プロンプトエンジニアリングとは|仕事で使える書き方5要素と、直し方の手順・例文
言い回しを工夫する前に、目的と材料と出力の形を書く
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
業務で使う書き方
言い回しの工夫より先に、AIが判断に使う材料が足りているかを確かめます。材料が無いままでは、どんな書き方をしても答えを作り出してしまうためです。
- プロンプトエンジニアリングとは、生成AIに渡す指示と材料を設計し、狙った出力が安定して出るまで試して直すことです。
- 業務では、目的と読み手・材料・判断基準・出力の形・例の5つを書くと、出力のばらつきを抑えやすくなります。
- 直すときは同じ10件で試し、直す点を1つに絞って、前後を比べます。
この記事は、仕事でAIに頼む指示文の書き方と直し方を扱います。ChatGPTとClaudeの選び方はChatGPTとClaudeの業務での使い分け、社内で入力してよい情報の決め方はAI利用の社内ルールで扱っています。
プロンプトエンジニアリングは、生成AIに渡す指示文(プロンプト)と添える材料を設計し、思った通りの出力が安定して出るように試して直す作業です。AI自体を作り直すのではなく、頼み方を整えます。
中小企業の業務では、見積メールの下書き、議事録の要約、問い合わせの分類のように、毎週くり返す頼みごとが対象になります。ここでは、5つの要素の書き方、例文、用語の整理、代表的な技法、直し方の手順、効果の測り方を順に説明します。
プロンプトエンジニアリングとは|指示文の言い回しではなく、頼み方の設計
プロンプトエンジニアリングは、指示文の上手な言い回しを探すことではなく、AIに何を渡して何を返させるかを決めることです。OpenAIやAnthropicの公式の手引きも、指示を明確にすること、例を添えること、出力の形を指定することなど、頼み方の設計を中心に説明しています。
最近は、指示文だけでなく、AIに読ませる資料や過去のやり取りまで含めて整える考え方を「コンテキストエンジニアリング」と呼ぶ場面も増えています。ただ、業務で最初に効くのは同じで、AIが判断に使う材料を渡し、返してほしい形を決めることです。
業務で使うプロンプトの書き方|5つの要素を順に書く
業務のプロンプトは、目的と読み手、材料、手順・判断基準、出力の形、例の5つを書くと、出力が安定しやすくなります。すべてを毎回書く必要はなく、出力がばらつく要素から足します。
| 要素 | 書くこと | 書き方の例(問い合わせへの一次返信) |
|---|---|---|
| 目的と読み手 | 何のための文か、誰が読むか | 「新規の問い合わせに、翌営業日までに返す一次返信。読むのは初めて連絡をくれた個人のお客様」 |
| 材料 | AIが判断に使う事実。ここに無いことをAIは知らない | 問い合わせ本文、自社の対応可能時間、案内してよい料金の範囲 |
| 手順・判断基準 | どの順に考え、迷ったらどうするか | 「質問が複数あれば番号を付けて答える。答えが材料に無い質問は『確認して連絡します』と書く」 |
| 出力の形 | 長さ、口調、並べ方、使う見出し | 「300字以内、です・ます調、最初の1文でお礼、最後に次の連絡日を書く」 |
| 例 | 良い出力の見本を1〜2件 | 過去に実際に送って問題の無かった返信(個人名は消す) |
5つのうち最初に確かめるのは材料です。材料に無いことをAIは知らず、聞かれると、もっともらしい答えを作ってしまうことがあります。「材料に無いことは、答えを作らず『確認が必要』と書く」と指示を足すと、人が確認する場所が見えるようになります。
そのまま使えるプロンプト例|問い合わせへの一次返信
下の例は、不動産賃貸の営業事務が問い合わせに一次返信を下書きする場面です。【】の見出しは残して、中身を自分の業務に置き換えて使ってください。顧客の名前や連絡先は貼る前にダミーに置き換えます。
直す前の指示
長さ、口調、答えてよい範囲が決まっていないため、出力のたびに人が全面的に書き直すことになります。
お客様への返信を、いい感じに書いてください。
直したあとの指示
5要素のうち、目的と読み手、材料、判断基準、出力の形を入れています。最後の一文で、足りない材料を先に質問させます。
あなたは、不動産賃貸管理会社の営業事務です。 下の問い合わせに対する、一次返信の下書きを作ってください。 【目的と読み手】 初めて連絡をくれた個人のお客様に、翌営業日までに送る最初の返信です。 【材料】 ・問い合わせ本文:(ここに貼り付け) ・対応時間:平日10時〜18時 ・案内してよい内容:物件の空き状況は確認して連絡する。賃料の値引きの約束はしない 【判断基準】 ・質問が複数あれば、番号を付けて順に答える ・材料に無い質問は、答えを作らず「確認して○日までに連絡します」と書く 【出力の形】 300字以内、です・ます調。最初の1文はお礼、最後の1文は次の連絡日。 作る前に、材料が足りない点があれば質問だけしてください。
