簿記×AIの使い方|勉強に使う頼み方と、AIの仕訳を確かめる5点
AIが仕訳を出す時代にも、簿記の知識が効く場面があります
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
「簿記 AI」と調べる人には、簿記の勉強にAIを使いたい人と、経理の仕事にAIを入れたい人がいます。この記事は両方に答えますが、どちらの場合も、AIの出力を人が確かめる前提で組みます。
- 勉強に使うなら、仕訳問題の作成・間違いの理由の確認・用語の言い換えが向く。AIの解答は誤ることがあるので、テキストや過去問の解説と突き合わせる
- 経理の実務では、AIが仕訳の候補を出し、人が確定する形が現実的。確定する人には、借方・貸方の向きや科目を読める簿記の知識が要る
- AIの仕訳がズレる原因は、AIの賢さより請求書のPDFなど入力の側にあることが多い
- 出てきた仕訳は、借方と貸方の向き・勘定科目・金額と税区分・日付と期間・取引先と摘要の5点で確認する
この記事は、簿記の学習と経理実務でのAIの使い方を扱います。複数法人でのルール設計は仕訳AI導入前のルール設計、AIエージェントに渡す範囲は経理AIエージェントに渡せる作業で扱っています。
簿記は、お金の動きを借方と貸方の2列で記録する方法です。AIが仕訳の候補を出せるようになっても、この2列の読み方は不要にはなりません。AIが出した答えが正しいかを判断する側に回るからです。
「簿記 AI」は2つの意味で使われる
結論から言うと、勉強にはAIを問題作成と解説の確認に使い、実務ではAIが仕訳の候補を出して人が確定します。
簿記とAIの組み合わせは、勉強に使う場合と、実務で使う場合の2つに分かれます。前者は自分が解けるようになるための道具、後者は会社の経理を回すための道具です。目的が違うので、気をつける点も変わります。
簿記の勉強にAIを使う頼み方
勉強では、AIを「問題を出してくれる相手」や「間違いの理由を聞ける相手」として使うと続けやすくなります。ただしAIの解答は金額や科目が誤ることがあるため、正はテキストと過去問の解説に置きます。次の表は、用途ごとの頼み方と注意点です。頼み方の文は、日商簿記3級の範囲を例にしています。
| 用途 | 頼み方の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 仕訳問題を作らせる | 「日商簿記3級の範囲で、商品売買の仕訳問題を5問、解答と解説つきで出して」 | 解答の金額や科目が誤ることがある。テキストや過去問の解説と突き合わせる |
| 間違いの理由を聞く | 自分の答えと正解を貼り、「どこで借方と貸方を取り違えたか」を聞く | 解説が本当に正しいかは、テキストの該当ページで確かめる |
| 用語を言い換えてもらう | 「繰延べと見越しの違いを、具体例1つずつで説明して」 | 例の金額は計算ミスが混ざりやすい。自分で計算し直す |
| 取引を文章にする | 「この仕訳は、実際にどんな取引があったときのものか」を文章で書かせる | 実務の例として自然かどうかは、出題範囲の外なので参考程度にする |
出題範囲や配点、試験の形式は、検定の主催者が公表しています。日商簿記の最新の情報は日本商工会議所の簿記検定ページで確認してください。学習計画や合格までの期間は、人によって大きく違うため、この記事では扱いません。
AIに仕訳問題を作らせたときは、解答を見る前に自分で解き、その後でテキストの解説と照らします。AIの解答とテキストが食い違ったら、テキストを正として、食い違った箇所を学習メモに残すと、誤りに気づく練習にもなります。
経理の実務では「AIが出し、人が確定する」
実務では、AIが請求書を読んで仕訳の候補を出し、経理担当者が確かめて確定する形が現実的です。確定する人が借方と貸方を読めないと、AIの誤りは素通りします。この確定の役割に、簿記の知識が残ります。
SalesDockの支援・相談の現場で聞いた話を、業種と規模だけを残して紹介します。
- 福祉・介護・保育の施設を複数運営する法人グループ:1か月分の請求書をまとめて本部へ送るため、消耗品・保健衛生費・日用品費などを勘定科目ごとに手作業で仕分けており、毎月まとまった時間がかかっていました。先方で一般的なチャットAIも試しましたが結果がずれて断念しており、請求書のPDFの文字がつぶれていたことも一因とされていました。当社は、会計ソフトへの入力をAIで検証する案を着手の第一候補として提案した段階で、成果が出た事例ではありません。
- 経理歴の長い担当者がいる中小企業:一般的なチャットAIで請求書の仕訳を試し、結果がズレたのでやめた例がありました。ズレの原因はAIではなく、請求書のPDF側にありました。
- 手書きの請求書が残る会社:請求書の仕分けをAIに任せる相談では、手書きの紙が出て「全部データでないから無理」という前提で始まることが多くあります。書き手が1人なら回る場合があります。
