SalesDock ロゴSalesDock

業務改善 · 公開 · 9分で読める

最終更新

エクセルでデータベースを作る方法|表の5つのルールと、限界が来るサイン

執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

エクセルでデータベースを作る方法|表の5つのルールと、限界が来るサイン

結論

エクセルは、表の作り方を守れば、小さなデータベースとして使えます。守る点は多くなく、1行を1件に決めることと、見出しを1行だけにすることが中心です。この記事では、表の5つのルール、作る手順、専用のデータベースとの違い、移す判断の目安を順に説明します。

  • エクセルでデータベースを作るとは、「1行=1件、1行目=見出し」の表を作ることです。5つのルールを守れば、フィルタ・XLOOKUP・ピボットテーブルで検索と集計ができます。
  • 手順は、テーブル化、プルダウンで入力をそろえる、IDを付ける、別の表から引く、ピボットで集計する、の5つです。
  • 入力する人が増える、別ファイルへ転記が出る、数字がそろわなくなる、のどれかが出たら限界のサインです。そこからは移す先を選びます。

エクセルのデータベースとは、1行を1件にした表のことです

データベースとは、情報を検索や集計がしやすい形で整理して、ためておく仕組みです。エクセルでこれを作るというのは、顧客、案件、商品などを1行=1件、1列=1項目に並べた表を作ることです。見た目が整った帳票ではなく、あとから絞り込める「元のデータ」を作ります。

見た目を優先した表は、データベースには向きません。月ごとの表を縦に積んだり、セルを結合して見出しを作ったりした表は、人が読むには分かりやすくても、並べ替えや集計をかけると崩れます。次の図は、同じ内容を2通りに書いた例です。

崩れる表(見た目重視)10月分の案件(結合セル)A社 進行中/B社 対応中(空行)使える表(1行=1件)ID 取引先 状態 更新日001 A社 進行中 10/5002 B社 対応中 10/9見出しは1行だけ。結合も空行も作らない
同じ内容でも、並べ方でデータベースになるかが決まります。人が読む帳票は、別のシートに分けて作ります。

表を崩さないための5つのルール

エクセルのデータベースは、表の作り方で決まります。見出しを1行にする、1行を1件にする、1セルに1項目、空行・空列・結合セルを作らない、表記を1通りにする、の5つを最初に決めておくと、テーブル機能も関数もピボットテーブルも、そのまま使えます。あとから直すより、最初の1行目を決めるほうがずっと手間がかかりません。

エクセルで表を作るときの5つのルール
ルール具体的には守る理由
1行目は見出しだけにするタイトルや日付を表の上に置かないテーブル化・フィルタ・ピボットが、見出しの位置を自動で認識できる
1行を1件にする1行=1社、1行=1案件、1行=1回の取引のどれかに決める途中で意味が変わる行があると、数えるたびに結果が変わる
1つのセルに1つの項目「大阪市北区」と「3F」を分けて入れる/氏名と電話番号を同じセルに入れない並べ替えと絞り込みは、セル単位でしか効かない
空行・空列・結合セルを作らない見た目の区切りは罫線や色で付ける空行で表が分断され、結合セルは並べ替えを失敗させる
表記を1通りに決める「(株)」「株式会社」を混ぜない。日付は日付形式、金額は数値で入れる表記ゆれは重複と集計漏れの最大の原因

最初に決めるのは「1行が何を表すか」です。取引先ごとなのか、案件ごとなのか、請求ごとなのかが決まらないまま列を増やすと、あとで集計の単位が合わなくなります。迷うときは、「この表を数えたとき、何の件数になるのが自然か」を考えます。

エクセルでデータベースを作る5つの手順

ルールに沿った表ができたら、エクセルの標準機能を順に使います。特別な追加機能は要りません。

作る手順と使う機能
手順操作得られること
テーブルにする表の中を選び、Ctrl+T(Macはcommand+T)行を足すと範囲・書式・数式が自動で広がる
入力をそろえるデータの入力規則でプルダウンを作る「進行中」「対応中」のような表記ゆれを防ぐ
1件を見分けるIDを付けるA列に通し番号か、取引先コードを置く同じ名前の会社や案件を取り違えない
別の表から引くXLOOKUP(または VLOOKUP)で、IDをキーに取引先名や単価を取り込む同じ情報を複数の表に手で書き写さずに済む
集計して見るピボットテーブルで月別・担当別に集計する元の表を崩さずに、見る角度だけ変えられる

テーブルにすると、行が増えても範囲がずれません

表の中のセルを1つ選んで、Ctrl+Tを押します。見出し行があることを確認して決定すると、表が「テーブル」になります。以後、下に行を足すと、書式と数式が自動で広がります。「範囲を選び直し忘れて、集計から最後の数行が漏れた」という事故を防げます。

プルダウンで入力の表記をそろえます

状態や担当者のように、選択肢が決まっている列は、入力規則でプルダウンにします。自由入力にすると、「対応中」「対応中 」(末尾の空白)「対応中。」が別の値として数えられます。選択肢はテーブルの別シートに書いておき、そこを参照させると、あとから追加しても全行に反映されます。

