業務改善
予実管理表の作り方|予算・実績・発注済み・残見込みを混ぜない列設計
予実管理表の作り方を、必要な列・Excelでの組み方・予算と実績の差異の見方まで解説します。数字を上書きせず、実績の正本、発注済み、残見込み、原因、次の行動を結ぶ列設計で、月次の予実管理を判断に使える形にします。
公開: ・ 最終更新: ・ 読了目安 10分
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
予実管理表は、予算と実績の二列だけでは足りません。発注済み、残見込み、差の原因、次の行動、更新責任を分けると、着地を変える判断に使えます。
- 一行の単位を一つにし、予算版と実績の正本を固定します。
- 確定実績・発注済み・残見込みを別列にし、上書きしません。
- 差異は数量・単価・時期・範囲・記録誤りへ分けます。
最初に置く業務場面
部門別の予実表はあるものの、月末に数字を貼り直すだけで、支出や営業の次の行動が決まらない場面を想定します。
ツール名から始めず、対象業務、入力、完了条件、判断者、例外時の戻し先を先に決めます。この順番は、SalesDockの支援記録から顧客固有情報を除き、複数の現場で再利用できる形に一般化したものです。
予実管理表とは何か
予実管理表は、予算と実績を並べて差を見る表です。予実管理の目的は差を報告することではなく、差が出た時点で支出、営業、人員配置のどれを動かすかを決めることにあります。
予実管理表は、予算・実績の二列だけでは判断に使えません。 月末までに何が確定していて、何がまだ見込みなのかが分からないと、会議で「で、どうする」が決まらないからです。つまり、確定した実績とは別に、発注済みと残見込みを独立した列として持つ必要があります。この記事では、発注済みと残見込みを実績とは別の列に分ける設計を解説します。
一行の単位から決めます
一行を部門、案件、商品、勘定科目のどれにするかで、表の用途が決まります。複数の単位を同じ行に混ぜると、合計は合っても原因を追えません。
列は、対象期間、管理単位ID、当初予算、承認済み予算、実績、発注済み、残見込み、着地見込み、差額、原因、次の行動、責任者、更新日を基本にします。不要な列は削れますが、予算の版と見込みの根拠は残します。
Excelで予実管理表を作る手順
Excelやスプレッドシートで始めるなら、シートを役割で分けます。「予算」「実績」「予実」の3シートにし、予実シートだけが他の2つを参照する形です。予実シートに数字を直接打つと、あとから出所を追えなくなります。
手順は次の順です。まず管理単位IDの一覧を作り、予算シートに版ごとの金額を入れます。次に会計ソフトから出力した月次の実績を実績シートへ貼ります。最後に予実シートで、SUMIFSなどを使い、管理単位IDと月をキーに予算と実績を引きます。
予実シートの差額は、プラスが有利になるように式の向きを行の種類で変えます。費用行は「予算−着地見込み」、売上行は「着地見込み−予算」とし、差額の見出しに「プラスが有利」と書いておきます。同じ向きの式を売上と費用に当てると符号の意味が逆になり、読む人が取り違えるためです。
- 管理単位IDは、予算・実績・予実の3シートで同じ表記にします。表記ゆれは、実績が拾われない原因になりやすい点です。
- 実績シートは貼り替え専用にして、手で直す場合は予実シートではなく元の会計データを直します。
- ブックを複数人で触るなら、入力列だけ保護を外し、計算列は保護します。
予実シートの記入例(金額は説明用の仮の数字。費用行の例で、差額は予算−着地見込み。プラスが有利)
| 管理単位ID | 月 | 承認済み予算 | 確定実績 | 発注済み | 残見込み | 着地見込み | 差額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A部門-外注費 | 10月 | 500,000 | 320,000 | 100,000 | 60,000 | 480,000 | 20,000 |
| A部門-広告費 | 10月 | 300,000 | 180,000 | 0 | 150,000 | 330,000 | -30,000 |
| B部門-外注費 | 10月 | 200,000 | 210,000 | 0 | 0 | 210,000 | -10,000 |
計算式より先に数字の状態を分けます
着地見込みは、確定実績に発注済みと残見込みを加えて考えます。ただし売上・費用で確度の考え方が違うため、同じ式を全行へ当てないほうが安全です。
実績と見込みを同じセルに入れると、締め後に過去の判断根拠が消えます。入力列と計算列を色だけで分けず、保護と権限でも分けます。
- 実績は会計または基幹システムから取り込みます。