勘定科目の使い分けは会社ごとに違います。同じ日用品でも、保健衛生費に入れる会社と日用品費に入れる会社があります。AIは一般的な分類をするため、会社のルールに合うかを判断するのは人です。
AIが出した仕訳を確かめる5点
AIが出した仕訳は、借方と貸方の向き、勘定科目、金額と税区分、日付と期間、取引先と摘要の5点で確認してから確定します。件数が多いときは、金額の大きいものと初めての取引先から先に見ます。
- 借方と貸方の向き:資産・費用は増えると借方、負債・純資産・収益は増えると貸方、という向きが合っているか。向きの取り違えは、金額が合っていても見つかりにくい
- 勘定科目:取引の中身に合う科目か。消耗品費と事務用品費、保健衛生費と日用品費のように、会社の使い分けのルールに沿っているか
- 金額と税区分:請求書の合計と一致しているか。税込・税抜、消費税の区分が取引に合っているか
- 日付と期間:計上する月が合っているか。月をまたぐ取引を、請求書の日付だけで処理していないか
- 取引先と摘要:取引先名の表記が既存と揃っているか。後から探せる摘要になっているか
ズレが出たときは、原因を3つに分けて記録します。請求書が読み取れていなかった「読み取り」、会社の使い分けと違った「科目のルール」、初めての取引や特殊な処理の「例外」です。原因が「読み取り」に偏っていれば、AIを替える前に請求書の保存の仕方を直す番です。
簿記の知識はどこまで要るか
AIの仕訳を確かめる側に回るなら、日商簿記3級の内容(仕訳の基本、主な勘定科目)を目安にするのが当社の見立てです。日商簿記3級程度の理解がAIの仕訳を確かめる側の目安になる、というのは当社の見立てで、日本商工会議所などが定めた基準ではなく、効果を示した調査もありません。取引を借方と貸方に置く考え方と、主な勘定科目の意味が分かれば、AIの出力の違和感に気づけます。
逆に、連結や税効果のような複雑な処理は、AIが下書きを出しても、会社の状況によっては会計の専門家である税理士や公認会計士の確認が要ります。経理にAIを入れる流れで資格者の仕事がどう変わるかは、公認会計士はAIで不要になる?にまとめています。Excelで集計や関数を使う場面はChatGPTでExcelを使う方法が参考になります。
来週の一歩
- 勉強に使う人:過去問を1問自分で解き、AIに解説させて、テキストの解説と食い違う点を探す。
- 実務に使う人:直近1か月分の請求書を1か所に集め、PDFの文字が読めるかを先に見る。
- AIに勘定科目の候補だけを出させ、上の5点で確認して確定は担当者が行う。
- ズレた件数を「読み取り」「科目のルール」「例外」に分けて数え、仕分けにかかった時間を手作業と並べる。
SalesDockは、成長に管理が追いつかない中小企業の経営管理・業務・データの整備を、接続コンサルとして月額で支援しています。経理でいえば、AIを使う前に、請求書の保存の仕方と確認の流れを整える領域です。
一次情報・公式情報
この記事の5点の確認と3級程度の目安は、SalesDockの整理です。税務上の処理や法令の解釈は扱っていません。試験の制度は改定されるため、最新の情報は主催者でご確認ください。
よくある質問
簿記の勉強にAIを使っても大丈夫ですか?
使えます。仕訳問題の作成、間違いの理由の確認、用語の言い換えは相性がよい使い方です。ただしAIの解答や解説には、金額や科目の誤りが混ざることがあります。テキストや過去問の公式解説を正として、AIの出力は突き合わせて使ってください。試験会場にAIは持ち込めないため、最後は自分で解ける状態にしておく必要があります。
AIがあれば、簿記の資格は不要になりますか?
仕訳を入力する作業の一部はAIに移りますが、出てきた仕訳が正しいかを確かめる人には簿記の知識が要ります。借方と貸方の向きや科目の選び方が分からないと、AIの誤りに気づけないためです。資格の有無そのものは、会社の経理の求める水準によって異なります。
経理の仕訳をAIに任せるとき、最初に何を確認すればよいですか?
AIの賢さより先に、請求書や領収書がAIの読める形になっているかを確認します。PDFの文字がつぶれていたり、手書きの書式がばらばらだったりすると、判断の前の読み取りの段階でズレます。直近1か月分で試し、ズレた件数と原因を「読み取り」「科目のルール」「例外」に分けて記録してください。
税務の処理もAIに任せてよいですか?
この記事は税務上の処理や法令の解釈を扱っていません。消費税の区分や証憑の保存要件などは、会社の条件で結論が変わります。AIの出力は下書きとして扱い、判断が必要なものは顧問税理士に確認してください。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。
CASE
実際の支援では、こう変わりました
人材紹介3ヶ月の伴走支援
サイトの文言変更を、担当者が一人で本番公開まで完了。
防災メーカー3ヶ月の伴走支援
見積書づくりで人が行うのは、粗利をどうするかの判断だけに。
外国人材の就職支援試作からの伴走支援
書類の回収・仕分けと履歴書づくりを、どこまで自動にし、どこを人が確認するかを決めて試作まで完了。