別の表から引くときは、名前でなくIDで結びます

取引先の住所や担当者を、案件の表に毎回手で書き写していると、変更があったときに片方だけ古くなります。取引先の表に通し番号のIDを持たせ、案件の表にはIDだけを書いて、XLOOKUPで取引先名を引きます。会社名は表記ゆれや社名変更が起きますが、IDは変わりません。表を分けてIDで結ぶ考え方は、スプレッドシートのデータベース化で、受注台帳を4つの表に分ける手順として詳しく書いています。

データベースは、入れた情報を探し出せて初めて役に立ちます。エクセルの表では、目的に応じて次の機能を使い分けます。件数が数千行までで入力者が少ない顧客管理や案件管理の一覧なら、この4つで日常の検索はまかなえることが多いです。件数や運用によっては足りなくなります。

検索・抽出・重複チェックの使い分け
やりたいこと使う機能ひと言メモ
条件に合う行だけを見るテーブルのフィルター(Ctrl+Shift+L)状態が「進行中」の案件だけ、のような絞り込みに使う
特定のIDの情報を1件だけ取り出すXLOOKUP(または VLOOKUP)IDをキーに、取引先名や単価を別の表から引く
条件に合う行を別の場所に抜き出すFILTER関数(Microsoft 365・Excel 2021以降)古い版では使えないので、共有相手の版を確かめる
重複を見つける条件付き書式の「重複する値」/データタブの「重複の削除」実行直後は Ctrl+Z で戻せますが、保存して閉じると元に戻せないので、先にコピーしたシートで試す

重複は入る前に防ぐ

重複は、増えてから消すより、入る前に防ぐほうが確実です。IDの列に重複を禁止する入力規則(ユーザー設定の数式で COUNTIF を使う方法)を入れておくと、直接入力した場合は同じIDの二重登録を止められます。ただし、入力規則はセルへの直接入力だけを検査し、貼り付けやコピー、オートフィルで入れた値は検査されません。定期的に条件付き書式の「重複する値」で確かめてください。会社名のように表記ゆれがある列は、完全一致の重複検査ではすり抜けるため、IDで見分ける前提にしておきます。

入力の手間を減らす

入力の手間を減らしたいときは、入力用の「フォーム」を使います。Excelには、1件ずつ入力・検索できる標準の「フォーム」コマンドがありますが、初期状態ではリボンに出ていないので、クイックアクセスツールバーに追加して使います。入力者が増える場合は、Microsoft Formsなど別の入力画面から表に集める方法もあります。ただし、Microsoft Formsなどで複数人が入力する運用になったら、編集する場所の重なりや入力ミスを運用だけで防ぎにくくなり、エクセルを専用のデータベースへ移すサインに近づいています。

共有ファイルの注意

複数人で見る表は、OneDriveまたはSharePoint Onlineに置き、共同編集に対応するExcelで開けば、同じブックを同時に編集できます。変更も作業中に表示されます。

Microsoftの説明では、2人が同じ箇所を変更した場合は、例外はあるものの、一般に最後に保存された変更(自動保存を含む)が優先されます。共同編集は同時作業には有効ですが、同じ箇所の編集や誤入力を自動で防ぐ仕組みではありません。必要なら担当する領域やシートを分けます。出典:Microsoft サポート「Excel ブックの共同編集を使用して同時に共同作業を行う」

専用のデータベースと比べると、エクセルが弱いのは4点です

エクセルは自由度が高い反面、データを守る仕組みは持っていません。個人で使うぶんには問題にならなくても、複数人で使い始めると、次の4点で差が出ます。

エクセルと専用のデータベースの違い
場面エクセルの場合専用のデータベースの場合
同時に編集するOneDriveまたはSharePoint Onlineに保存し、対応版のExcelを使えば共同編集できる。ただし、同じ箇所を変更した場合は、一般に最後に保存された変更が優先される入力する人ごとに画面と権限を分けられる
入力の正しさを守る入力規則を設定しても、貼り付けで簡単に迂回できる項目ごとに型や必須を決め、貼り付けでも検査できる
表どうしのつながりVLOOKUPの参照先が1行ずれても気づかないIDで表を結び、結び先がなければ登録できない
更新の履歴誰がいつ書き換えたかは、バージョン履歴を遡らないと分からない項目ごとの更新履歴を標準で残せる

なお、1シートで扱える量にも上限があります。上限そのものはExcelの最大行数は1,048,576行で説明していますが、業務で困るのは、行数に届くずっと前の、人が増えたときのずれのほうです。

エクセルで管理すると起きること

同じ進捗を複数の表へ転記すると、どれが最新か分からなくなります

エクセルで案件を管理しながら、部署用や報告用の表にも同じ進捗を書き写すと、更新する場所が増えます。一つの表だけを直した時点で内容が食い違い、どの表が最新かを毎回確かめる作業が必要になります。

