下請法 改正 2026|取適法で変わった5点と自社が対象かの判定
施行済みの制度を、自社の発注書と支払条件に落とすところまで
この記事のポイント
下請法は2026年1月1日から取適法になった。変わったのは「手形払の禁止」「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」「運送委託の追加」「従業員300人基準の追加」「事業所管省庁への指導・助言権限」の5点と、用語・書面まわりの見直し。本記事は公正取引委員会・中小企業庁の一次資料だけを根拠に、自社が委託側か受託側かの判定と、発注書・支払条件の直し方を整理する。
「うちは資本金1千万円だから下請法の対象外」という前提で発注書を運用している会社は、いま一度確認したほうがいい。2026年1月1日から施行された取適法では、資本金の区分に加えて従業員数の基準が追加された。加えて、手形払が禁止され、価格の協議に応じないこと自体が違反行為として書き込まれた。制度の名前が変わったという話ではなく、発注書の記載事項と支払条件という日々の運用に直接効く改正である。
2026年1月1日から施行されている—まず日付を押さえる
公正取引委員会の「中小受託取引適正化法(取適法)関係」のページには、改正法は令和7年(2025年)5月16日に成立し、同月23日に公布され、令和8年(2026年)1月1日から施行されますと記載されている。公布時点の資料では「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされていた施行期日が、その後1月1日に確定した形だ。
題名と用語も変わっている。「下請代金支払遅延等防止法」は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」となり、略称が「中小受託取引適正化法」、通称が「取適法」。あわせて「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」、「下請代金」は「製造委託等代金」に改められた。社内規程・発注書のテンプレート・与信管理の項目名に「下請」が残っている会社は、そこも合わせて直す対象になる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成立 | 2025年5月16日 |
| 公布 | 2025年5月23日 |
| 施行 | 2026年1月1日 |
| 所管 | 公正取引委員会・中小企業庁(加えて事業所管省庁に指導・助言権限) |
出典: 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
変わった5点—規制の見直しの中身
公正取引委員会・中小企業庁の説明資料「中小受託取引適正化法(下請法改正法)」(令和7年6月)は、11ページの「主な改正事項一覧」で改正を5点に整理している。以下は同資料の記述に沿った要約である。
| 改正事項 | 中身 | 出典ページ |
|---|---|---|
| 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止 | 代金に関する協議に応じない、必要な説明・情報提供をしないことによる一方的な代金額の決定を禁止 | p.11・p.12 |
| 手形払等の禁止 | 対象取引で手形払を禁止。電子記録債権・ファクタリング等も、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止 | p.11・p.13 |
| 運送委託の追加 | 発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する取引を対象に追加 | p.11・p.14 |
| 従業員基準の追加 | 従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設 | p.11・p.15 |
| 面的執行の強化 | 事業所管省庁の主務大臣に指導・助言権限を付与。報復措置の禁止の申告先にも追加 | p.11・p.16 |
出典: 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法(下請法改正法)」令和7年6月
このうち経営に直接効くのは、手形払の禁止と協議の義務化である。同資料13ページには、現行では「支払日までの期間(60日)+手形サイト(60日)=現金受領までの期間【120日】」だったものが、改正法では「支払日までの期間(60日)=現金受領までの期間【60日】」になるという図が載っている。受注側にとっては入金が最大2ヶ月早まる話であり、発注側にとっては運転資金の組み替えが必要になる話だ。
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資料を無料でダウンロード自社が対象かの判定—資本金だけで決めない
従来の判定は資本金の区分だけだった。製造・修理委託なら「発注者が資本金3億円超/受注者が3億円以下」または「発注者が1千万円超3億円以下/受注者が1千万円以下」、情報成果物作成・役務提供委託なら5千万円と1千万円が境目である(同資料 p.1)。
