町工場がWebで新規問い合わせを月5件獲るためにやったこと
この記事のポイント
従業員12名の金属加工町工場で、HPからの問い合わせゼロから月5件にした6ヶ月間の記録。やったことは4つ—加工事例10本をスマホ撮影して掲載、素材×加工方法の検索対策ページを作成、問い合わせフォームの項目を4つに削減、Googleビジネスプロフィールを整備。費用は約25万円。
「うちみたいな小さい工場のホームページなんて、誰も見ないよ」
ある町工場の社長が、最初に言った言葉がこれだった。従業員12名、金属加工が本業。技術力は確かで、大手メーカーの二次請けを長年やってきた。でも新規の問い合わせはゼロ。仕事はすべて社長の人脈から。HPは10年前に作った「名刺代わり」のまま放置されていた。
そこから6ヶ月後、月5件の問い合わせが来るようになった。やったことは、特別なことではない。この記事ではその過程を、できるだけ具体的に書いてみる。
まず、HPの現状を整理した
最初にやったのは、今のHPが「何を伝えているか」の棚卸しだ。
| ページ | 内容 | 問題点 |
|---|---|---|
| トップ | 会社名と外観写真 | 何を作れる会社なのかわからない |
| 会社概要 | 住所・代表者名・設立年 | 発注判断に使える情報がない |
| 設備一覧 | 機械名がずらっと並んでいる | 発注者は機械名を見てもピンとこない |
| お問い合わせ | メールアドレスが1つ載っている | フォームなし。ハードルが高い |
社長は「いや、見てもらえればうちの技術はわかるから」と言っていた。気持ちはわかる。でも、Webの訪問者は3秒で離脱するかどうかを決める。「見ればわかる」は、残念ながら通用しない。
やったこと1:加工事例を10本、スマホで撮影して掲載した
一番最初に手をつけたのがこれだった。
工場にある完成品を10点選んで、スマホで撮影。それぞれに「素材」「加工方法」「サイズ」「用途」「ロット」を添えてページにした。プロのカメラマンは使っていない。自然光で撮って、背景に白い紙を敷いただけ。
なぜ加工事例が効くのか
発注者がHPを見るとき、一番知りたいのは「この会社にうちの部品を頼めるのか?」ということだ。設備一覧ではそれが判断できない。でも、似た部品の加工事例があれば「あ、これに近いことができるんだな」とわかる。
→ 撮影は社長と現場の方で半日。ページ作成は1日。合計1.5日で10本の事例ページができた
掲載後1ヶ月で、事例ページがHP内のアクセス数トップになった。やはり発注者が見たいのは「何ができるか」の実例だった。
やったこと2:「対応素材×加工方法」のページを作成した
次にやったのは、検索キーワードを意識したページ作りだ。
町工場に発注したい人は、Googleでどう検索するか。「町工場 Web集客」とは検索しない。こう検索する。
- •「SUS304 切削加工 小ロット」
- •「アルミ 精密加工 関東」
- •「A5052 フライス加工 試作」
つまり、素材名と加工方法の組み合わせで探している。だから、その組み合わせごとにページを作った。
| ページタイトル例 | 狙っている検索意図 |
|---|---|
| SUS304(ステンレス)の切削加工 | ステンレス加工を外注したい人 |
| アルミ(A5052)の精密フライス加工 | アルミの試作・小ロットを探している人 |
| 真鍮の旋盤加工—小ロット対応 | 少量で引き受けてくれる工場を探している人 |
各ページには、対応可能なサイズ・公差・ロット数・概算リードタイムを記載した。「見積もりを取る前に、ざっくり判断できる情報」を出すことが大事だ。
→ 5ページ作成。キーワード選定と原稿作成で約3日
やったこと3:問い合わせフォームを全ページに設置し、項目を4つに削減した
元のHPには、問い合わせページが1つだけあった。しかもメールアドレスが書いてあるだけ。これでは問い合わせのハードルが高すぎる。
改善したのは2点。
全ページにフォームへの導線を設置
加工事例ページを見て「ここに頼めそうだな」と思った瞬間に、問い合わせできる状態にした。各ページの下部に「この加工についてのお問い合わせ」ボタンを配置。
フォーム項目を4つに絞った
