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労務費の計算をエクセルで行う方法|賃率の出し方と製品別に配る表の作り方

執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

労務費の計算をエクセルで行う方法|賃率の出し方と製品別に配る表の作り方

結論

労務費の計算は、エクセルで十分に回せます。つまずきの原因は関数ではなく、どの費用を労務費に入れるか、何時間で割るか、が会社の中で決まっていないことがほとんどです。この記事では、その2点を先に決めたうえで、賃率を出して製品別・案件別に配る表を、計算例と一緒に説明します。

  • 労務費は「労務費の合計÷直接作業の時間」で賃率(1時間あたりの単価)を出し、賃率×作業時間で製品や案件に配ります。
  • 割る時間を就業時間全部にするか、直接作業の時間だけにするかで賃率は変わります。先に決めて表の1枚目に書きます。
  • ファイルは月次労務費・作業時間・賃率と配賦の3シートに分け、個人別の給与は置かずグループ単位の合計だけを入れます。

製造業や施工、受託の制作など、人が手を動かして納品する会社では、労務費が原価の大きな部分を占めます。材料費は請求書を見れば分かりますが、労務費は「この製品に何時間、いくらかかったか」に直さないと、製品別の粗利に使えません。

原価全体の見方は利益が残らない会社の数字管理で、売価に対する原価の割合は原価率をエクセルで計算する式と関数で扱っています。この記事は、その原価のうち「人の分」を計算する部分に絞ります。

労務費は、製造や施工に関わる人にかかる費用です

労務費は、製品や工事をつくるために働いた人に払う費用のことです。賃金や手当だけでなく、会社が負担する社会保険料なども含めて考えます。営業や経理など、つくる作業に関わらない人の費用は労務費に入れません。

労務費は、製品に直接かけた時間の分と、そうでない分に分けます。分け方を押さえると、あとの計算が楽になります。

  • 直接労務費:加工、組立、施工、制作など、特定の製品や案件にかけた時間の人の費用です。
  • 間接労務費:検査、運搬、現場の監督、段取りなど、特定の製品に結び付けにくい時間の人の費用です。
  • 労務費に入らない人件費:営業、経理、総務などの人の費用です。販売費及び一般管理費として別に扱います。

人件費と労務費の関係は、人件費の中に労務費が含まれる、と覚えておけば足ります。同じ給与でも、働く場所によって、原価に入るか入らないかが分かれます。

人件費(会社が人に払う全体)労務費営業・管理の人販管費で扱う直接加工・組立施工・制作間接検査・運搬段取り
同じ人件費でも、働く場所で原価に入るかが分かれます。労務費の中を、さらに直接と間接に分けます。

労務費に入れる費目は、賃金・残業・賞与の月割・法定福利費から始めます

最初から全部の費用を入れようとすると、集めるだけで止まります。まず次の費目を、グループ単位の月合計で集めます。

労務費に入れる費目と入れ方
費目中身入れ方の注意
賃金・給料基本給、各種手当直接労務費・間接労務費のどちらにも入る。製造や施工に関わる人の分だけ
残業手当時間外・休日の割増分月ごとに変わるため、固定費と分けて毎月の実績を入れる
賞与の月割年間の賞与÷12支給月にまとめて入れると、その月だけ賃率が跳ねる
法定福利費健康保険・厚生年金・雇用保険などの会社負担分料率は加入先や年度で変わるため、会社に届く通知書の金額を使う
退職給付費用・福利厚生費退職金の積立、社宅・食事補助など制度がある会社だけ。最初は入れなくても賃率の傾向は見える

賞与を月割にするのは、支給月に労務費が膨らむのを避けるためです。年間の賞与見込みを12で割り、毎月同じ額を入れておくと、賃率が月ごとに不自然に動きません。

賃率は、労務費の合計を直接作業の時間で割って出します

賃率は、1時間の作業に労務費がいくらかかるかを表す単価です。式は次の1本です。

賃率(円/時間)= 労務費の合計 ÷ 直接作業の時間
製品への配賦額 = 賃率 × その製品にかけた作業時間

計算例を示します。数字は説明用の架空の例で、加工班4人の1か月分です。まず、月の労務費を集計します。

計算例:加工班4人の1か月の労務費(架空の例)
費目金額
賃金・手当1,200,000円
残業手当180,000円
賞与の月割(年240万円÷12)200,000円
法定福利費(賃金・手当、残業手当、賞与の月割の合計1,580,000円の15%と、説明用に置いた額)237,000円
労務費の合計1,817,000円

加工班4人(架空の例)の月の就業時間は、4人×20日×8時間=640時間です。休憩を除いても会議や段取り、片付けの時間があり、製品に直接かけた時間は512時間だったとします。労務費1,817,000円を512時間で割った賃率は3,549円で、作業時間6時間の製品Aには、3,549円×6時間=21,294円を労務費として配ります。

