クリニックの広告費、本当に元取れてる? — 1患者あたりの獲得コストを計算する方法
この記事のポイント
広告費を増やす前に「1患者あたりの獲得コスト(CPA)」と「患者生涯価値(LTV)」を計算すべき。多くのクリニックはCPAすら把握していない。計算方法と改善の優先順位を解説。
「もっと患者を増やしたい」——そう思って広告費を月10万円から30万円に増やした。問い合わせは増えた気がする。でも利益は増えていない。なぜだろう?
答えはシンプルだ。「広告費がいくらで、患者が何人来て、1人あたりいくらかかっているか」を計測していないから。穴の空いたバケツに水を注いでいる状態だ。
クリニックの広告費の相場 — 一般・美容・歯科で比べる
まずは自院の広告費が相場と比べてどうかを確認しよう。診療科によって広告費の相場は大きく異なる。
| 診療科 | 月額広告費 | CPA相場 | 患者単価 |
|---|---|---|---|
| 一般内科 | 20〜50万円 | 3,000〜8,000円 | 5,000〜8,000円 |
| 美容皮膚科 | 100〜500万円 | 10,000〜30,000円 | 30,000〜100,000円 |
| 歯科 | 30〜80万円 | 5,000〜15,000円 | 8,000〜30,000円 |
| 皮膚科 | 15〜40万円 | 2,000〜6,000円 | 4,000〜7,000円 |
| 整形外科 | 20〜60万円 | 4,000〜10,000円 | 6,000〜15,000円 |
重要なのは「CPA(患者獲得コスト)が患者単価を上回っていないか」という視点。初診1回の売上でCPAを回収できなくても、リピートで回収できるなら問題ない。これがLTV(患者生涯価値)という考え方だ。
「広告費を増やせば患者が増える」の落とし穴
広告から来院までには複数の段階がある。そして各段階で患者が「漏れている」。
Step 3→4で30%が消えている。つまり、せっかく広告で興味を持って問い合わせてきた患者の3人に1人が、電話がつながらない・折り返しがない・対応が遅いといった理由で離脱している。広告費を2倍にしても、この漏れを放置すれば効果は半減する。
CPA(患者獲得コスト)の正しい計算方法
CPAの計算はシンプルだ。しかし、正確に計算しているクリニックは驚くほど少ない。
CPA計算式
CPA = 月間広告費 ÷ 広告経由の新規来院患者数
具体例:一般内科クリニックの場合
月間広告費:50万円(Google広告30万 + ポータルサイト20万)
広告経由の問い合わせ:100件(電話60件 + Web40件)
問い合わせ→来院の転換率:30%
広告経由の新規来院患者:30人
CPA = 50万円 ÷ 30人 = 16,667円
次に、このCPAが「高いのか安いのか」を判断するために、LTV(患者生涯価値)と比較する。
LTV計算式
LTV = 平均診療単価 × 年間来院回数 × 平均通院年数
例:一般内科の場合
平均診療単価6,000円 × 年間4回来院 × 3年通院 = LTV 72,000円
CPA 16,667円 < LTV 72,000円 → 広告費は回収可能
CPA < LTV なら広告は黒字。CPA > LTV なら赤字。この判断ができるだけで、「広告を増やすべきか」「先に転換率を上げるべきか」の意思決定が変わる。
広告費を増やす前にやるべき3つのこと
1. 問い合わせ→来院の転換率を測定する
電話の問い合わせ件数とWeb予約の件数を毎月カウントする。そのうち何人が実際に来院したかを記録する。これだけで「どこで患者が漏れているか」が見える。
転換率が30%以下なら、広告費を増やすより先に「漏れ」を塞ぐべきだ。電話に出られていない、折り返しが遅い、予約がWebでできない——こうした問題が隠れている可能性が高い。
2. 電話対応品質を均一化する
問い合わせの60%以上は電話で来る。電話対応のクオリティがスタッフによってバラバラだと、同じ広告費でも来院数が大きく変わる。対応スクリプトを1枚作るだけで、転換率は改善する。
3. リピーター施策でLTVを上げる
新規患者の獲得コストは、既存患者のリピート促進コストの5〜10倍かかる。LINEでの来院リマインド、季節ごとの検診案内、次回予約の声かけ——こうした地道な施策でLTVを上げれば、CPAが多少高くても利益は出る。
まとめ:広告費は「感覚」ではなく「数字」で管理する
クリニックの広告費を「なんとなく」で決めている院長は多い。しかし、CPA(患者獲得コスト)とLTV(患者生涯価値)の2つの数字を把握するだけで、広告の意思決定は劇的に変わる。
まずは来月の広告費と新規来院患者数を記録するところから始めよう。CPA = 広告費 ÷ 新規来院数。この1つの計算式が、あなたのクリニックの広告戦略を変える。
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活用事例一覧へ →泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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