- 発注済みは契約・発注番号と結びます。
- 残見込みは算定根拠と更新者を残します。
差異は数量・単価・時期・範囲へ分けます
差額だけでは行動が決まりません。販売数が少ないのか、単価が変わったのか、計上月がずれたのか、対象範囲が増えたのかを分けます。
差額に加えて、差異率も並べると、金額の大小が違う行を同じ基準で比べられます。差異率は「差額÷当初予算(または承認済み予算)」で出し、差額と同じくプラスが有利になる向きにそろえます。会議で取り上げる基準(例:差異率が±10%を超えた行)は会社ごとにあらかじめ決め、判断が止まった行を見て見直します。
入力漏れやコード誤りは業績差ではありません。業務上の差とデータ品質の差を別に数えると、経営会議が入力修正会議になるのを防げます。
更新の合図と締めを決めます
更新日はカレンダーだけでなく、受注、発注、検収、請求など記録が生まれる出来事と結びます。出来事のあとに誰がどの列を変えるかを決めます。
月次確定後は実績列を締め、遡及修正は履歴として残します。見込みは更新できますが、変更前の値と理由を消しません。
表が機能しているかを二週間で確かめます
二週間だけ一部門で使い、未更新行、差戻し、会議で行動が決まらなかった行を数えます。空欄を埋めるための追跡が増えたなら、列が多すぎるか入力元が間違っています。
表を清書するより、使われなかった列を削り、判断が止まった行へ必要な根拠を足します。二回続けて同じ手順で更新できてから対象を広げます。
SalesDockの公式サービスページでは、業務整理からシステム選定・実装・運用定着までを一つの窓口で支援すると案内しています。予実管理表について相談を受ける場合も、列を増やす前に一行の単位と更新者を決めるところから始めます。
判断を止めない比較表
| 列 | 誰が更新するか | 更新の合図 |
|---|---|---|
| 確定実績 | 経理・管理担当 | 月次締めまたは会計確定 |
| 発注済み | 発注責任者 | 発注承認・契約締結 |
| 残見込み | 部門・案件責任者 | 案件状況・範囲の変更 |
| 原因と次の行動 | 会議の判断者 | 差異確認と意思決定 |
来週までに確認するチェックリスト
- 一行が何を表すか一文で説明できます。
- 当初予算と修正予算を上書きせず残せます。
- 実績・発注済み・残見込みの重複がありません。
- 差異理由とデータ誤りを分けています。
- 未更新時の代理者と締め後の修正手順があります。
全部を一度に決める必要はありません。空欄が多い場合は、開発や契約を進めず、対象業務を一つに戻します。例外の担当者が決まらない場合も停止条件です。
確認した一次情報
- SalesDock『システム導入・業務改善支援』 — 業務整理からシステム選定・実装・運用定着までを一つの窓口で支援することと、運用定着・改善までの対応範囲を確認しました。
- 中小企業庁『中小会計要領』 — 確定実績を会計情報として扱う前提と、中小企業向けの会計処理の指針であることを確認しました。列の分け方や着地見込みの式、差異の分類の根拠ではなく、それらは実務上の設計案です。
- IPA『要件定義とは?』 — 業務フロー、管理データ、画面・帳票を要件として合意する考え方を確認しました。
制度、会計処理、法令、セキュリティの最終判断は、各分野の専門家と最新の公式資料で確認してください。本記事は個別の税務・法務・投融資判断を代行するものではありません。
次の判断へ進む関連記事
全体の位置づけは予実管理の全体像で確認できます。
次に決めることを一つに絞る
表を増やす前に、どの業務・数字の定義から整えるかを、まず60分で一緒に切り分けます。
無料で相談するよくある質問
予実管理表にはどの列が必要ですか?
対象期間、管理単位ID、予算版、実績、発注済み、残見込み、着地見込み、差額、原因、次の行動、責任者、更新日が候補です。判断に使わない列は減らします。
着地見込みはどう計算しますか?
基本は確定実績に発注済みと残見込みを加えます。ただし売上と費用で確度が違うため、対象ごとに重複と計上時期を確認します。
Excelの予実管理表で最初に作るシートは何ですか?
予算、実績、予実の3シートです。予算と実績は元データの置き場にし、予実シートだけが管理単位IDと月で両方を参照します。予実シートに直接金額を打たないことが、後から出所を追える条件です。
予実管理表を毎日更新すべきですか?
判断頻度に合わせます。記録は受注・発注など発生時、経営判断用の確認は週次、確定実績は月次のように役割を分けられます。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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