部門ごとに表を分けると、質問のたびに集計が始まります

部門ごとに別のエクセルで数字を作ると、全社の合計を一つの表から出せません。「今月いくら」と聞かれるたびにファイルを集める作業が始まるなら、数字がないのではなく、元にする表が決まっていない状態です。

移すかどうかは、3つのサインと、移す先の条件で決めます

エクセルのデータベースが限界に来たかどうかは、行数ではなく次の3つで見分けます。

  • 入力する人が3人以上になった。担当範囲を分けないと、同じ箇所を同時に書き換える機会が増える。
  • 別ファイルへの転記が出てきた。同じ数字を複数のファイルに手で書いている。
  • 集計のたびに数字がずれる。誰かが直したことが、ほかの人に伝わらない。
3つのサインを確かめる入力が3人以上/転記がある/数字がずれる、のどれかなしありエクセルのまま5つのルールを固定移す先を選ぶ1件の定義が先移す前に、1行が何を表すかを決める
移す判断は、行数でなく人と転記の数で行います。サインが出ていなければ、ルールを固めるだけで足ります。

サインが出たら、移す先を選びます。移す先ごとに向く条件が違うので、1つを最良とせず、次の表で自社の条件に合うものを選びます。

移す先ごとの向く条件と注意点
選択肢向く条件注意する点
Excelのまま運用ルールを固める入力する人が1〜2人/表が1つ〜数枚/月に1回見られれば足りる入力者が増えた、別ファイルへの転記が出てきた
Accessなどの据え置きのデータベースWindowsのパソコンで、社内の数人が使う/表を複数に分けて結びたい社外やスマホから入力したい、作った本人しか直せない
kintoneなどのクラウドの業務アプリ入力者が複数いて、画面・権限・通知まで欲しい/まず小さく始めたい1件の定義があいまいなまま移すと、同じ混乱が移るだけ
個別に作る(業務アプリの開発)業務の流れが独特で、既製品の画面に収まらない業務の整理が済んでいない段階で頼むと、作り直しになりやすい

移すときは、既存データの整理も必要です。支援先では、別の営業管理システムからデータを移した際に、数万件規模の会社データのうち1割ほどが重複していました。移行前に1件を見分けるIDと入力ルールを決め、重複の判定材料を集めた確認シートで整理しました。

どの選択肢でも、先に決めるのは「1件とは何か」と「誰が、何で入力するか」です。これが決まっていないと、移した先でも同じ表の混乱が起きます。移す対象の見極めと進め方はエクセル業務のシステム化に、判断の基準はExcelでの管理、いつ卒業すべきかにまとめています。

効果は「転記の回数」と「数字を直した回数」で測ります

表のルールを決めたら、月に1回、2つを数えます。同じ内容を別の場所へ手で書き写した回数と、集計の数字を後から直した回数です。ルールを守った表では、どちらも減っていくはずです。減らないなら、表の作り方ではなく、入力する人の運用に原因があります。

来週は、いちばん使っている表の「1行の意味」を書き出します

いま一番よく使っているエクセルの表を開き、「1行が何を表すか」を1文で書いてみてください。書けない、または行によって意味が違うなら、そこが直す場所です。続けて、見出しが1行か、結合セルや空行がないかを確かめます。ここまでで、データベースとして使える表かどうかが分かります。

SalesDockは、成長に業務・データ・仕組みが追いつかない中小企業の経営管理基盤を、月額で整える支援をしています。エクセルの表をデータベースとして整える話は、その入口の一つです。

NEXT STEP

エクセルの表を、移すか整えるか一緒に決める

いまの表の項目、入力する人、見る人を見ながら、整える・移すのどちらが合うかを無料相談で整理します。

無料相談を申し込む

エクセルのデータベースでよくある質問

エクセルはデータベースとして使えますか?

使えます。1行を1件とし、1行目を見出しにした表であれば、Excelはフィルタ、並べ替え、ピボットテーブルでデータベースのように検索・集計できます。ただし、同時に複数人が入力する、表どうしの整合性を守る、更新履歴を残す、といった点は専用のデータベースほど強くありません。

エクセルのデータベースとAccessは何が違いますか?

Excelは1枚の表を自由に編集することが得意で、Accessは複数の表を決まった型で結んで管理することが得意です。Accessでは、入力画面(フォーム)や、表どうしを結ぶ関係を設定でき、入力の正しさを仕組みで守れます。一方で、作った人以外が直しにくい、という運用上の課題が出やすくなります。

データベースにするなら、シートは1枚にまとめるべきですか?

1つの表に何でも詰め込むより、取引先、案件、請求のように「1行が表す単位」ごとに表を分けて、IDで結ぶほうが崩れにくくなります。表の分け方は、同じ考え方をスプレッドシートで扱った記事にまとめています。

何件くらいからエクセルでは厳しくなりますか?

行数の上限は1シートで1,048,576行ですが、実務ではその手前で困りごとが出ます。件数よりも、入力する人の数、別ファイルへの転記の有無、数字がそろわない頻度のほうが目安になります。

泉

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

代表者情報を読む →

この記事の数値について

本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。