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不動産

賃貸管理会社のKPI6指標と分母の決め方|入居率94.2%・滞納率1.2%と比べられる形にする

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仲介側の反響数・内見率・成約率については「不動産仲介の営業KPI5つ」で扱っています。この記事はフロー(反響から成約まで)ではなく、ストック(預かった戸数がどう減り、どう埋まるか)側の指標だけを扱います。

この記事のポイント

賃貸管理のKPIで最初に決めるのは指標の数ではなく分母。入居率は管理戸数、滞納率は入居戸数と、業界の公表値は分母がそれぞれ違う定義で出ている。分母をそろえないまま数字を並べても、良くなったのか悪くなったのかが判定できない。

賃貸管理会社でKPIの話をすると、まず出てくるのが「管理戸数」と「入居率」です。この2つはほぼ確実に出てきます。そして次の質問で止まります。「その入居率、去年より上がってるんですか」「他社と比べてどうなんですか」。

答えられない理由は、指標が足りないからではありません。分母が決まっていないからです。同じ「入居率95%」でも、管理戸数を分母にした95%と、募集中の物件だけを分母にした95%はまったく別の数字です。社内で毎月出している数字ですら、担当者が代わった時点で計算方法が変わっていることがあります。

この記事では、賃貸管理会社が持つべき6つの指標について、分母の置き方と月次の集計方法を整理します。先に、比較対象になる業界の公表値がどういう定義で出ているかを確認します。

業界の公表値は「定義」とセットで出ている

賃貸住宅の管理現場の数値をまとまった形で公表しているのが、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の「日管協短観(賃貸住宅市場景況感調査)」です。第28回は2023年4月から2024年3月を対象期間とし、2024年11月に公表されています。調査はインターネットによるアンケートで、協会会員の管理会社1,989社のうち699社が回答(回答率35.1%)しています。

この調査には、入居率と滞納率の算出方法が注記として明記されています。自社の数字を並べる前に、ここを読む必要があります。

指標2023年度の全国値調査が示している定義
入居率(全体)95.8%管理戸数ベースで算出
入居率(委託管理)94.2%集金管理を含む委託管理物件のみ
入居率(サブリース)97.0%サブリース物件のみ。委託管理とは別集計
月末での1ヶ月滞納率1.2%入居戸数に対する滞納戸数の割合。30日以降でも入金されないもの。保証会社からの代位弁済も滞納戸数に含む
月末での2ヶ月以上滞納率0.5%60日以降でも入金されないもの
平均居住期間(全体)50.2ヶ月(4年2ヶ月)単身は39.3ヶ月、ファミリーは63.0ヶ月

注目すべきなのは、入居率と滞納率で分母が違うことです。入居率は管理戸数を分母にし、滞納率は入居戸数を分母にしています。同じレポートの同じページに載っている2つの指標が、別々の分母で計算されている。自社で「全部管理戸数で割る」と決めてしまうと、滞納率だけが公表値と比較できなくなります。

もう1つ、代位弁済の扱いも見落とされます。保証会社が立て替えた分は自社の入金としては着地しているので、社内の集計では「回収済み」に入れてしまいがちです。公表値はこれを滞納戸数に含めています。ここが違うと、自社の滞納率だけ不自然に低く出ます。

なお、この調査の回答者は協会会員の管理会社です。全国のすべての賃貸管理会社の平均ではありません。目安として使う分には十分ですが、「業界平均を下回っている」といった評価を社内でするときは、母集団が会員企業であることを添えて話したほうが誤解が起きません。

賃貸管理で持つ6指標と、その分母

指標は増やすほど集計が止まります。実務で回るのは6つまでです。ここでは、月次で必ず出す前提で分母まで固定します。

指標分子 ÷ 分母つまずくところ
1. 管理戸数月末時点の受託戸数(比率ではなく実数)委託管理とサブリースを合算すると、入居率も収益も歪む。必ず分けて数える
2. 入居率月末の入居戸数 ÷ 月末の管理戸数募集停止中・改装中の住戸を分母から抜くと公表値と比較できなくなる
3. 解約率当月の解約戸数 ÷ 月初の入居戸数解約日と退去日のどちらで数えるかを決めていないと、月をまたぐ案件が二重計上される
4. 滞納率月末時点の滞納戸数 ÷ 月末の入居戸数代位弁済を滞納に含めるか。1ヶ月と2ヶ月以上を分けて持つか
5. 空室損失日数退去日から次の入居開始日までの日数(住戸ごとの中央値)原状回復にかかった日数と、募集してから決まるまでの日数が混ざる。分けて記録する
6. 更新率当月の更新成立件数 ÷ 当月に更新期が到来した件数分母を「更新案内を送った件数」にすると、送り漏れが数字に出なくなる

