業務フロー図をAIで作成する方法|ChatGPTやClaudeで下書きし、アプリを作る前に「誰が・何で・どこに残すか」を確かめる
AIにアプリを作らせる前に、仕事の流れを1枚にして担当者と確かめる
業務フロー図をAIで作成する方法の結論|材料は人、描くのはAI
業務フロー図は、仕事が誰から誰へ、何を使って渡っていくかを描いた図です。図を描く作業はAIが速くこなします。人がやるのは、図に載せる材料を集めることと、描かれた矢印が実際の仕事と合っているかを確かめることです。
- 手順ごとに、誰がやるか、何を使うか、記録がどこに残るかを書いた手順表を先に作ると、AIは1回の依頼で図の形まで下書きします。
- ChatGPTやClaudeにはMermaid記法のテキストで出させ、推測で補った箇所と、書かれていない例外を一覧にさせます。
- 下書きは担当者と矢印を1本ずつ確かめ、いまの流れとこれからの流れは別の図に分けて描きます。
2026年9月20日に、開発者(akihirovlog_)の短い動画を見かけました。「AIにコードを書かせる前に、誰が・何を使って・どのデータとつながるかを決める。決めずに始めると修正の沼にはまる」という内容です。
SalesDockでも、中小企業の業務アプリや社内の仕組みをAIと一緒に作っています。作り始めてから「この入力は誰がするのか」「この紙はどこへ行くのか」が分かると、画面も権限も入れたデータも直すことになります。この記事では、エンジニアではない方がAIを使って業務フロー図を作り、アプリの話に入る前に確かめる手順を書きます。
業務フロー図をAIで作るときに、最初に知っておくこと
AIに「受発注の業務フロー図を作って」とだけ頼むと、見積、受注、発注、納品、請求と、どの会社にも当てはまりそうな図が返ってきます。形は整っていますが、自社の流れとは限りません。AIは、分からないところを一般的な手順で埋めて、完成した図として返してくるからです。
業務フロー図の中身は、現場の人の頭の中や、机の上の紙にあります。AIが肩代わりできるのは、集めた材料を図の形に並べる部分です。材料集めを飛ばすと、それらしい図ができて、そのままアプリの設計に進んでしまいます。
AIに渡す材料は「誰が・何で・どこに残るか」の手順表
AIに頼む前に、1つの業務について手順を上から順に書き出します。手順ごとに書くのは、誰がやるか、何を使うか、その結果の記録がどこに残るかです。2026年9月に在庫の整理をお手伝いした小売店の、入荷の流れを例にすると次のようになります(店名と細部は変えています)。
| 順 | 誰が | 何をする | 何を使って | どこに残る |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 店頭スタッフ | 商品と納品書を受け取る | 紙の納品書 | (残らない) |
| 2 | 店頭スタッフ | 商品を棚へ入れる | — | (残らない) |
| 3 | 店主 | 仕入伝票を入力する | 販売管理ソフト | 仕入伝票 |
| 4 | 店主 | 前回の単価と見比べる | 記憶 | (残らない) |
一番右の「どこに残る」の列が、アプリを作るときにいちばん効いてきます。この店では、4つの手順のうち記録が残るのは3番目だけでした。棚のどこに入れたか、単価をどう判断したかは、店主の頭の中にしかありません。聞き取りのときは、手順の名前より先に「それはどこかに書きますか」と尋ねると、この列が埋まります。
聞き取りの相手は、実際にその作業をしている人です。社長や責任者の説明と、担当者のやり方が違うことはよくあります。誰が何を決めるかから揃える必要がある場合は、要件定義の進め方(工程の前に決定者を決める)を先に読むと進めやすくなります。
業務フロー図をAIで作る4つの手順
SalesDockでは、次の4つを1周として、アプリの話に入る前に2〜3周まわします。
1. 3列の手順表を書く
手順ごとに、誰がやるか・何を使うか・記録がどこに残るかの3列を書いた手順表を、1つの業務について作ります。最初から会社全体を描こうとすると、聞き取りだけで数週間かかります。入荷、受注、請求のように、始まりと終わりがはっきりした業務を1つ選び、手順は10個前後までに収めます。紙や付箋に書いた手順を写真に撮ってAIに渡し、表に起こさせても構いません。
2. ChatGPTやClaudeにMermaidで下書きさせる
Mermaidは、文字で書いたものを図にする記法です。AIはこの記法を問題なく書けるので、画像で図を作らせるより直しやすくなります。依頼文は、たとえば次のように書きます。
AIへの依頼文の例
次の手順表から、業務フロー図を Mermaidのflowchart記法で書いてください。 ・担当ごとに subgraph でまとめる ・記録が残らない矢印は点線(-.->)にする ・手順表に無い手順は足さない 書いたあとに、次の2つを一覧にしてください。 1. 手順表だけでは分からず、推測で補った箇所 2. 例外(品切れ、差し戻し、担当の不在など)が 起きそうなのに、手順表に書かれていない箇所 (ここに手順表を貼る)