不動産会社での使える業務と確認ルールは不動産会社のChatGPT活用方法にまとめています。
プロンプトエンジニアリングで出てくる用語|最低限の整理
解説記事や公式の手引きを読むと、次の用語が出てきます。業務で使うときの意味だけを押さえれば足ります。
| 用語 | 意味 | 業務での見方 |
|---|---|---|
| 生成AI・大規模言語モデル(LLM) | 文章などを生成するAIと、その土台になる大量の文章から学習したモデル。ChatGPTやClaudeが該当する | 文章の続きとして「もっともらしい答え」を作る仕組みのため、事実の裏取りは人が行う |
| プロンプト | AIに渡す指示文。質問、材料、出力の形の指定を含む | チャットの1行ではなく、業務の依頼書として書く |
| システムプロンプト | AIの振る舞いを最初に決める指示。ツールの設定欄や保存した指示に書く | システムプロンプトには、毎回変わらない前提(口調、禁止事項)を書いておく。毎回の依頼文には、その回の材料だけを書く |
| ゼロショット | 例を添えずに、指示だけで頼む方法 | 最初に試す方法。口調や形式がそろわないときに、少数例へ進む |
| 少数例(フューショット) | 良い出力の見本を数件添える方法 | 口調や形式をそろえたいときに使う |
| ハルシネーション | 材料に無い事実を、もっともらしく作ってしまう現象 | 「材料に無いことは確認が必要と書く」と指示し、金額・日付は人が確認する |
| トークン・コンテキストウィンドウ | AIが一度に読める文章量の単位と上限 | 長い資料を丸ごと貼ると抜けが出ることがある。必要な部分に絞って渡す |
ゼロショットとは、例を添えずに指示だけで頼む方法です。口調や形式がそろわないときに、良い出力の見本を数件添える少数例(フューショット)へ進めると、プロンプトが不必要に長くなりません。
プロンプトエンジニアリングの代表的な技法|使う場面で選ぶ
技法の名前を覚えるより、出力のどこがばらつくかで選ぶほうが早く済みます。次の7つの技法から、ばらつく点に合うものを選びます。迷うときは、最初に「指示を具体的に書く」から試してください。表は上から順に足す順番ではありません。
| 技法 | やること | 向く場面 |
|---|---|---|
| 指示を具体的に書く | 目的・読み手・長さを書く | 毎回のやり取りで最初に試す。ばらつきの原因は指示のあいまいさにあることが多く、公式の手引きも明確で具体的な指示を勧めている |
| 例を見せる(少数例) | 良い出力を1〜3件添える | 口調や形式をそろえたいとき。例が偏ると出力も偏る |
| 先に質問させる | 「足りない情報があれば、作る前に質問して」と添える | 材料が揃っているか自信が無いとき |
| 手順を分ける | 要約→分類→下書きのように、1回の依頼を小さく切る | 1回の依頼が長く、途中で抜けが出るとき |
| 役割を与える | 「不動産賃貸管理会社の営業事務として」のように、立場を1行で書く | 口調や判断の視点をそろえたいとき。役割だけで事実は補えないため、材料と組み合わせる |
| 区切り文字で分ける | 指示と材料を【】や"""などで区切り、どこまでが貼り付けた材料かを示す | メール本文や議事録など、長い材料を貼るとき。材料の中の文を指示と取り違えにくくなる |
| 出力形式を決める | 表、箇条書き、JSONなど、後で使う形で出させる | 出力をExcelや別のツールに貼るとき |
「順を追って考えて」と添える技法(思考の連鎖と呼ばれます)は、モデルによって効き方が違います。推論を自動で行うモデルでは不要な場合もあるため、使うモデルの公式の手引きで確認してください。
プロンプトの直し方|同じ10件で試して、直す点を1つに絞る
プロンプトは、同じ10件の実例で試し、直す点を1つだけ変えて前後を比べると、良くなったかどうかが分かります。1件ずつ気分で直すと、ある件が良くなった代わりに別の件が悪くなっても気づけません。
- 過去の実例から、典型的な件と難しい件を混ぜて10件選びます。個人情報はダミーに置き換えます。
- 現在のプロンプトで10件分の出力を作り、人が直した箇所に印を付けます。
- 直しが多かった理由を1つだけ決めます。長さ、事実の誤り、口調など、同じ原因のものを数えます。
- その原因に対応する指示を1行だけ足し、同じ10件で出力し直して、印の数を比べます。
直しの数が数回の見直しでも減らない場合は、プロンプトでなく材料が足りていない可能性があります。その場合は言い回しを変えるのをやめ、AIに渡す資料や判断基準を人が整える側に戻ります。
プロンプトで直らないこと|材料と判断は人の側にある
プロンプトを直しても改善しないのは、次のような場合です。
- 業務の判断基準が担当者の頭の中にだけあり、言葉になっていない場合。プロンプトに書けないため、先に基準を書き出します。
- AIに渡す資料が古い、または部署ごとに違う場合。どれが正かを決めてから渡します。