改正で、ここに従業員数の基準が加わった。同資料15ページの「適用基準例(製造委託等)」には、現行の資本金基準に加えて「従業員300人超」が委託事業者、「従業員300人以下(個人を含む)」が中小受託事業者という行が追記されている。改正理由として挙げられているのは「実質的には事業規模は大きいものの当初の資本金が少額である事業者や、減資をすることによって本法の対象とならない例がある」「本法の適用を逃れるため、受注者に増資を求める発注者が存在する」の2点だ。
実務で困るのは、相手方の従業員数が分からない場合である。公正取引委員会・中小企業庁のテキスト(令和7年11月)には、見積依頼書に「従業員数が300人を超える場合は以下のボックスにチェック」のような欄を設ける、見積書の備考欄に従業員数の申告を入れてもらうといった確認方法が例示されている。自社が発注側なら、見積フォーマットにこの1項目を足すのが最も安いリスク対応になる。
判定の順番
- 取引の内容が製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・運送委託のどれかに当たるか
- 資本金の区分で委託事業者/中小受託事業者に分かれるか
- 分かれない場合、従業員数(製造委託等300人・役務提供委託等100人)で分かれるか
- 相手方の従業員数を確認する手段が自社の見積・発注フローにあるか
発注書に何を書くのか—明示事項は12項目
委託事業者は、製造委託等をした場合は直ちに、取引条件を書面または電磁的方法で明示しなければならない。テキスト36〜37ページの「具体的な明示事項」には、次の項目が挙げられている。
- 委託事業者および中小受託事業者の名称(番号・記号による明示も可)
- 委託をした日
- 給付の内容(役務提供委託・特定運送委託の場合は提供される役務の内容)
- 給付を受領する期日、受領する場所
- 検査をする場合は検査を完了する期日
- 代金の額、代金の支払期日
- 一括決済方式で支払う場合の金融機関名・額・期間の始期・決済日
- 電子記録債権で支払う場合の額・期間の始期・満期日
- 原材料等を有償支給する場合の品名・数量・対価・引渡期日・決済期日・決済方法
- 正当な理由で内容が定められない未定事項がある場合は、その理由と内容を定める予定期日
この規定のねらいは、テキストの本文で「受託取引において口頭による発注は、発注時の取引条件等が不明確でトラブルが生じやすく、トラブルが生じた場合、中小受託事業者が不利益を受けることが多い」と説明されている。要するに、電話とメール本文だけで発注している運用は、そもそも制度が想定していない。
今回の改正で運用が楽になった点もある。書面等の交付義務について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、必要な記載事項を電磁的方法により提供できるようになった(説明資料 p.18)。以前は事前の承諾が必要だったため、承諾を取れていない相手には紙を出す運用が残っていた。ここが外れたので、発注データからPDFを自動生成してメールやポータルで配る形に一本化できる。
また、支払遅延に関する遅延利息の対象に「減額」が追加され、代金の額を減じた場合は起算日から60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について遅延利息を支払う扱いになった(同 p.18)。金型と同様に、専ら製品の作成のために用いられる木型・治具等も製造委託の対象物に追加されている。
見落としがちな1点—振込手数料の受注者負担
公正取引委員会のリーフレットは、変わった点として「手形払い」「振込手数料の受注者負担」「協議に応じない一方的な価格決定」の3つを並べて禁止と示している。このうち振込手数料は、合意があれば問題ないと考えている会社が多い。テキストの想定問答(Q99・p.75)は、この点を明確に否定している。
「当該手数料を中小受託事業者が負担する旨の合意の有無にかかわらず、代金を中小受託事業者の銀行口座へ振り込む際の手数料を中小受託事業者に負担させ、代金の額から差し引くことは、本法違反として、問題となる。」
出典: 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法 テキスト」令和7年11月 Q99(p.75)
振込手数料の差引きは、支払処理の中に固定運用として埋め込まれていることが多い。会計ソフトの支払テンプレート、支払明細のフォーマット、経理担当者の手順書。「合意書があるから大丈夫」で止まっている会社は、支払データを1回だけ全件で洗って、差引きが残っている取引先を出したほうがいい。
で、自社は何をいつまでにやるのか
施行は2026年1月1日で、すでに過ぎている。つまり「これから準備する」ではなく「いま違反していないか確認する」フェーズだ。発注側・受注側のどちらに立つかで、やることが変わる。
| 立場 | 確認すること | どこを見るか |
|---|---|---|
| 発注側 | 手形・電子記録債権・ファクタリングでの支払が残っていないか | 支払条件マスタ、直近3ヶ月の支払実績 |
| 発注側 | 振込手数料を差引きしている取引先があるか | 支払明細、会計ソフトの支払テンプレート |
| 発注側 | 発注書に明示事項が揃っているか。口頭・メール本文だけの発注が残っていないか | 発注書テンプレート、発注の実運用 |
| 発注側 | 相手方の従業員数を確認する欄が見積・発注フローにあるか | 見積依頼書、取引先マスタ |
