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業務改善

介護も歯科も建築も—"Excel地獄"から抜け出せない業界に共通する構造

最終更新 2026年8月11日7分で読める

この記事のポイント

介護・歯科・建築—業界は違ってもExcel地獄の構造は同じ。属人化→フロー不明→DX停滞の悪循環を断ち切る第一歩は、ツール導入ではなく業務フローの可視化から。

業界はまったく違うのに、悩みはなぜか同じ。

「Excelのマクロが壊れて、作った人がもういない」「誰かが列を消して、月次の集計が合わなくなった」—こうした声は、介護でも歯科でも建築でも、驚くほど似ている。

KUIX社の調査によると、Excelでのデータ管理に「限界を感じている」と答えた企業は約70%。それでも過半数が脱Excelを検討していない(出典:KUIX「Excel利用状況調査」2023年)。限界はわかっている。でも代わりがない。この構造こそが"Excel地獄"の本質だと思う。

介護・歯科・建築—それぞれのExcel地獄の実態

介護:利用者ごとのデータがバラバラのファイルに散在

実際に企業から出ている依頼を見ると、「複数のCSVを利用者単位で集約して、各種リストを自動作成してほしい」という内容がある。つまり、利用者一人ひとりのデータが複数のExcelやCSVに分散していて、それを手作業でまとめている状態だ。

厚生労働省の調査では、介護ソフトの導入率は67.5%とされている(出典:厚生労働省「介護現場におけるICT環境の整備状況等に関する実態調査」)。一見高いように見えるが、実態は「ソフトを入れたけど、結局Excelで転記している」というケースが少なくない。ヘルスケア機関全体のDX達成率はわずか46.4%にとどまる(出典:日販テクシード「ヘルスケア機関IT実態調査」2025年)。

歯科:経営データの整理を外部に頼らざるを得ない

歯科医院からは「経営に必要なデータを整理して、分析できる状態にしてほしい」という依頼が出ている。患者数、売上、施術内容—数字は手元にあるのに、それを経営判断に使える形に加工できない。

歯科診療所の電子カルテ普及率は約30%程度で、医科診療所を大きく下回っている(出典:厚生労働省「医療DX推進に関する調査」)。紙とExcelの混在が当たり前の世界では、データを整理するだけで一仕事になる。

建築:積算フォーマットの更新が属人化

建築業界では「積算用のExcelフォーマットをアップデートしてほしい」という依頼がある。積算は建築の根幹だが、そのフォーマットがExcelに依存し、しかも更新できる人が限られている。

総務省の調査によると、建設業で「DXに取り組んでいる」と回答した企業は約20%。6割以上が「今後も予定なし」と答えている(出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」)。業界全体として、デジタル化への踏み出しが遅れている。

業界現場で起きていること実際に出ている依頼
介護利用者一人ひとりのデータが複数のExcelやCSVに分散し、それを手作業でまとめている。ソフトを入れても結局Excelで転記しているケースが少なくない複数のCSVを利用者単位で集約して、各種リストを自動作成してほしい
歯科患者数・売上・施術内容という数字は手元にあるのに、経営判断に使える形に加工できない。紙とExcelの混在が当たり前経営に必要なデータを整理して、分析できる状態にしてほしい
建築積算という根幹業務のフォーマットがExcelに依存し、しかも更新できる人が限られている積算用のExcelフォーマットをアップデートしてほしい

共通する構造:属人化→フロー不明→DX着手できない

業界は違っても、Excel地獄に陥る構造は同じだ。

第1段階:属人化—「この集計はAさんしかできない」「このマクロはBさんが作った」。特定の人に業務が張り付く。

第2段階:業務フローが不明確になる—属人化が進むと、そもそも「誰が」「何を」「どの順番で」やっているのかが見えなくなる。ある製造業の商談でも、まさにこのパターンだった。業務フローが明文化されていないため、DXの着手点がわからない。

第3段階:DXに踏み出せない—フローが不明確なまま「とりあえずツールを入れよう」としても、何を自動化すべきかが定まらない。ツールの話をする前に、業務の流れそのものを整理する必要がある。

