売上はあるのに利益が残らないクリニックへ|P/Lを分解して見る順番
一般的な相場より、自院の数字と業務の流れを確認する
この記事のポイント
利益が残らない理由は、売上だけでは見えません。P/Lを費用の性質と業務データに分け、広告・人員・外注・変動費を同じ基準で確認します。
忙しく売上もあるのに、月末の数字を見ると利益が残らない。こうした状態では、まず業界平均の利益率と比べるより、自院のP/Lと実際の業務の流れを結びつけます。診療科、保険・自由診療の構成、設備、立地、スタッフ体制でコスト構造は変わるためです。
最初に作るのは「比較できるP/L」
会計上の科目をそのまま眺めるだけでなく、毎月同じ区分・同じ期間で比較できる形にします。数値の正しさは税理士・会計担当と確認し、経営判断用には変動理由が見える粒度でまとめます。
| 区分 | 確認するデータ | 見るポイント |
|---|---|---|
| 売上 | 診療・施術・商品などの区分別売上 | 売上だけでなく、区分ごとの粗利と継続性を見る |
| 広告・集患費 | 媒体別費用、問い合わせ、予約、来院、成約 | 費用だけでなく、どの段階で離脱しているかを確認する |
| 人件費 | 雇用形態別の固定費、シフト、業務量 | 人数ではなく、業務量と担当の偏りを一緒に見る |
| 外注費 | 契約内容、月額、成果物、更新条件 | 何を提供され、どの指標で継続判断するかを明確にする |
| 変動費・固定費 | 薬剤・材料・決済・賃料・リースなど | 売上変動に連動する費用と、固定で出る費用を分ける |
広告費は「費用」だけで止めない
広告費は、媒体ごとの費用、問い合わせ、予約、来院、成約(または継続)をつなげて確認します。計測できない媒体をすぐに停止するのではなく、どこまでデータが取れているか、どの段階で対応が止まっているかを先に確認します。
広告の成果を判断するために、問い合わせ元を受付・予約・CRMのいずれかへ記録し、媒体別に同じ定義で集計します。売上への寄与を一つの指標だけで断定しないことが重要です。
クリニック・歯科医院のためのAI業務改善ガイド
無床診療所の損益率5.4%、給与費が医業・介護収益の50.9%といった公的数値を並べ、自院の費用構造がどこで重くなっているかを確かめられます
資料を無料でダウンロード人件費は、人数ではなく業務量と合わせて見る
人件費を下げることだけを目的にすると、現場の対応品質や離職につながるおそれがあります。受付、予約、会計、問い合わせ、施術補助など、どの業務に時間がかかり、誰に負担が集中しているかをシフトや業務ログと合わせて確認します。
繰り返し発生する転記・確認・案内は、業務の手順を整えたり、下書き・分類・リマインドを補助する仕組みを入れたりすることで、負担を減らせる場合があります。AIやツールは、人の確認を置き換えるのではなく、確認しやすい状態をつくる目的で使います。
外注費は「成果」ではなく「契約と判断基準」を確認する
HP、広告、SEO、SNS、予約、MEOなどの外注費は、月額だけでは判断できません。各契約について、目的、提供物、担当、確認頻度、継続・見直しの判断基準を一枚にまとめます。
- 何の課題を解く契約か
- 毎月・毎回の成果物は何か
- どの指標または事実で確認するか
- 院内の誰が確認し、いつ判断するか
- 更新・停止・変更の条件は何か
改善は一度に全部変えない
- 数字をそろえる:直近のP/Lと業務データを同じ期間で並べる。
- 仮説を一つ選ぶ:広告、人員、外注、変動費など、変動が大きい区分を一つ確認する。
- 変更と記録をセットにする:何を変えたか、いつからか、影響をどう見るかを残す。
- 定例で見直す:一時的な増減と継続的な変化を区別し、次の判断をする。
問い合わせ対応の流れは問い合わせ対応の確認方法、業務の改善から始める場合はクリニック業務を整える手順も参照してください。
まとめ
利益を残すための出発点は、一般的な利益率に合わせることではなく、自院の売上・費用・業務量を同じ基準で見られるようにすることです。数字と現場の事実をつなげ、最も不確実な一項目から確認してください。
よくある質問
売上はあるのに利益が残りません。最初に何を確認すればいいですか?
業界平均の利益率と比べる前に、自院のP/Lと実際の業務の流れを結びつけることから始めます。診療科、保険・自由診療の構成、設備、立地、スタッフ体制でコスト構造は変わるためです。会計上の科目をそのまま眺めるのではなく、売上・広告集患費・人件費・外注費・変動費と固定費を、毎月同じ区分・同じ期間で比較できる形にそろえます。数値の正しさは税理士・会計担当と確認し、経営判断用には変動理由が見える粒度でまとめます。
広告費が効いているかどうかは、どう判断すればいいですか?
費用の額だけで判断せず、媒体ごとの費用・問い合わせ・予約・来院・成約(または継続)をつなげて確認します。問い合わせ元を受付・予約・CRMのいずれかへ記録し、媒体別に同じ定義で集計するのが前提です。計測できない媒体をすぐに停止するのではなく、どこまでデータが取れているか、どの段階で対応が止まっているかを先に確認します。売上への寄与を一つの指標だけで断定しないことが重要です。
利益を出すために人件費を減らしてもいいですか?
人件費を下げること自体を目的にすると、現場の対応品質の低下や離職につながるおそれがあります。まず、受付・予約・会計・問い合わせ・施術補助など、どの業務に時間がかかり、誰に負担が集中しているかを、シフトや業務ログと合わせて確認します。繰り返し発生する転記・確認・案内は、業務の手順を整えたり、下書き・分類・リマインドを補助する仕組みを入れたりすることで負担を減らせる場合があります。AIやツールは、人の確認を置き換えるのではなく、確認しやすい状態をつくる目的で使います。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。
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