| 受注側 | 手形・でんさいで受け取っている取引がないか。納品から60日以内に満額入るか | 売掛の入金予定、受注条件 |
| 受注側 | 価格改定の協議を申し入れた記録が残っているか | 取引先ごとの交渉履歴 |
受注側でひとつ実務的な注意がある。協議に応じない一方的な代金決定が禁止されたといっても、「協議の求めがあったのに応じなかった」という事実が残っていなければ主張しにくい。口頭で値上げを打診して流された、というやり取りは記録に残らない。価格改定の申し入れは、日付と提示根拠(材料費・労務費の上昇分)を添えて文書かメールで出し、その履歴を取引先ごとに1箇所へ集める。ここは制度対応というより、営業の記録の作り方の問題だ。
発注側の対応では、発注書の明示事項を人手で埋め直す方向に流れやすい。ただ、明示事項の大半(品目・数量・単価・納期・検査完了期日・支払期日)は、すでに受発注や在庫の管理データの中にある項目だ。二重入力を増やすのではなく、既存データから明示事項が揃った発注書を出す形にできるかを先に見たほうがいい。この判断の入口は製造業の受発注システム選び方ガイドで整理している。
確認できなかったこと
本記事の作成時点で、公正取引委員会が公開しているガイドブックのPDFは画像のみで構成されており、本文のテキストとしての確認ができなかった。ガイドブックに固有の記述は本記事では扱っていない。また、手形払の禁止について既存契約の取扱いや経過的な運用が示されているかは、テキストおよび説明資料の記述からは確定できなかった。個別の契約をどう切り替えるかは、公正取引委員会または中小企業庁の窓口に確認してほしい。
なお、下位法令や運用基準は改正法の施行に合わせて整備されている(説明資料 p.22に整備スケジュールの図がある)。運用基準の細部は更新される前提で、判断が分かれる論点は必ず最新版で確認すること。
出典
- 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(施行日・成立日・公布日)
https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html - 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法(下請法改正法)」令和7年6月(p.1 適用対象/p.11 主な改正事項一覧/p.12 協議/p.13 手形/p.14 運送委託/p.15 従業員基準/p.16 面的執行/p.17 用語/p.18 その他の改正事項/p.22 下位法令等整備スケジュール)
https://www.meti.go.jp/policy/kyoso_seisaku/20250625_shitaukekaisei.pdf - 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法 テキスト」令和7年11月(p.36〜37 具体的な明示事項/p.75 Q99 振込手数料/p.178 明示の義務)
https://www.jftc.go.jp/toriteki/r7text.pdf - 公正取引委員会「令和8年1月1日から、「下請法」が変わりました!」リーフレット(手形払い・振込手数料の受注者負担・一方的な価格決定の禁止)
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_pointleaflet_v2.pdf
よくある質問
下請法はいつから取適法に変わったのですか?
改正法は2025年5月16日に成立し、同月23日に公布され、2026年1月1日から施行されています(公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」)。法律の題名は「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わり、略称が「中小受託取引適正化法」、通称が「取適法」です。あわせて用語も変わり、「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」、「下請代金」は「製造委託等代金」になりました。
資本金1千万円以下の会社でも、取引先が取適法の対象になることはありますか?
あります。今回の改正で資本金の区分に加えて従業員数の基準が追加されました。製造委託等では従業員300人超が委託事業者、300人以下(個人を含む)が中小受託事業者、役務提供委託等では100人が区分になります(公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法(下請法改正法)」令和7年6月・p.15)。資本金が小さくても従業員数が多い発注者との取引が新たに対象になり得るため、資本金だけで対象外と判断するのは危険です。
手形で支払っている取引はどうなりますか?
対象取引において手形による支払が禁止されました。電子記録債権やファクタリング、一括決済方式についても、支払期日までに代金相当額(手数料等を含む満額)を得ることが困難なものは認められません(同資料 p.11・p.13)。公正取引委員会のリーフレットは「電子記録債権(でんさい)等による支払も、納品日から60日以内に代金満額を受け取れない場合は違反です」と明記しています。支払サイトそのものではなく、受注者が満額を現金で受け取れる日がいつかで判断されます。