6つのうち、多くの会社で持てていないのが5番の空室損失日数です。入居率は「今どうか」しか映さないので、埋まらない住戸が1年放置されていても、他が埋まっていれば数字は動きません。空室損失日数は「1住戸あたり何日ぶんの賃料を落としているか」を直接見る指標で、オーナーに説明できる唯一の空室指標でもあります。

分母がずれると、実際に何が起きるか

1. サブリースを混ぜると、入居率が実力より高く出る

公表値でも委託管理94.2%に対しサブリース97.0%と差があります。両方を扱う会社が合算した入居率を出すと、サブリース比率が上がっただけで「入居率が改善した」ように見えます。改善したのは募集力ではなく構成比です。

2. 滞納率を金額で出すと、公表値と比べられない

金額ベースの滞納率は督促業務の負荷やキャッシュへの影響を見るには適していますが、公表値は戸数ベースです。両方持つのは構いません。ただし、同じ「滞納率」という名前で2つを混在させると、会議のたびに数字が食い違います。名前を分けます。

3. 解約率の分母を月末にすると、悪い月ほど数字が良く見える

解約が多い月は月末の入居戸数が減ります。それを分母にすると、解約が増えたのに解約率の上がり方が鈍ります。分母は月初(期首)で固定します。

4. 年換算のときに12倍しない

月次の解約率を12倍した年間解約率は、母数の変動を無視した近似です。年間で見るなら、12ヶ月ぶんの解約戸数の合計を年初の入居戸数で割ります。管理戸数が伸びている会社ほど、12倍した数字はずれます。

月次で回すなら、義務でやっている作業に乗せる

KPIの集計が続かない原因はほぼ1つで、集計そのものが「追加の仕事」になっているからです。逆に言えば、どうせ毎月やる作業の副産物として出るようにすれば止まりません。

賃貸管理業には、管理戸数200戸以上の事業者に国土交通大臣への登録が義務づけられており、登録事業者には営業所ごとの業務管理者の配置、管理受託契約前の重要事項の説明、家賃等の分別管理、そして委託者への定期的な業務報告が求められています(国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト・制度解説)。

このうちオーナーへの定期報告は、入居状況と入出金を必ず棚卸しする作業です。つまり、入居率と滞納率の材料は毎月必ず手元にそろっています。ここから会社全体の集計を自動で積み上げる形にすれば、KPI用の作業時間はほぼゼロになります。逆に、報告書を作ったあとで別途KPIシートに転記する運用にすると、3ヶ月で止まります。

管理システムを使っている場合、1・2・4番は多くの場合そのまま出せます。出せないことが多いのが3番と5番と6番です。特に空室損失日数は「退去日」「原状回復完了日」「募集開始日」「次の入居開始日」の4つの日付を住戸単位で残すだけで計算できますが、この4つが1箇所に揃っている会社は多くありません。まずこの4列を作るところからです。

原状回復は金額でなく「判断が割れた件数」を数える

原状回復を1件あたりの平均工事金額だけで見ると、物件の築年数や間取りの違いに引っ張られて、業務の良し悪しが読めません。管理業務として改善余地があるのは金額そのものではなく、負担区分の判断で入居者と揉めた件数のほうです。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、建物・設備の自然な劣化(経年変化)と、通常の使用によって生じる損耗は貸主負担、賃借人の故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用を超える使い方による損耗は借主負担という考え方が示されています。加えて、経過年数に応じて借主負担を減額する仕組みも示されています。このガイドラインは1998年に取りまとめられ、2004年と2011年に改訂されています(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について)。

判断基準が公表されている以上、揉めた件数は「基準がスタッフに伝わっているか」を映します。担当者ごとに件数が偏るなら、それは入居者の質ではなく説明手順の問題です。件数と、揉めた項目(クロス、床、設備、清掃など)の内訳を残すだけで、教育すべき箇所が特定できます。

収益としての原状回復の位置づけ、管理手数料や更新料との利益構成については「賃貸管理の収益モデルと損益分岐」で扱っています。あちらはどこで利益が出るかの話、この記事はそれを毎月どう測るかの話です。