依頼文で大事なのは、推測で補った箇所と、書かれていない例外を一覧にさせる指示です。AIは推測で補った部分も、確かめた部分と同じ見た目で図にするため、この一覧が次の手順で担当者に聞くことのリストになります。
作図ツールに組み込まれたAI機能でも下書きは出せますが、渡す材料が手順表であることは変わりません。この記事では、どのAIでも使えて、テキストのまま直しやすいMermaidの方式を扱います。
3. 図にして、担当者と矢印を確かめる
AIが返したテキストを、無料のMermaid Live Editorに貼ると、その場で図が表示されます。社内でdraw.ioを使っているなら、配置(Arrange)→挿入(Insert)→Mermaidから取り込めます。
図を担当者に見せ、矢印ごとに「この次は本当にこの人に渡りますか」「ここで止まることはありますか」と聞きます。違っていたら、Mermaidを自分で書き換えなくて構いません。「納品書は店主ではなく事務の人が受け取る」のように文章でAIに返し、描き直させます。
4. いまの図とこれからの図を分ける
確かめ終わった図は、いまの流れの記録として残し、アプリを入れたあとの流れは同じ担当の並びで別の図に描きます。1枚に混ぜると、いまの困りごとが改善案に隠れ、どこが楽になったかを説明できなくなるためです。
例:小売店の入荷の流れをAIで図にする
小売店の仕入れから販売までを、店主への聞き取りで作った手順表としてAIに渡しました。記録の残る場所を店主と確かめたあとの業務フロー図は次のようになりました。記録が残らない矢印は点線にしています。
Mermaidの下書き(確かめたあと)
flowchart LR
subgraph 仕入先
A[商品と納品書が届く]
end
subgraph 店頭スタッフ
B[受け取って納品書を束ねる]
C[棚へ入れる]
end
subgraph 店主
D[休日にまとめて入力]
end
subgraph 販売管理ソフト
G[(仕入伝票)]
end
A --> B --> C
B --> D --> G
D -. 記録なし .-> E[前回単価と目で見比べる]
C -. 置き場所の記録なし .-> H[倉庫・棚]担当ごとのレーンに並べ直すと、次の図になります。
この店では、入荷のほかに販売、お客様からの預かり、店と倉庫の間の移動の4つの動きがありました。同じやり方で4枚描くと、預かりは販売管理ソフトとは別のExcelの票で管理され、3か所の置き場所の間で動かした記録は残っていないことが分かりました。棚卸で全数を数え直しても、そのあとの動きが記録に残らないため、数はすぐにずれていきます。在庫が合わない理由は、ソフトの性能ではなく、この点線の部分にありました。
AIの下書きで直すことが多い4か所
AIの下書きは形が整っているぶん、そのまま通してしまいがちです。担当者と確かめるときは、次の4か所から見ます。
聞いていない手順が足されていないか
依頼文で「手順表に無い手順は足さない」と書いても、AIは「在庫を確認する」「上長が承認する」のような、ありそうな手順を足してくることがあります。手順表の行数と図の箱の数を数えて、増えていたら何が足されたかを確かめます。実際にある手順なら表に書き足し、無いなら消します。
例外の流れが消えていないか
品切れ、差し戻し、担当者の休みのように、いつもと違う日の流れは手順表にも書かれにくい部分です。AIに申告させた「例外が起きそうな箇所」を担当者に見せ、実際に起きたときに誰がどうしているかを聞きます。アプリを作ったあとに止まるのは、たいていこの例外の場面です。
記録の行き先が描かれているか
人の動きだけを描いた図では、データがどこにたまるかが見えません。販売管理ソフト、Excel、紙の台帳のように、記録の置き場所もレーンの1つとして描きます。どこにもつながっていない点線が多い業務ほど、アプリで記録が残るようになったときに楽になる範囲が広がります。ほかのシステムとの間でデータがどう動くかまで描く場合は、システム連携図の書き方も参考になります。
いまとこれからが1枚に混ざっていないか
AIに「改善案も入れて」と頼むと、いまの手順の横に「ここをAIで自動化」のような吹き出しが入った図が返ってきます。1枚に混ぜると、どこがどれだけ楽になるのかが読み取れません。いまの手順を表す現状図と、改善後の手順を表す将来図の2枚に分けて描かせます。
いまの図とこれからの図は、同じ並びで2枚に分ける
SalesDockでは、業務の流れを図にするときは、いま(As-Is)とこれから(To-Be)を別の図にして並べています。担当のレーンの並びと幅は2枚とも同じにして、いまの図で点線だった部分がこれからの図で実線に変わるように描きます。こうすると、アプリで何が変わるのかを、担当者も社長も同じ図で話せます。
