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不動産

不動産取引の本人・権限確認記録|実質的支配者・証拠・疑わしい取引判断をつなぐ

不動産取引の本人確認を「身分証を受け取った」で終えると、誰について何を、どの方法で、いつ確認したか説明できない。法人、代理人、代表権、実質的支配者、取引目的、入出金の不一致など確認対象が増えると、担当者のメールと画像フォルダでは判断経路が切れる。

LINEアカウントと顧客の紐付けはLINE友だちの本人紐付け、契約書の電子化は電子契約ガイド、決済当日の実務は決済チェックリストが扱う。この記事は犯罪収益移転防止法等への対応を含む取引時の確認記録とエスカレーションに限定する。

書類ファイルではなく確認案件を作る

一人の顧客でも複数取引や役割があり、確認情報が更新されることがある。確認案件IDを作り、顧客、取引、物件、契約、入出金、担当者を結ぶ。資料そのものと、資料を使って何を確認したかを別項目にする。

項目役割
確認案件・顧客・取引ID顧客台帳、物件、契約、入出金へ結ぶ
顧客区分・当事者役割個人・法人、売主・買主、代理人等を区別
確認事項・方法・日時何をどの資料・方法で誰が確認したか記録
代理権・法人権限本人との関係、権限根拠、代表・担当者を追う
実質的支配者・取引目的適用判定、申告、資料、確認結果を分ける
リスク所見・エスカレーション不一致、追加確認、管理者判断、記録保管を追う

確認書類の画像を必要以上に複製せず、会社の規程に従った保管先、アクセス権、識別情報、確認日時を記録する。個人の端末やチャットへ残さず、閲覧・更新できる役割を限定する。

適用判定を取引の入口に置く

すべての問い合わせへ同じ確認を強制するのではなく、取引、顧客、役割、金額・支払方法等の事実から、どの確認手順を適用するか社内規程で判定する。現場担当が法令を記憶して選ばず、最新の公式資料を管理責任者が手順へ反映する。

  • 取引の種類と当事者としての役割
  • 顧客が個人か法人か、代理人がいるか
  • 本人・法人・代理権について必要な確認
  • 取引目的、職業・事業内容等の確認要否
  • 実質的支配者に関する確認要否
  • 追加・厳格な確認や管理者判断へ上げる条件

この記事は適用対象を網羅的に断定しない。案件の該当性、確認事項・方法、記録・保存、届出要否は法令改正や個別事情を踏まえ、弁護士・行政書士など適切な専門家へ確認する。

個人・法人・代理人の関係を図にする

法人担当者の本人確認だけで法人や代表権の確認が終わったと扱わない。契約当事者、来店・連絡した人、代表者、代理人、実質的支配者の関係を別レコードで持ち、関係の根拠資料と確認者を結ぶ。

対象記録する問い
契約当事者誰が権利・義務を負うか
窓口・来訪者本人・法人とどの関係か
代理人何の権限をどの根拠で持つか
法人名称、所在地、事業、代表等をどう確認したか
実質的支配者適用判定、申告者、根拠、確認結果

確認方法と結果を分けて残す

「確認済み」のチェックだけでは監査や引き継ぎに使えない。確認事項、方法、提示・送付された資料の種類、識別に必要な情報、確認日時、担当者、結果、不一致、追加確認を記録する。資料の有効性や真正性をシステムが自動断定しない。

  1. 適用手順と確認対象を確定する。
  2. 会社が定めた方法で必要情報・資料を受け取る。
  3. 資料間、申告、契約・入出金情報の整合を確認する。
  4. 不一致や不足を追加確認または管理者へ上げる。
  5. 確認結果、判断者、次に進める取引状態を記録する。
  6. 更新・再確認が必要な場合は期限と所有者を置く。

不一致を上書きして消さない

名称、住所、代表者、代理権、取引目的、資金の流れなどに不一致があれば、訂正後の値だけを残さない。最初の申告、確認資料、差異、顧客説明、追加資料、解消判断を履歴として持つ。不一致が単純な入力ミスか、追加判断が必要かを管理責任者が選ぶ。

  • 資料同士または申告との不一致
  • 代理権の範囲や有効性が確認できない
  • 法人・実質的支配者の情報が不足する
  • 取引目的や顧客属性と取引内容の説明が合わない
  • 契約当事者と送金・受領名義の関係が不明
  • 確認を避ける行動や通常と異なる変更がある

