電子カルテとレセコンの違い|役割は「診療記録」と「請求」、一体型と連携型の選び方と費用の見方
電子カルテとレセコンの違いの結論
「結局どう違うのか」という質問が必ず出ます。どちらもパソコンの画面に見えるぶん、役割の境目が分かりにくいためです。
- 役割が違います。レセコンは算定してレセプトを作るもの、電子カルテは診療録を電子化して保存するものです。
- 厚生労働省の標準仕様書に定義が書かれています。どちらが上位ということはなく、機能としては両方が必要になります。
- 一体型か別システムかは製品の形の話です。この選択と、どちらの機能が要るかは別に考えてください。
この記事のポイント
レセコンは「算定してレセプトを作る」、電子カルテは「診療録を電子化して保存する」。厚生労働省の標準仕様書に定義が書かれており、両者は別の役割を持つ。一体型か別システムかは製品の形の話で、機能としてはどちらも必要になる。
クリニックのシステムの話をしていると、「レセコンと電子カルテって、結局どう違うんですか」という質問が必ず出ます。どちらもパソコンの画面で、どちらも患者さんの情報を扱い、どちらも受付や診察室に置いてある。使っている側からは境目が見えにくい、というのが正直なところだと思います。
この違いは、感覚ではなく公式に定義されています。厚生労働省は2026年3月31日に「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」を公表し、中小病院向けと医科診療所向けの標準仕様書1.0版を出しました。この中に、両者の定義がそれぞれ言葉で書かれています。まずそこから確認します。
厚生労働省による、それぞれの定義
標準仕様書の用語の項に、次のように書かれています。
レセプトコンピュータ(医事会計システム)
「医療機関において、診療行為等の情報に基づき診療報酬を算定し、患者負担金を計算するとともに、診療報酬請求のための診療報酬明細書(レセプト)の作成及び請求処理を行う機能を有するコンピュータ」
電子カルテ
「従来、医師が患者の診療記録を記入していた紙のカルテ(診療録)を電子化し、データとして保存したもの」
出典: 厚生労働省「医科診療所向け電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様書(基本要件)1.0版」(令和8年3月31日)
並べると、違いは一言で言えます。レセコンはお金を扱い、電子カルテは診療の記録を扱う。レセコンの定義には「算定」「患者負担金」「レセプト」「請求」が並び、電子カルテの定義には「診療記録」「診療録」「保存」が並びます。重なっている単語がひとつもありません。
「レセプト」と「カルテ」が混同されやすいのは、元になる情報が同じだからです。診察して、処置をして、薬を出す。この一連の行為が、片方では診療の記録として残り、もう片方では点数として集計されて請求書になります。入口が同じで出口が違う、という関係です。
役割の対比
| レセコン(医事会計システム) | 電子カルテ | |
|---|---|---|
| 扱うもの | 診療報酬の算定、患者負担金の計算 | 診療録(カルテ)とその保存 |
| 主な出力 | 診療報酬明細書(レセプト)、窓口の会計 | 診療の経過記録、検査結果や画像との一元管理 |
| 主に触る人 | 医事課・受付の事務スタッフ | 医師(診療の記録者) |
| 止まると起きること | 会計ができない。月初のレセプト請求が出せない | 診療の記録が残せない。過去の経過が引けない |
| 外部との関係 | 審査支払機関へレセプトを提出する | 他の医療機関等との情報連携が想定される |
「止まると起きること」の行が、実務上いちばんわかりやすい判別法だと思います。会計が止まるならレセコン側、記録が止まるなら電子カルテ側の話です。院内で「システムが落ちた」という言葉が飛び交ったときも、この2つのどちらなのかを最初に切り分けると話が早くなります。
レセコンの出口には、請求の仕組みがつながっている
レセコンが作ったレセプトは、審査支払機関に提出されます。ここで使われるのがレセプト電算処理システムです。社会保険診療報酬支払基金の説明では、これは「保険医療機関等が、電子レセプトをオンラインにより審査支払機関に提出し、審査支払機関において、受付、審査及び請求支払業務を行い、保険者が受け取る仕組み」とされています。
電子レセプトは、厚生労働省が定めた規格・方式に基づき、レセプト電算処理マスターコードを使ってCSV形式のテキストで記録されたものです。そして請求方法については、令和5年11月30日付の請求命令の一部改正により、令和6年(2024年)4月1日以降はオンライン請求が基本的な請求方法となっています。