AI OCR+RPAで何が変わるか—請求書処理の具体例

構造を理解した上で、実際にどう変えられるのか。わかりやすい例が請求書処理だ。

ある企業では、複数のITベンダーから異なるフォーマットで請求書が届いていた。担当者が1枚ずつ目視で確認し、手入力で会計ソフトに転記する。月末は残業が当たり前だった。

AI OCRとRPAを組み合わせると、この流れが変わる。

  1. AI OCRが請求書を読み取り、フォーマットの違いを吸収してデータ化
  2. RPAが会計ソフトへの入力を自動実行
  3. 人間は例外処理と最終確認に集中

導入効果の実例として、ある企業では月30時間かかっていた請求書入力作業が3時間まで削減された—約90%の時間短縮だ(出典:SmartRead導入事例)。また、医療業界では手書き書類や電子カルテの処理を自動化し、年間約1,800時間の削減に成功した事例もある(出典:RPA Technologies導入事例)。

ただし、ここで大事なのは「AI OCRやRPAを入れれば解決する」という話ではないということ。ツールを入れる前に、「どの書類が」「どこから届いて」「誰がどう処理しているか」を整理しないと、自動化の対象が定まらない。

Excel脱却の第一歩は「業務フローの可視化」

Excel地獄から抜け出すために、いきなり新しいシステムを導入する必要はない。

最初にやるべきことは、今の業務フローを紙に書き出すことだ。

  • 誰が、どんなデータを、どこから受け取っているか
  • そのデータをどう加工して、誰に渡しているか
  • その中で、Excelでしかできない作業は本当にどれか

これをやるだけで、「実はこの転記作業、なくせるのでは」「この集計、自動化できるのでは」という気づきが出てくる。営業まわりの流れを書き出したなら、次の受け皿は複数のファイルではなく1枚のシートになる。ステータスや次回アクション日の持たせ方は営業の案件管理シートを1枚で回す—ステータス・次回アクション日・COUNTIF集計の設計にまとめた。

業務フローの可視化は、外部に依頼するまでもなく、社内のミーティングで始められる。ホワイトボードに付箋を貼って業務の流れを並べるだけでも十分だ。大事なのは、業務を「見える化」して初めて、どこにテクノロジーを入れるべきかが判断できるということ。

まとめ

介護・歯科・建築—業界は違っても、Excel地獄の構造は驚くほど似ている。

  • 属人化が進み、特定の人しか触れないファイルが増える
  • 業務フローが不明確になり、何を変えればいいかわからなくなる
  • 結果、DXに踏み出せないまま、Excelに依存し続ける

この悪循環を断ち切る第一歩は、ツール導入ではなく「業務フローの可視化」。今の仕事の流れを書き出して、どこに無駄があるかを見つけるところから始めてみてほしい。


SalesDockでは、業務フローの可視化から、Excel依存の解消設計、AI活用の伴走支援まで一気通貫で対応しています。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

なぜ多くの業界でExcel依存から抜け出せないのか?

属人化→業務フロー不明確→DXに踏み出せないという3段階の構造が共通しています。特定の人しか触れないExcelファイルが増え、業務の流れが見えなくなり、何を自動化すべきかが定まらない状態に陥ります。

Excel地獄から抜け出す最初の一歩は?

いきなりシステムを導入するのではなく、まず現在の業務フローを紙に書き出すことです。誰が・どんなデータを・どこから受け取り・どう加工して・誰に渡しているかを可視化するだけで、自動化すべきポイントが見えてきます。

AI OCRやRPAを入れればExcel作業はなくなりますか?

ツールを入れれば解決する、という話ではありません。請求書処理であれば、AI OCRがフォーマットの違いを吸収してデータ化し、RPAが会計ソフトへの入力を自動実行し、人は例外処理と最終確認に集中する形にできます。ただしその前に「どの書類が」「どこから届いて」「誰がどう処理しているか」を整理しないと、自動化の対象そのものが定まりません。

業務フローの可視化は外部に依頼しないとできませんか?

外部に依頼するまでもなく、社内のミーティングで始められます。ホワイトボードに付箋を貼って業務の流れを並べるだけでも十分です。誰がどんなデータをどこから受け取り、どう加工して誰に渡しているか、その中でExcelでしかできない作業は本当にどれかを書き出すところから始めてください。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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