- 金額、法令、契約条件のように、間違いが取引に直結する場合。下書きまではAIに任せても、最終確認は人が行います。
SalesDockでも、AIに頼む前に、業務の流れと判断基準を文書に書き出すことから始めています。AIに作らせる前の整理の進め方は、要件定義をAIで進める方法で紹介しています。
毎回貼らずに済ませる|プロンプトを業務のひな形として残す
うまくいったプロンプトは、個人のチャット履歴に残さず、共有の場所にひな形として保存します。担当者が替わっても同じ品質で頼めるようにするためです。
- ひな形には、使う業務名、材料の貼り付け位置、確認する人、最終更新日を付けます。
- ChatGPTやClaudeには、決まった指示を保存して使い回せる機能があります。社内のルールに合う範囲で使い、保存場所は担当者ごとに分けません。
- Claude Codeのように手元のファイルを扱うAIでは、
CLAUDE.mdというファイルに前提を書いておくと、起動のたびに読み込まれます。
手元で動くAIの始め方はバイブコーディングの始め方、業務での注意点はClaude Codeで業務ツールを作るときの注意点で紹介しています。
効果の測り方|直しの数と、作業時間を前後で比べる
プロンプトが業務で役に立っているかは、人が直した箇所の数、1件あたりの作業時間、同じひな形を使う人の数の3つで測れます。
- 直した箇所の数:同じ10件で、見直しの前後に数えます。
- 1件あたりの作業時間:AIを使う前の時間を先に1週間分記録しておき、使い始めてから同じ業務で比べます。
- ひな形を使う人の数:担当者が替わっても使われているかを見ます。使われないひな形は、書き方か置き場所のどちらかが合っていません。
数回の見直しを重ねても直しの数も作業時間も減らないなら、その業務はプロンプトの調整より、業務の流れや判断基準を見直す段階にあります。SalesDockは、コードやAIの設定の前に業務構造を文章に書き出し、その結果を現場で使われる形にして定着させるところまで月額で支援しています。
最初の1業務の指示文を、一緒に書くところから相談できます
毎週くり返している頼みごとを1つ選び、目的・材料・判断基準・出力の形を聞きながら整理します。自社で続けられるか、任せたほうが早いかの判断もその場でお伝えします。
30分の無料相談を予約する一次情報・公式情報
- OpenAI「Prompt engineering」
- Anthropic「Prompt engineering overview」
- Anthropic「Effective context engineering for AI agents」
- Google Cloud「プロンプト エンジニアリングとは」
各社の手引きは更新されます。使うモデルの最新の内容は公開元でご確認ください。
プロンプトエンジニアリングに関するよくある質問
プロンプトエンジニアリングとは何ですか?
生成AIに渡す指示(プロンプト)と添える材料を設計し、狙った出力が安定して出るまで試して直すことです。AIのモデル自体を作り直すのではなく、AIへの頼み方を整える作業を指します。
プロンプトエンジニアリングに資格やプログラミングの知識は必要ですか?
業務でAIに下書きや要約をさせる範囲では、資格もプログラミングの知識も必要ありません。必要なのは、その業務の目的と判断基準を言葉にできることです。AIを組み込んだシステムを作る場合は、開発の知識が別に要ります。
プロンプトは長いほど良いのですか?
長さでは決まりません。AIが判断に使う材料が足りていれば短くて足ります。逆に、材料が足りないのに言い回しだけを長くしても出力は安定しません。まず材料、次に出力の形、の順に足してください。
ChatGPTでもClaudeでも同じプロンプトが使えますか?
目的・材料・出力の形を書く基本は共通です。ただし、モデルごとに得意な書き方や効き方が違うため、同じ文で出力が変わることがあります。乗り換えるときは、同じ10件でもう一度比べてください。
プロンプトに入れてはいけない情報はありますか?
個人情報、取引先の機密、未公開の数字は、会社の決めたルールとツールの設定を確認するまで入れないでください。例文に使うときは、固有名詞をダミーに置き換えます。入力してよい情報の決め方は「AI利用の社内ルール」の記事にまとめています。
プロンプトエンジニアは専任の職種として必要ですか?
AIを組み込んだ製品を開発する会社では専任の担当を置くことがありますが、社内の業務でAIを使う中小企業では、各業務の担当者が自分の業務の指示を書けることのほうが効果に直結すると考えています(SalesDockの見方です)。
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泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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