つまりレセコンは院内だけで閉じたシステムではなく、外部の請求の仕組みに接続する前提の設備です。電子カルテを「入れるかどうか」で議論できるのに対し、レセコンは請求を続ける限り何らかの形で必要になる、という非対称があります。
一体型か、別システムか
役割が違うことと、製品が分かれていることは別の話です。実際には、電子カルテとレセコンが1つの製品にまとまっている形もあれば、別々の製品を連携させている形もあります。
厚生労働省の標準仕様書も、この両方を前提に書かれています。同書には、電子カルテとレセプトコンピュータが別個のシステムである場合には当該電子カルテ部分の、一体となったシステムである場合には当該システムのうち電子カルテ部分の標準的な仕様を規定する、という趣旨の記載があります。国の側も「どちらか一方の形が正しい」という書き方はしていません。
| 一体型(同じ製品に両方入っている) | 別システム(連携させる) | |
|---|---|---|
| 情報の受け渡し | 製品の中で完結する | 連携の仕様に依存する。ここが弱いと二重入力が発生する |
| 製品選びの自由度 | 両方まとめて決めることになる | 片方だけ替える判断ができる |
| トラブル時の窓口 | 1社に集約されやすい | どちら側の問題かの切り分けが先に必要になる |
| 入れ替え時 | まとめて移行するため、影響範囲が大きい | 段階的に替えられるが、連携の作り直しが発生する |
どちらが優れているという話ではなく、判断の分かれ目は「今どちらをいつ替えたいか」です。レセコンだけ先に更新したい事情があるなら別システムのほうが動きやすく、運用の窓口を一本化したいなら一体型のほうが楽になります。
なお、別システムで運用していて起きがちなのが、同じ情報を両方に打ち込む二重入力です。これは役割の違いではなく連携の作り方の問題なので、別記事の電子カルテとレセコンの連携で二重入力をなくす方法で扱っています。
導入費用とランニングコストを、見積で分けて聞く
電子カルテとレセコンの費用は、月額の数字だけを並べても比べられません。同じ「導入費用」という言葉が、製品によって含む範囲が違うからです。見積を受け取るときは、次の費目に分けて出してもらうと、一体型と別システムの差がそのまま見えます。
| 費目 | 見積で聞くこと | 一体型で起きること | 別システムで起きること |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 導入設定、マスタ整備、過去データの移行、院内ネットワークの工事 | 電子カルテ分とレセコン分が一度に出る | 製品ごとに出たうえで、連携の設定費が別に載る |
| 月額 | ライセンス、保守、サポート、クラウド利用料の内訳 | 請求も問い合わせ窓口も1本にまとまる | 2本になる。障害時はどちら側かの切り分けが先に要る |
| 改定・更新時 | 診療報酬改定への対応が保守に含まれるか、都度費用か | まとめて発生する。時期を選べない | 片方ずつに分散できるが、連携の再確認が要る |
| 連携 | 検査機器や予約システムとつなぐ開発費と、その維持費 | 製品内の受け渡しは不要。外部との連携は別に発生する | 連携そのものが費目になる。製品更新のたびに確認が要る |
| やめるとき | データをどの形式でどこまで持ち出せるか、その作業費 | まとめて移すため、影響範囲が大きい | 片方ずつ移せるが、連携を作り直すことになる |
特に見落とされやすいのが診療報酬改定への対応費用です。保守料に含まれているのか、改定のたびに別途かかるのかで、数年単位の総額が変わります。クラウド型か院内サーバ型かでも、ハードの更新費が出るかどうかが変わります。
国や自治体の支援制度を使う場合は、年度ごとに条件と期限が変わるため、公式の公募要領で対象経費を確認します。見積の費目と、制度が対象にする経費は一致しないことがあります。
2026年時点で、両者に共通して求められていること
ここ数年で変わったのは、レセコンも電子カルテも「国の医療DXの仕組みに接続する部品」として位置づけられたことです。標準仕様書では、レセコンの必須要件として次のような接続機能が挙げられています。
1. 共通算定モジュールとの連携
共通算定モジュールは、診療報酬の算定と患者の窓口負担金計算を行うための全国統一の共通的な電子計算プログラムです。社会保険診療報酬支払基金の案内では、クラウド型レセプトコンピュータ向けの医科・DPC共通算定モジュールが令和8年(2026年)6月1日から本格運用を開始したとされています。
2. オンライン資格確認等システムに関する機能
ベンダー向けの技術解説書に規定された機能を有することが求められています。
3. 電子処方箋管理サービスに関する機能
一部の機能は推奨要件に分けられており、また経過措置が設けられています。
