まります。順番を決めるか、まだ入れないかを先に決めたほうが、費用も手間も少なく済みます。
- MAは見込み客への接触を自動で回す道具、CRMは顧客との関係と履歴を残す道具
- 既存顧客からの追加受注が伸びしろならCRMから、見込み客の入り口が複数あって送る中身を作れる人がいるならMAから
- 名簿が散っていて中身を作る人もいないなら、どちらも入れずに表計算で名簿を1つにするほうが早い
展示会でもらった名刺が箱に溜まっている。問い合わせフォームからのメールは受信箱に埋もれている。前に見積もりを出した会社の一覧は、担当者ごとのExcelにある。この状態で「メルマガを出したい」と社内で言うと、MAの提案とCRMの提案が同時に来ます。
どちらも役割が違うので、両方を薦められること自体は間違っていません。この記事では、違いを短く整理したうえで、どちらから入れるか、まだどちらも入れないかを決める確認事項を書きます。案件そのものをどう管理するかを先に整えたい場合は、営業案件管理の設計(ステージ・確度・停滞をどう決めるか)を読むと、この記事の前提が揃います。
MAは見込み客への接触、CRMは顧客との履歴
MA(マーケティングオートメーション)は、まだ取引していない見込み客に対して、メールやフォームでの接触を自動で回す道具です。名簿に条件を決めて配信し、開いた人・クリックした人・資料を受け取った人を記録して、条件に当てはまった人を営業へ渡します。
CRMは、顧客との関係と履歴を1箇所に残す道具です。誰がいつ何を買ったか、社内の誰が対応したか、次に何をする約束をしたか。人が入力するか、他のシステムから流れ込んだものが積み上がります。
違いはここまでです。MAは接触を増やす側、CRMは接触の結果を残す側。ややこしいのは、この2つの間にSFAという3つ目の道具があって、商談の進み方を管理する役割を持っていることです。線引きはSFAとCRMの違い(どちらを先に入れるかの判断)に書きました。MAとCRMで迷っているつもりで、足りていないのはSFA側の商談管理だった、ということもあります。
どちらから入れるかを決める5つの確認
製品を比べる前に、自社の状態を5つ確認します。当てはまるものに印を付けて、印が多かった列がいまの答えです。
| 確認すること | CRMから | MAから | まだどちらも入れない |
|---|---|---|---|
| 見込み客の入り口が何本あるか (Webフォーム・展示会・紹介・電話) | 紹介と既存顧客からがほとんど | 3本以上あり、月に何件来たかを言える | 1本もない、または件数を誰も数えていない |
| 名簿が今どこにあるか | 個人のExcelと名刺に散っていて、社内で共有できていない | 1箇所にまとまっていて、重複を消したことがある | そもそも一覧になっていない |
| 送る中身を作り続ける人がいるか | いない(CRMは中身がなくても回る) | 社内にいる、または外注先が決まっている | いないし、決める予定もない |
| 商談になったかを誰かが判定しているか | 営業が個別に判断していて記録が残らない | 判定する人と基準が決まっている | 誰も判定していない |
| 伸びしろはどちらか | 既存顧客からの追加受注 | 新規の獲得 | どちらとも言えない |
CRM列に3つ以上ならCRMから、MA列に3つ以上ならMAからです。どちらの列も3つに届かず、右端の列に印が付くなら、順番の問題ではありません。3行目と4行目が両方とも右端になる会社は特に多く、この状態でMAを入れると次の節の形で止まります。
まだどちらも入れないときに、先にやる3つ
「入れない」は先送りではなく、入れる前に済ませる作業がある、という意味です。次の3つは道具を買わずにできて、後でどちらを入れても無駄になりません。
名簿を表計算で1つにする。名刺・受信箱・個人のExcelから、会社名・部署・氏名・メールアドレス・入り口・最後に接触した日の6列だけを1枚に集めます。列は増やすほど埋まらないので、最初はこの6列で止めます。ここまでで、重複と、連絡先が古くて届かない先が見えます。表計算のままどこまで回せるかと、移すべきタイミングの見分け方はCRMをスプレッドシートで代替する(限界の見極めと移行を決める3つのサイン)に書きました。
入り口を1本に絞る。Webフォーム、展示会、紹介、電話。すべてを同時に増やそうとすると、どれも中途半端に終わります。いま一番件数が多い入り口を1本選んで、そこだけ件数を毎月数えます。数えるだけで、翌月に何をすればいいかが決まります。
判定する人を決める。受け取った問い合わせや名刺を、商談として追うか追わないか。この判定を誰がやるかを名前で決めます。「気づいた人がやる」は繁忙期に必ず止まります。判定基準は最初は粗くてよく、「予算の話が出たか」程度で構いません。
MAが空回りする3つの条件
MAが悪いのではなく、動かすのに要るものが揃わないと空回りします。逆に言えば、次の3つを埋められるならMAは効きます。
送る中身を作り続ける人がいない。MAが自動化するのは配信と記録で、書く作業は残ります。最初の3本は勢いで書けますが、4本目から止まります。誰が、月に何本、いつ書くかを決めていないなら、配信は数ヶ月で止まります。
