公認会計士はAIで不要になる?|AIに移る作業と、人に残る判断の分け目
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
公認会計士の仕事が丸ごとAIに置き換わる、とは言えません。減るのは作業の時間で、判断と責任は人に残ります。
- 理化学研究所AIPセンターが日本公認会計士協会の協力で行った調査報告(協会サイトで公開)は、すべての業務がAIに代替される可能性は低いが、代替可能な業務も存在するとしています。
- 移りやすいのは証憑突合のような定型作業。人に残るのは依頼者との調整と、AIの結果に信頼性を付与する役割です。
- 中小企業の経理では、AIの判断より先に、請求書PDFが読み取れる形かどうかでズレが決まります。
「公認会計士 AI」で調べる人の多くは、これから目指すべきか、いまの仕事は残るのか、あるいは自社の経理や監査対応にAIをどう使えるのかを知りたいはずです。この記事では、業界団体の一次資料で分かる範囲と、中小企業の経理の現場で見えている範囲を分けて書きます。
個別の監査・税務・会計の判断や、資格の取得判断を示す記事ではありません。AIの結果をどう確かめるかという、業務の組み立ての話です。
調査報告が言っていること
理化学研究所の革新知能統合研究センター(AIPセンター)が日本公認会計士協会の協力で行った調査報告「AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」(協会サイトで公開、2022年)は、公認会計士業務の代替可能性を調べた研究の成果です。監査業務をタスクに分け、それぞれの代替可能性をAIPセンターの研究者が評価しています。
- 代替の度合いはタスクごとに違う。監査業務のすべてを機械的に置き換えることは困難、という結果でした。
- 代替可能性が最も高いと評価されたのは、補助者の業務の「証憑突合、帳簿突合、分析的手続」です。最も低かったのは「クライアントとの調整」です。
- 時間の短縮が見込まれるのは補助者の業務です。主査の業務はAIで代替されても短縮される時間が大きくない、とされています。
- AIは監査の信頼性を付与できない。判断の根拠を人である公認会計士が理解し、信頼性を付与しなければならない、という立場です。
この報告書は2021年6月時点の状況をまとめたもので、その後に広がった生成AIを前提にした評価ではありません。日本公認会計士協会の機関誌「会計・監査ジャーナル」2026年4月号(No.849)では、監査での生成AI利用が論じられています。最新の動向は協会の公表資料で確認してください。
下積みの作業にも意味があった
同じ報告書は、証憑突合のような作業は代替可能性が高く、監査時間も多く使う一方で、人事評価では一定程度重要とされている点にも触れています。単に金額が合うかを見るだけでなく、証憑を誰が作ったかで証明力が変わるなど、証拠としての適合性と信頼性を考える場でもあるためです。
作業だけをAIに任せると、経験を積む機会が減るおそれがあります。任せる作業と、人が経験として残す作業を分けて決めることが、士業の事務所にも企業の経理部門にも共通の課題になります。
中小企業の経理で起きていること
ここからは、SalesDockの支援・相談の現場で聞いた話です。社名や詳細は伏せ、内容は一般化しています。
- 複数の事業所を持つ法人では、請求書の仕分けに毎回数時間かけていました。項目を勘定科目ごとに分けて本部へ送る作業です。一般的なチャットAIも試しましたが、結果がずれて断念した例があります。請求書のPDFの文字がつぶれていたことも一因とされていました。
- 経理歴の長い担当者が一般的なチャットAIで請求書の仕訳を試して、結果がズレてやめた例もありました。ズレの原因はAIの賢さではなく、請求書のPDF側にありました。入力が読み取れる形でなければ、判断以前の段階で崩れます。
- 請求書の仕分けをAIに任せる相談では、手書きの紙が必ず出てきて「全部データでないから無理」という前提で始まります。実際には、手書きの書き手が1人なら回ることがあります。書式が揃っているかどうかが分かれ目です。
この調査報告が示す「証憑突合は移りやすい」という見立ては、中小企業でも当てはまります。ただし移せるのは、証憑が読み取れる形で、決まった場所に残っている会社です。AIの前に、入力を整える作業が要ります。
立場別:AIとの付き合い方
次の表のうち、公認会計士・事務所の行は調査報告の内容にもとづきます。「受験生・若手」の行は出典に根拠がなく、当社の整理です。中小企業の経理の行も、現場で見える範囲での当社の整理です。
| 立場 | AIに任せやすい | 人が持つ |
|---|---|---|
| 公認会計士・事務所 | 証憑突合の下準備、データの突き合わせ、下書き | 依頼者との調整、結果の根拠の理解、保証の判断 |
| 受験生・若手(当社の整理) | 学習の整理、用語の確認 | 判断を自分で説明する練習、突合で得る経験 |
| 中小企業の経理 | 請求書の仕訳候補、分類の下書き | 候補の確認と確定、例外、税理士への相談 |
来週やること:1か月分で試す
- 直近1か月分の請求書を1か所に集め、PDFの文字が読めるかを先に見る。
- AIに勘定科目の候補だけを出させ、確定は担当者が行う。
- ズレた件数と原因を「読み取り」「分類ルール」「例外」に分けて記録する。
- 仕分けにかかった時間を、いまの手作業と並べて測る。
複数法人で扱う場合は仕訳AI導入前のルール設計、ひとり社長の運用は経理仕訳のAI先処理、士業事務所の側は士業のAI顧問活用を参照してください。
まとめ
公認会計士の仕事は、AIで作業が減り、判断と調整の比重が増える方向に動きます。SalesDockは、成長に管理が追いつかない中小企業の経営管理・業務・データの整備を、接続コンサルとして月額で支援しています。経理でいえば、AIを使う前に、証憑と確認の流れを整える領域です。
よくある質問
公認会計士はAIに仕事を奪われますか?
理化学研究所AIPセンターが日本公認会計士協会の協力で行った調査報告(協会サイトで公開、2022年)は、すべての業務がAIに代替される可能性は低いが、代替可能な業務も存在するとしています。証憑突合のような作業は移りやすく、依頼者との調整や、AIの判断根拠を理解して信頼性を付与する役割は人に残る、という整理です。
生成AIに仕訳や監査を任せてよいですか?
候補づくりや下書きには使えますが、確定や保証は人が行います。AIが出した結果の根拠を人が説明できない状態では、信頼性を付与できません。特に請求書のPDFや手書き書類は、読み取りの段階でズレることがあります。
公認会計士を目指す人はAIをどう捉えればよいですか?
この調査報告では、AIに移りやすい作業が下積みとして経験を積む場にもなっている点が指摘されています。作業をAIに任せる分、判断や依頼者との調整を学ぶ機会をどう確保するかが論点になります。
中小企業の経理担当は何から整えればよいですか?
証憑の置き場所と名前の付け方、読み取れる形式での保存、AIの候補を誰が確認するかの3点です。まず1か月分の請求書で試し、ズレた原因が入力側か判断側かを分けて記録します。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
代表者情報を読む →この記事の数値について
本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。
CASE
実際の支援では、こう変わりました
人材紹介3ヶ月の伴走支援
サイトの文言変更を、担当者が一人で本番公開まで完了。
防災メーカー3ヶ月の伴走支援
見積書づくりで人が行うのは、粗利をどうするかの判断だけに。
外国人材の就職支援試作からの伴走支援
書類の回収・仕分けと履歴書づくりを、どこまで自動にし、どこを人が確認するかを決めて試作まで完了。