4. 電子カルテ情報共有サービスに関する機能
記録条件仕様書などに規定された機能を有することが求められています。こちらにも経過措置があります。
※ 要件の区分(遵守・推奨)や経過措置の内容は標準仕様書本文をご確認ください。
電子カルテ側の基本要件としても、電子カルテ情報共有サービスおよび電子処方箋への対応、ガバメントクラウド対応が可能なマルチテナント方式(SaaS型)のクラウド型サービス、関係システムへの標準APIの搭載、データ引き継ぎが可能な互換性の確保が示されています。
4つ目の「データ引き継ぎが可能な互換性の確保」は、導入検討の場ではあまり話題になりませんが、実務では効きます。今の製品を選ぶ判断より、次に替えるときに困らないかどうかのほうが、長い目で見ると影響が大きいからです。
普及率の実際
「電子カルテはもう当たり前」と語られがちですが、公表されている数字はもう少し慎重です。厚生労働省の医療施設調査に基づく「電子カルテシステム等の普及状況の推移」では、令和5年時点の電子カルテシステムの普及状況は次のとおりです。
| 区分 | 令和2年 | 令和5年 |
|---|---|---|
| 一般病院 | 57.2% | 65.6%(4,638/7,065) |
| 一般診療所 | 49.9% | 55.0%(57,662/104,894) |
| 一般病院のうち200床未満 | 48.8% | 59.0%(3,073/5,208) |
出典: 厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」(医療施設調査)。一般診療所は歯科医業のみを行う診療所を除く。
一般診療所では、令和5年時点でおよそ半分強です。一方で、2025年12月に公布された医療法等の改正法により、政府は2030年12月末までに電子カルテの普及率が約100パーセントとなることを達成するよう、クラウド関連技術その他の先端的な技術の活用を含め、医療機関の業務における情報の電子化を実現しなければならない旨が定められました。数字と目標の間には、まだ距離があります。
言い換えると、レセコンだけで運用しているクリニックは今も珍しくありません。「うちはレセコンしかないから遅れている」という話ではなく、そこからどう順序立てて進めるかという話です。
診療所と中小病院では、読むべき仕様書が違う
厚生労働省が2026年3月31日に公表した標準仕様書は、「中小病院向け」と「医科診療所向け」の2つに分かれています。 どちらも1.0版で、公表日は同じです。定義や基本的な考え方は共通していますが、 対象とする医療機関の規模が違うため、自院に当てはまるほうを読む必要があります。
この記事でここまで挙げてきた例は、医科診療所向けの仕様書と、 無床・少人数のクリニックを前提にしています。 病棟を持つ規模で検討している場合は、部門システムとの連携や入院に関する扱いが加わるため、 中小病院向けの仕様書を起点にしてください。 2つの仕様書は厚生労働省の同じページから、どちらも入手できます。
なお、2つの仕様書で具体的に何がどこまで違うかは、 上記の一覧ページには書かれていません。 ベンダーから「標準仕様に対応している」と説明を受けたときは、どちらの仕様書を指しているのかを確認してください。
開業するときと、入れ替えるときで決める順番が変わる
同じ「電子カルテとレセコンをどうするか」でも、これから開業する場合と、動いているものを替える場合では、先に決めることが違います。
開業するとき
請求は開院した月から発生します。前述のとおりレセコンは請求を続ける限り何らかの形で必要になるため、順番としてはレセコン側が先に決まります。そのうえで、電子カルテを同時に入れるか、紙で始めて後から足すかを決めます。判断材料は、診療科ごとの記録の量と、医師が入力に使える時間です。
一体型を選ぶと窓口が1つになり、開業準備の手間は減ります。ただし、後から電子カルテだけを替えたくなったときの自由度は下がります。開業時の楽さと、数年後の入れ替えやすさのどちらを取るかという選択です。
入れ替えるとき
動いている診療を止められないので、並行稼働の期間と、切り替える日を先に決めます。月初はレセプト請求が重なるため、その時期は避けます。過去データをどの形式でどこまで持ち出せるかは、契約する前に確認します。
別システムで運用している場合は、電子カルテとレセコンを同時に替える必要はありません。困っている側から先に替え、もう片方は次の更新時期に合わせる、という進め方が取れます。これは一体型にはない利点です。
導入や入れ替えの前に整理しておくこと
製品比較の前に決めておくと、後戻りが減る項目があります。価格や機能一覧の比較は、これらが決まったあとのほうが早く終わります。