就業時間で割った賃率2,839円は、直接作業時間で割った3,549円より20%低くなります(架空の例)

同じ労務費でも、何時間で割るかで賃率は変わります。

同じ班で割る時間を変えた賃率(架空の例)
割る時間時間賃率意味
就業時間の全部640時間2,839円休憩・会議・段取りも分母に入る。製品に配れる賃率より低く出る
直接作業の時間だけ512時間3,549円製品に直接かけた時間で割る。間接の時間分の労務費も賃率に含まれる

見積もりや製品別の粗利に使うなら、直接作業の時間で割る方が実態に合います。製品に配られない間接の時間の分も、賃率に含めて回収する考え方です。就業時間全部で割ると賃率は低く出ますが、段取りや会議の分の労務費が、どの製品にも乗らないまま残ります。

賃率の割る時間は、直接作業の時間でも就業時間の全部でも計算はできます。ただし、どちらで出したかを表の1枚目に書き、途中で変えないでください。製品別の粗利や見積もりに使うなら、直接作業の時間で割る方が実態に合います。

労務費 1,817,000円就業時間 640時間で割る賃率 2,839円直接作業 512時間で割る賃率 3,549円間接分棒の長さは時間の比(512÷640)
割る時間が短いほど、賃率は高く出ます。間接の時間が占める割合が大きい会社ほど、差が開きます。

エクセルは月次労務費・作業時間・賃率と配賦の3シートに分けます

1枚のシートに、給与の合計も、日々の作業時間も、案件ごとの配賦も並べると、更新のたびに数式が壊れます。入力するシートと、計算するシートを分けます。

3シートの列と役割
シート持つ列ルール
月次労務費対象月、グループ、賃金、残業手当、賞与の月割、法定福利費、労務費合計給与計算の締めのあとに月1回、グループ(班・部署)ごとに1行入れる。個人別の給与は置かない
作業時間日付、グループ、案件または製品番号、時間、区分(直接/間接)日報や工数の記録から縦に1行ずつ足す。区分は入力規則で2択にする
賃率と配賦対象月、グループ、労務費合計、直接作業時間、賃率、案件別の配賦額入力はしない。上の2シートから関数だけで出す

賃率は、グループと月を指定して、2つのシートから合計を引いて出します。次の数式は、賃率と配賦のシートの1行目(A列=対象月、B列=グループ)に置く場合の例です。

C列 労務費合計  =SUMIFS(月次労務費!G:G, 月次労務費!A:A, A2, 月次労務費!B:B, B2)
D列 直接作業時間 =SUMIFS(作業時間!D:D, 作業時間!B:B, B2, 作業時間!E:E, "直接", 作業時間!F:F, A2)
E列 賃率     =IF(D2=0, "", C2/D2)
  月次労務費 A列=対象月、B列=グループ、G列=労務費合計
  作業時間 B列=グループ、D列=時間、E列=区分(直接/間接)、F列=対象月(日付から月を取り出した列)

案件別の配賦額は、作業時間シートの行ごとに賃率を引いて時間に掛け、案件番号でSUMIFSします。直接作業の時間だけに掛ける形にすると、案件別の合計が配賦できる労務費の範囲に収まります。

作業時間シートのG列 配賦額 =IF(E2="直接", D2*XLOOKUP(1, (賃率と配賦!A:A=F2)*(賃率と配賦!B:B=B2), 賃率と配賦!E:E), 0)
案件別の合計 =SUMIFS(作業時間!G:G, 作業時間!C:C, 案件番号)

XLOOKUPはMicrosoft 365とExcel 2021以降で使えます。古い版では、賃率と配賦のシートに「月&グループ」を連結した列を作り、VLOOKUPで引いてください。出典:Microsoft サポート「SUMIFS 関数」

賃金の形が違う人は、グループを分けて賃率を別に出します

月給の正社員、時給のパート、出来高で払う外部の職人では、労務費の動き方が違います。1つのグループにまとめると、賃率の意味が薄れます。報酬の形が違う人を1枚の表で管理すると、数字の読み方が混ざります。雇用形態ごとにグループを分け、賃率を別々に出します。

拠点が複数あり、残業のルールや手当が拠点ごとに違う会社では、拠点も分ける単位に加えます。拠点ごとに運用が違い、雇用契約書の整備も追いついていない状態で1つの表に集めると、計算は成り立ちません。

計算の前に、手当と休暇のルールを文書にします

エクセルを作る前に詰まりやすいのは、計算式より、労務費に入れる手当や休暇の扱いが決まっていないことです。有給の付与月が人ごとに違う、自社基準の休暇があるのにまとまった資料がない、という状態では、表に組み込む前にルールを文書にする作業が先に必要になります。