1枚に混ぜた図では、「手入力が休日にたまる」「預かりの本数が票にしか無い」のような、いまの困りごとが改善案の吹き出しに隠れます。困りごとが見えないと、アプリを入れたあとに何が良くなったかを説明できません。AIに頼むときも、「いまの図」と「これからの図」を別々の依頼に分け、2回目の依頼では「1枚目と同じ担当の並びで描く」と書いておきます。
業務フロー図ができたら、アプリの設計へどう渡すか
「どこに残るか」の記録が、ER図の材料になる
現状図と将来図を現場で確かめたら、アプリを作るときの設計書の最初のページにできます。将来図の「どこに残るか」に出てきた記録が、アプリでためるデータの材料です。小売店の仕入れから販売までの例なら、仕入伝票、商品、置き場所、預かり票がそれにあたります。これらの記録同士のつながりを描いたものがER図で、業務フロー図の次に作ります。
フロー図と手順表を一緒にAIへ渡す
フロー図と手順表をまとめてChatGPTやClaude Codeに渡すと、AIは画面や権限を作るときに、誰がどの手順で入力するかを勝手に決めにくくなります。作っている途中で「この入力は誰がしますか」と聞き返されたら、それは図に無かった手順が見つかった合図です。図に戻って直してから進めます。ノーコードで組むか、AIにコードを書かせるかの判断は業務アプリをノーコードで自作するときの判断、AIに開発を任せるときの工程全体はAI駆動開発の進め方で整理しています。
図の上に書き切れない決めごとは別に残す
図を描くこと自体を目的にしないことも大切です。誰が決めるのか、例外が来たときにどこへ逃がすのかといった決めごとは、図の上には書き切れません。図の手前で決めておくことは業務設計とは(業務フローとの違い)にまとめました。
業務フロー図を先に作った効果の確かめ方
図を描く時間が元を取れているかは、次の3つを記録すると分かります。
- 図を担当者に見せるたびに、聞き直した箇所と直した矢印の数を記録します。2周目、3周目で直す数が0に近づいたら、アプリの話に進む合図です。
- いまの図で点線になっている動きの数を数えます。これからの図で実線に変わった数が、アプリで記録が残るようになる範囲です。
- 作り始めてから「この手順は誰がやりますか」「ここで何を残しますか」とAIや作り手から聞き返された回数を残します。フロー図で決めきれていなかった場所がここに出ます。
1本目の業務では比べる相手がありません。2つ目の業務で図を描くときに、1本目の記録と並べると、どの聞き取りで手戻りが減ったかが見えてきます。
一次情報・公式情報
- Mermaid「Flowcharts Syntax」(向きの指定、subgraph、分岐の形、点線の書き方)
- Mermaid Live Editor
- draw.io「Mermaid diagrams」(draw.ioへのMermaidの取り込み)
- GitHub Docs「図の作成」
業務フロー図とAIについてのよくある質問
ChatGPTで業務フロー図は作れますか?
作れます。画像で図を作らせるより、Mermaid記法のテキストで出させて、Mermaid Live Editorなどに貼って図にするほうが直しやすくなります。矢印1本を直すのも、文字を1か所書き換えるだけで済みます。ClaudeやGeminiでも同じ頼み方で下書きが出ます。
AIで作った業務フロー図は、どのツールで開けばよいですか?
無料で手軽なのはMermaid Live Editorで、貼るとその場で図になります。社内でdraw.ioを使っている場合は、配置(Arrange)→挿入(Insert)→Mermaidから貼り付けられます。GitHubのMarkdownにもMermaidを図として表示する機能があるので、設計書と同じ場所に置いておくこともできます。
スイムレーン(担当ごとのレーン)の図にできますか?
Mermaidでは、担当ごとに subgraph でまとめると、レーンに近い見た目になります。レーンの幅や並び順まで揃えたい場合は、draw.ioに取り込んでから手で整えます。AIに頼むときは、担当の並び順も手順表に書いておくと、描き直しが減ります。
業務フロー図とER図は、どちらを先に作りますか?
業務フロー図が先です。フロー図の「どこに残るか」の列に出てきた記録が、ER図の箱の材料になります。流れが決まる前にデータの箱から決めると、使われない箱や、どこにも入れる場所の無い記録が出やすくなります。
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泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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