1. 今困っているのは、記録側か請求側か
記録が探せない・書くのに時間がかかるなら電子カルテ側、返戻が多い・月初の残業が重いならレセコン側の話です。ここが混ざったまま製品を見ると、どの機能を見ればいいかが決まりません。
2. 同じ情報を何回打ち込んでいるか
病名、処置、薬。これらを1日に何回、どの画面に入れているかを実際に数えます。回数が出ると、連携で解決する話なのか、運用で解決する話なのかが分かれます。
3. 今のデータをどう持ち出せるか
現行の製品から、過去のデータをどの形式でどこまで取り出せるかを、入れ替えを決める前に確認します。標準仕様書でも互換性の確保が基本要件に入っている論点です。
4. 国の仕組みへの対応状況と、その予定
共通算定モジュール、オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス。それぞれ「対応済みか、いつ対応予定か」をベンダーに確認します。標準仕様書には経過措置もあるため、現時点の状況と今後の予定を分けて聞くのが実際的です。
まとめ
レセコンは診療報酬を算定してレセプトを作るシステム、電子カルテは診療録を電子化して保存するシステムです。厚生労働省の標準仕様書に定義が書かれており、扱う情報が違います。入口の情報は同じでも、出口が「請求」と「記録」に分かれます。
一体型か別システムかは製品の形の話で、どちらの機能も必要である点は変わりません。そして2026年時点では、両方に対して国の医療DXの仕組みへの接続が求められる方向に進んでいます。製品を比べる前に、困っているのが記録側か請求側か、同じ情報を何回打ち込んでいるか、今のデータをどう持ち出せるか。この3つを先に書き出しておくと、検討が早く終わります。
関連記事
参照した一次情報
- 厚生労働省「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」(中小病院向け・医科診療所向け標準仕様書1.0版、令和8年3月31日)
- 厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」(電子カルテシステム等の普及状況の推移/出典: 医療施設調査)
- 社会保険診療報酬支払基金「レセプト電算処理システム」
- 社会保険診療報酬支払基金「共通算定モジュール」
- 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス(医療従事者向け)」
※ 制度・仕様・スケジュールは変更されることがあります。実際の導入判断にあたっては、上記の一次情報および各ベンダーの最新の案内をご確認ください。本記事は特定の製品を推奨するものではありません。
よくある質問
レセコンと電子カルテは何が違うのですか?
扱っている情報が違います。厚生労働省の標準仕様書では、レセプトコンピュータ(医事会計システム)は「診療行為等の情報に基づき診療報酬を算定し、患者負担金を計算するとともに、診療報酬請求のための診療報酬明細書(レセプト)の作成及び請求処理を行う機能を有するコンピュータ」と定義されています。一方で電子カルテは「従来、医師が患者の診療記録を記入していた紙のカルテ(診療録)を電子化し、データとして保存したもの」と定義されています。つまりレセコンはお金(算定と請求)、電子カルテは診療の記録を扱うシステムです。
電子カルテを入れればレセコンは不要になりますか?
不要にはなりません。診療報酬の算定とレセプト作成の機能は引き続き必要です。ただし両者が1つの製品にまとまっている「一体型」の形はあります。厚生労働省の標準仕様書も、電子カルテとレセプトコンピュータが別個のシステムである場合と、一体となったシステムである場合の両方を想定した書き方になっています。一体型を選んだ場合でも、レセコンにあたる機能そのものがなくなるわけではなく、同じ製品の中に含まれる形になります。
レセコンの導入や入れ替えで、2026年時点で確認すべきことは何ですか?
国の医療DX施策への対応状況です。厚生労働省が2026年3月31日に公表した医科診療所向けの標準仕様書では、レセコンの必須要件として、共通算定モジュールとの連携、オンライン資格確認等システムに関する技術解説書に規定された機能、電子処方箋管理サービスに関する機能、電子カルテ情報共有サービスに関する機能が挙げられています(一部には経過措置が設けられています)。またデータ引き継ぎが可能な互換性の確保も基本要件に含まれているため、将来の入れ替え時にデータをどう持ち出せるかも確認対象になります。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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