市場の空室率は、自社KPIではなく背景として使う

入居率の話をすると、必ず市場の空き家データが持ち出されます。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、2023年10月1日時点の空き家は900万2千戸で空き家率は13.8%、うち賃貸のために空き家になっている住宅(賃貸用の空き家)は443万6千戸とされています(総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査 基本集計 結果の概要)。

この数字は住宅ストック全体を対象にした統計で、管理受託している住戸の入居状況とは母集団が違います。自社の入居率と直接引き算する対象ではありません。使いどころは、エリアの需給を説明するときの背景としてです。「自社の入居率が下がった」ことの原因を市場のせいにできるかどうかは、これだけでは判断できません。

自社の数字が動いた理由を切り分けるには、管理戸数の増減、解約率、空室損失日数を並べて見るほうが早いです。管理戸数を増やした直後は空室を含む物件がまとめて入ってくるので入居率は下がります。これは悪化ではなく仕入れの結果です。指標を単体で見ると、この区別がつきません。

最初の1ヶ月でやること

1週目:6指標それぞれの分子と分母を1行ずつ紙に書く。委託管理とサブリースを分けるかどうかもここで決める。決めたものを社内の1箇所に置く。

2週目:管理システムから今すぐ出せる指標と、出せない指標を仕分ける。出せないものは、必要な日付列を住戸台帳に追加する。

3週目:オーナーへの定期報告の作業手順の中に、集計への転記を組み込む。別作業にしない。

4週目:初回の6指標を出す。この時点の数字は良くも悪くも構いません。翌月と比べられる形になっていることだけが目的です。

この順番だと、初月から「前月比」が使えるようになります。逆に、指標を先に増やしてから定義を後付けすると、半年後に過去分を全部作り直すことになります。

まとめ

賃貸管理のKPIで先に決めるのは分母です。入居率は管理戸数、滞納率は入居戸数、解約率は月初の入居戸数。業界の公表値がこの形で出ている以上、自社も同じ分母にそろえないと比較が成立しません。代位弁済を滞納に含めるかどうかも、最初に1回決めておきます。

持つ指標は管理戸数・入居率・解約率・滞納率・空室損失日数・更新率の6つ。多くの会社で欠けているのは空室損失日数で、これは住戸台帳に4つの日付列を足すだけで出せます。そして集計は、毎月必ず発生するオーナーへの定期報告の作業に乗せる。追加の仕事にした瞬間に止まります。

数字を増やすより、1つの数字が翌月と比べられる状態にするほうが先です。

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※ 本記事の入居率・滞納率・平均居住期間は、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第28回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」(対象期間2023年4月〜2024年3月、2024年11月公表)に基づきます。調査は協会会員を対象としたアンケートであり、全国の賃貸管理会社の母集団平均ではありません。制度・調査内容は更新されることがあるため、判断に用いる際は各公表元で最新の内容をご確認ください。

よくある質問

賃貸管理会社の入居率は、何を分母にすればよいですか?

業界数値と比べるなら管理戸数を分母にします。日本賃貸住宅管理協会の「日管協短観」では、入居率と滞納率はいずれも管理戸数ベースで算出する方法をとると明記されており、2023年度の全国値は全体95.8%、委託管理94.2%、サブリース97.0%です。募集可能な戸数だけを分母にする社内定義でも運用はできますが、その数値を公表値と並べて評価することはできません。どちらの分母を使うかを先に決め、社内で統一することが先決です。

滞納率は戸数と金額のどちらで出すべきですか?

業界数値と比較する目的なら戸数ベースです。日管協短観の滞納率は入居戸数に対する滞納戸数の割合と定義され、家賃債務保証会社からの代位弁済も滞納戸数に含めています。2023年度の全国値は月末での1ヶ月滞納率が1.2%、2ヶ月以上滞納率が0.5%です。金額ベースの滞納率は回収業務の負荷を見るには有効ですが、公表値とは別の指標として持つ必要があります。

賃貸管理でKPIを持つ必要があるのは何戸からですか?

戸数の下限はありませんが、管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者には国土交通大臣への登録が義務づけられ、登録業者にはオーナーへの定期報告や財産の分別管理などの義務が課されます。これらの義務は月次で必ず発生する作業なので、その作業の副産物としてKPIを出せる形にしておくと、KPI集計のための追加作業がほぼゼロになります。200戸前後は設計を見直す目安になります。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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