賃率の計算でも同じことが起きます。最初に次の3点を、1枚のメモに書き出してください。

  • どの手当を入れるか:通勤手当や住宅手当を労務費に入れるか、外すか。
  • 有給取得の日をどう扱うか:作業時間に数えず、賃金だけを労務費に入れるのか。
  • グループの切り方:班、部署、拠点、雇用形態のどれで分けるか。

有給の付与や消化をExcelで管理している場合の表の作り方は有給管理をExcelで無料で始める方法にまとめています。

月1回の締めと、見積もりとの突き合わせまでを決めておきます

表を作ったあとに差が出るのは、運用の決めごとです。最低限、次の4つを決めて表の1枚目に書いておきます。

  • 締め日:給与計算の締めのあと、翌月の5営業日以内にグループ別の合計を転記します。
  • 作業時間の入力:週に1回、前週分を案件番号つきで入力します。月末にまとめると思い出しで書かれます。
  • 賃率の割る時間:直接作業の時間か就業時間かを、表の1枚目に書きます。
  • 見直しの時期:昇給や賞与の改定があった月に、年間の予定賃率を見直します。

個人の給与は計算表に置かず、給与計算ソフトからグループ別の合計だけを転記します。表を見られる人が増えても、給与が漏れないようにするためです。

賃率が出たら、見積もりの工数に掛けて労務費の見込みを出し、終わった案件の実績と比べます。工数の見積もり方は工数の計算方法で、人の時間が主な原価になる案件を予実で見る表はプロジェクト原価管理をエクセルで行う方法で扱っています。

同時編集の衝突や転記の手間が続くなら、仕組みを移す時期です

エクセルで回せるのは、グループが数個で、月1回の転記で足りる間です。同じファイルを複数人が同時に編集して衝突する、転記ミスを毎月手で直している、拠点やグループが増えて賃率の表が追いつかない、のどれかが当たり前になったら、移行を考える時期です。判断の目安はExcelからシステムへ移すタイミングにあります。

先にエクセルで、費目の範囲、割る時間、グループの切り方を決めておくと、その決めごとがそのまま移行先の要件になります。

効果は「見積もりの労務費と実績の差」で測ります

表を作った効果は、案件が終わったときに確かめます。見積もり時に賃率×見込み時間で出した労務費と、実際に配賦された労務費の差を、案件ごとに記録してください。始めの数か月は差が大きく、作業時間の入力が安定して賃率が落ち着くと、差が縮んでいきます。

もう1つは、作業時間の入力が締めに間に合った割合です。入力が欠けた週があると、直接作業の時間が少なく出て、賃率が高く見えます。賃率の数字そのものより先に、この入力の安定を月次で確かめます。

来月は、1つのグループの賃率だけを出します

全員分を一度に載せる必要はありません。まず、製造や施工の主力の班を1つ選び、直近1か月の労務費の合計と、直接作業の時間を集めます。費目は賃金・残業・賞与の月割・法定福利費の4つで足ります。割り算の結果が出たら、直近の案件1本の作業時間に掛けて、労務費の配賦額を出し、見積もりと比べてください。

ずれがあれば、それが表を広げる理由になります。ずれていなければ、次のグループを足します。

NEXT STEP

労務費を製品別・案件別に配る表を一緒に整理する

いまの給与の集計や作業時間の記録を見ながら、労務費に入れる費目、賃率の割る時間、グループの切り方、月次の締め方を無料相談で整理します。

無料相談を申し込む

労務費の計算でよくある質問

労務費と人件費は何が違いますか?

人件費は会社が人に払う費用全体を指します。労務費は、そのうち製造や施工など製品・工事の原価に入る人の分です。営業や管理部門の人の給与は、同じ人件費でも労務費ではなく販売費及び一般管理費に分けて扱います。

賃率は予定と実際のどちらで出すべきですか?

最初は実際の月次で出し、数か月分を並べてから年間の予定賃率を決める流れが無理がありません。月ごとの実際賃率は残業や賞与の入り方で振れるため、見積もりに使う単価は年間の平均で固定し、月次の実際との差を別に見ると、差の原因が追えます。

従業員ごとの給与をエクセルに入れる必要はありますか?

必要ありません。班や部署などのグループ単位の合計で賃率は出せます。個人の給与を計算表に置くと、入力する人全員に見えてしまうため、給与計算ソフトからグループ別の合計だけを月1回転記する形をお勧めします。

月給の人と時給の人が混ざっている場合はどうしますか?

グループを雇用形態で分け、グループごとに賃率を出します。月給の人は残業や賞与で月の労務費が動き、時給の人は働いた時間に比例して動くため、混ぜると賃率の意味が薄れます。分けたうえで、案件にはそれぞれの賃率×作業時間を足します。

泉

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

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この記事の数値について

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