名簿の入り口が1本もない。MAは名簿が増えることを前提にした道具です。手持ちの名刺を全部入れて配信し終わると、次に送る相手がいません。先に入り口を作るほうが早いです。
商談化の判定を誰もしていない。MAは「この条件に当てはまった人を営業へ渡す」ところまでやります。渡された側が何をするか決まっていないと、渡した件数だけが増えて、受注につながったかが分かりません。渡す基準と、渡された後の初動を先に決めます。
2つを一緒に使うなら、同じキーで追えるかを先に決める
MAとCRMを併用するときに最初に決めるのは、連携の方法ではなく、見込み客と顧客を同じキーで追えるようにすることです。MA側の「まだ買っていない人」と、CRM側の「買った会社」が別々の名前で入っていると、連携させても2つの名簿が並ぶだけになります。
安易にメールアドレスをキーにすると、次のことが起きます。担当者が異動や退職で変わると、同じ会社なのに別人として2件になります。個人のGmailで問い合わせた人が、商談になってから会社のアドレスで返信してくると、これも別人として増えます。問い合わせフォームに info@ のような共有アドレスを入れる会社もあり、この場合は複数の人が1件に潰れます。姓が変わってアドレスごと変わることもあります。
対処は、会社を表すキーと、人を表すキーを分けることです。会社側は自社で採番する取引先コードを持ち、人側はその取引先コードにぶら下げます。メールアドレスは連絡手段の1つとして持ち、キーには使いません。この採番と項目の決め方はCRM構築前に作るデータ定義書の7項目にまとめています。会社名の表記ゆれで同じ会社が2件に見えるところまで来ているなら、CRMのデータが検索で出てこない原因は命名規則も合わせて確認してください。
効果は開封率ではなく、4つの件数で測る
開封率やクリック率は管理画面に最初から出てくるので、そのまま効果の指標にされがちです。ただ、これらは配信の巧拙を測る数字で、受注が増えたかとは別です。次の4項目を導入前に1回測っておくと、数ヶ月後に比較できます。
- 名簿の重複件数(同じ会社・同じ人が何件重なっているか)
- 入り口別の件数と、そのうち商談になった件数
- 配信した後に、人が電話や訪問で接触した件数
- 既存顧客からの追加受注の件数
3つ目を入れているのは、MAが渡した先で人が動いていないなら、開封率が上がっても受注は増えないからです。導入前に測るのが要点で、後から測り始めると比べる相手がなくなります。
自社の条件と設計例を並べて比べる
架空の条件で作った設計例を10ページにまとめた資料です。入力・確認・人の判断の分け方を、自社の名簿と商談の流れと突き合わせるときに使えます。製品比較の資料ではありません。
無料でダウンロード来週の一歩:名簿がいま何箇所にあるかを数える
比較サイトを開く前に、名簿の置き場所を数えます。問い合わせフォームの通知メール、展示会の名刺、営業担当それぞれのExcel、会計ソフトの取引先一覧。数えると、たいてい4箇所から6箇所出てきます。
そのうえで、それぞれ何件入っていて重複がどれくらいあるかを見ます。1箇所しかない会社は、MAでもCRMでも入れやすい状態です。散っている会社は、道具を入れても置き場所が1つ増えるだけなので、先に寄せます。手持ちのリストを使い切る側から整えたい場合は、営業リスト1000件をCRMなしで回す設計が近い話です。
数えたうえで判断が分かれる場合は、オンライン相談で、名簿の置き場所と入り口の本数を持ち寄って整理することもできます。製品の選定を代行するものではありません。
よくある質問
MAとCRMはどちらを先に入れるべきですか?
既存顧客からの追加受注が伸びしろで、名簿が個人のExcelや名刺に散っているならCRMからです。見込み客の入り口が複数あり、名簿は1箇所にまとまっていて、送る中身を作り続ける人がいるならMAからです。どちらも当てはまらないなら、順番の問題ではありません。表計算で名簿を1つにして、入り口を1本に絞るほうが先です。
MAツールを入れれば、メルマガの中身も自動で作れますか?
作れません。MAが自動化するのは、誰にいつ送るか、送った後に誰が何を開いたかを記録することです。何を書くかは人が決めます。月に1本でも書き続けられる人が社内にいるか、外に頼むなら誰にいくらで頼むかを先に決めてください。ここが決まっていないと配信は数ヶ月で止まります。
MAとCRMが一体になった製品を選べば、この判断は不要になりますか?
製品が1つになっても、見込み客と顧客を同じキーで追えるかどうかは自社で決めます。一体型はキーの設計を初期設定として提示してくれるだけで、自社の名簿がその形になっているかは別の話です。会社を表すキーと人を表すキーを分けるかどうかは、一体型でも先に決めます。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
代表者情報を読む →この記事の数値について
本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。