元々は10項目以上の入力欄を想定していた。社長は「図面も添付してほしい」と言っていたが、最初のハードルを下げることを優先した。
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 会社名 | 法人かどうかの確認 |
| 担当者名 | 連絡先として最低限必要 |
| メールアドレス | 返信用 |
| ざっくりしたご相談内容(自由記述) | 図面はあとでもらえばいい |
→ 項目を減らした結果、フォーム送信率が体感で明らかに上がった。「とりあえず聞いてみよう」のハードルが下がったのだと思う
やったこと4:Googleビジネスプロフィールを整備した
意外と手つかずだったのがこれ。Googleマップで「金属加工 ○○市」と検索したとき、この工場は表示されていなかった。Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)が未登録だったからだ。
やったこと:
- •ビジネスプロフィールを新規登録
- •営業時間・住所・電話番号を正確に入力
- •工場内の写真を10枚アップロード
- •カテゴリを「金属加工業」に設定
- •対応可能な加工内容を説明文に記載
→ 登録から2週間後、Googleマップ経由のHP訪問が発生し始めた
地域密着の製造業にとって、Googleビジネスプロフィールは無料で使える集客ツールだ。特に「近くの加工屋を探している」発注者にリーチできるのが大きい。
6ヶ月後の結果
| 指標 | Before | After(6ヶ月後) |
|---|---|---|
| 月間問い合わせ数 | 0件 | 5件前後 |
| うち見積もり依頼 | — | 2〜3件 |
| 受注 | — | 月1件ペース |
| HP月間アクセス | 約50PV | 約400PV |
月5件の問い合わせのうち、すべてが受注につながるわけではない。でも、今まで完全にゼロだったところから、毎月コンスタントに新規の引き合いが来るようになった。社長の人脈だけに頼らない営業チャネルが1つ生まれたということだ。
受注単価は案件による。ただ、Web経由の問い合わせは「相見積もりの1社」として入ることが多いので、技術力と対応の早さで差別化できれば受注率は上がる。実際、この工場では見積もり回答を24時間以内に返すことを徹底していて、それが決め手になったケースもあった。
かかった費用
| 内容 | 費用 |
|---|---|
| HP改修(デザイン調整・ページ追加・フォーム設置) | 約25万円 |
| 写真撮影 | 0円(スマホで自社撮影) |
| Googleビジネスプロフィール | 0円 |
| 月々の運用 | 自社対応(事例追加・問い合わせ返信) |
HP改修は外注したが、20〜30万円の範囲で収まる。大規模なリニューアルではなく、既存HPに事例ページと素材別ページを追加する形だったからだ。月々のランニングコストはほぼゼロ。事例の追加も、スマホで撮って載せるだけなので自社でできる。
「うちには無理」と思っている社長へ
僕がこの工場と一緒にやってみて感じたのは、必要なのは高度なWebマーケティングの知識ではないということだ。
やったことを振り返ると:
- •自社の加工事例をスマホで撮って載せた
- •検索されそうな素材名・加工方法でページを作った
- •問い合わせフォームを置いて、項目を減らした
- •Googleビジネスプロフィールに登録した
どれも、言われてみれば当たり前のことかもしれない。でも「当たり前のことが当たり前にできていない」のが、製造業のHPの現状だと思う。
完璧なHPを作る必要はない。まずは加工事例を3本載せるだけでもいい。それだけで「何ができる会社なのか」が伝わるようになる。小さく始めて、反応を見ながら足していく。それで十分だ。
「Webから仕事が来るなんて信じられない」—その気持ちはよくわかる。でも、実際に来るようになった工場を僕は見ている。きっかけは、ちょっとした情報の出し方を変えただけだった。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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