これらは自動的に違法・疑わしいと結論づける一覧ではない。事実を欠落なく残し、追加確認と社内エスカレーションを開始する入口にする。

疑わしい取引の判断を現場の勘にしない

現場担当は違和感を自由記述だけで報告せず、確認した事実、通常手順との差、顧客説明、関連取引、追加資料を記録する。管理責任者は最新の参考事例、リスク評価、社内規程に基づき追加確認・取引継続・届出検討等を判断する。

届出を検討・実施した事実の取扱いには注意が必要であり、顧客への伝え方を現場判断にしない。アクセス権を限定し、一般の顧客対応履歴と機微な判断記録の閲覧範囲を分ける。

国交省・警察庁の現行資料を正本にする

国土交通省は不動産業におけるマネー・ローンダリング対策として、取引時確認、確認・取引記録、疑わしい取引等の実務資料への入口を公開している。警察庁JAFICも改正事項に関する資料を公開している。

社内マニュアルには参照日と版を持たせ、公式更新時に適用判定、必要項目、本人確認方法、記録・保存、届出手順を責任者が見直す。ブログや過去のチェックリストを法令の正本にしない。

契約・決済工程へ完了条件を渡す

確認業務が完了していないのに契約や決済へ進まないよう、未着手、資料待ち、確認中、追加確認、管理者判断、完了の状態を持つ。完了には、適用した手順、必要事項、確認方法、差異解消、判断者がそろうことを定義する。

契約担当へ本人確認画像を送り直すのではなく、確認案件IDと完了状態、未解決事項、閲覧権限のある原本保管先を渡す。決済時に当事者や送金情報が変わった場合は、新しい事実として再確認要否を判定する。

月次に例外と権限を点検する

  • 確認案件なしで進行した取引
  • 必要資料・確認事項が空欄の案件
  • 追加確認・管理者判断が期限超過した案件
  • 契約・入出金情報の変更後に再確認されていない案件
  • 退職・異動者が確認記録へアクセスできる状態
  • 公式資料更新後も旧手順を使った案件

確認完了率だけでなく、差異がどこで生まれ、誰へ判断が集中したかを見る。本人確認を営業担当の経験に閉じず、管理責任者と専門家が例外へ集中できる運用へ変える。

一つの取引類型で記録を通す

  1. 対象となる取引類型と最新の公式手順を確認する。
  2. 顧客・代理・法人関係と確認項目を台帳化する。
  3. 資料受領、不一致、追加確認、管理者判断を一巡する。
  4. 完了状態を契約・決済工程へ連携する。
  5. アクセス、保存、更新、例外点検を責任者が確認する。

目的は確認項目を増やすことではない。取引を止めるべき例外を見逃さず、通常案件は必要な証拠と判断をそろえて進めることだ。誰を何の根拠で確認し、差異を誰が判断したか再現できれば、案件増加時も社長やベテラン一人の記憶に依存しない。

公式資料や社内規程が更新されたら、変更点、適用開始、対象取引、担当者への周知、旧版で進行中の案件の扱いを記録する。古いチェックリストを個人保存して使わないよう正本の場所と版を一つにする。研修は書類の見方だけにせず、法人・代理関係、不一致の記録、管理責任者へ上げる条件、顧客へ伝えてはいけない情報、個人情報の取扱いを匿名化例で確認する。判断に迷った時に勝手に進めたり断ったりせず、停止状態と相談先を選べることを合格条件にする。

よくある質問

本人確認書類の画像だけ保存すれば足りますか?

法令上必要な確認・記録は取引、顧客、法人・代理関係等で異なる。提示・送付された画像だけでなく、確認事項、方法、日時、担当者、資料の種類・識別情報、判断結果を最新の公式資料と社内規程に沿って記録する。

実質的支配者はすべての顧客で確認しますか?

適用対象と確認方法は顧客区分・取引等で異なる。法人取引では必要性を公式資料・社内規程で判定し、申告者、根拠資料、確認結果を残す。個別適用は専門家へ確認する。

疑わしい取引か現場担当が決めますか?

現場は違和感や事実を記録し、通常の確認記録へ残す。届出要否は定めた管理責任者が最新の法令・参考事例・社内規程に基づき判断し、顧客へ不適切に伝えない運用を整える。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

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この記事の数値について

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