看護師の業務改善例7選|病棟で始めやすい改善と進め方
看護師の業務改善の結論:患者安全を守りながら1業務ずつ試します
看護師の業務改善では、必要な観察や判断を減らすのではなく、重複入力、探し物、転記、確認待ちを減らします。最初から病院全体を変えず、1病棟の1業務で試すと、安全と効果を確かめながら進められます。
- 記録、申し送り、入退院、物品、勤務表などを1週間測り、負担が集中する1業務を選びます。
- 改善前後で、時間だけでなく記録漏れ、待ち時間、インシデントも同じ条件で比べます。
- 4週間の試行で安全面に問題があれば戻し、効果が確認できた方法だけを他病棟へ広げます。
「勤務時間内に記録が終わらない」「申し送りが長く、始業後も情報収集が続く」「物品を探すたびに病棟を往復する」。一つひとつは数分でも、勤務ごとに繰り返されると患者さんに向き合う時間を圧迫します。
厚生労働省は、看護記録や情報共有などの間接業務に多くの時間が使われているとして、医療機関による看護DX計画と効果検証の事例を公開しています。日本看護協会は、厚生労働省補助金事業として2019〜2023年度に看護業務効率化の先進事例を収集・表彰し、現在も受賞施設の取り組みを看護業務効率化の推進ページから案内しています。本記事では、これらの公開事例を基に、病棟で検討しやすい改善例と進め方を整理します。
看護師の業務改善例7選
看護師の業務改善例には、①看護記録の様式の標準化、②ベッドサイド入力・音声入力、③申し送りの見直し、④入退院帳票の一元化、⑤物品配置の統一、⑥事務・周辺業務のタスクシフト、⑦勤務表作成のルール化があります。最初に選びやすいのは、回数と時間を数えられ、1病棟などに試行範囲を区切れる業務です。導入する製品を先に決める必要はありません。
| 改善例 | 先に見る現状 | 効果を確かめる指標 |
|---|---|---|
| 記録様式の標準化 | 同じ内容の重複入力、自由記載のばらつき | 1勤務の記録時間、記録漏れ、差し戻し |
| 音声入力・端末での即時入力 | 紙へ書いてから電子カルテへ転記する回数 | 記録時間、時間外勤務、誤変換 |
| 申し送りの見直し | 口頭で読み上げる情報と記録の重複 | 申し送り時間、確認のやり直し |
| 入退院帳票の一元化 | 職種ごとに重複する質問と転記 | 重複項目数、入院対応時間 |
| 物品配置の統一 | 探す回数、補充切れ、病棟ごとの置き場所 | 探索時間、欠品、廃棄 |
| タスクシフト | 看護師でなくても担える事務・周辺業務 | 委譲時間、時間外勤務、差し戻し |
| 勤務表作成のルール化 | 希望の転記、配置条件の確認、修正往復 | 作成時間、修正回数、欠員 |
1. 看護記録の様式を揃え、重複入力を減らす
自由記載が長くなる、同じ情報を看護記録と別紙へ入力する、書く人によって観察項目が変わる場合は、まず記録の目的と必須項目を揃えます。急変時、カンファレンス、転出・転入時など、場面別のテンプレートを用意し、個別性が必要な欄は残します。
佐渡総合病院の公開事例では、記録定型文や各種テンプレートを整え、申し送りと看護記録の削減に取り組んでいます。テンプレートは時間短縮だけでなく、経験の浅い看護師が観察やケアの視点を確認する役割も持ちます。項目を減らすときは、必要な観察情報まで削っていないかを看護管理者と確認します。
2. ベッドサイド入力や音声入力で、紙からの転記を減らす
観察内容を紙へ書き、スタッフステーションへ戻ってから電子カルテへ入力している場合、転記の手間と記憶違いが生じます。院内で認められた端末を使い、観察後にその場で入力できれば、二度書きを減らせます。音声入力を使う場合は、患者名や薬剤名などの誤変換を確認する手順と、周囲に聞かれない場所を決めます。
厚生労働省の「いきいき働く医療機関サポートWeb」に掲載された柏葉脳神経外科病院の事例では、音声入力システムを本格導入し、スマートフォンで看護記録を行いました。院内テンプレートも音声入力しやすい形へ改修した結果、看護職の時間外労働時間は6.6時間から2.2時間に減りました。この数値は同院の条件での結果で、他の病院で同じ効果が出るとは限りません。自院では1勤務当たりの記録時間と、修正・追記の件数を試行前後で比べます。
3. 申し送りは、口頭で伝える例外を決める
電子カルテにある情報を順番に読み上げる申し送りは、記録との重複になりやすい業務です。勤務前に各自が確認する情報と、口頭で必ず伝える急変、転倒リスク、当日の処置変更などを分けます。申し送りをなくすことから始めず、「この条件なら口頭で伝える」という例外を先に合意します。
試行中は申し送りの所要時間だけでなく、後から確認し直した回数や伝達漏れも記録します。時間が短くなっても確認のやり直しが増えた場合は、口頭で伝える条件か、記録の見つけやすさを直します。
4. 入退院の帳票と聞き取りを一元化する
入院時に外来、入退院支援センター、病棟、薬剤部が似た内容を聞き、それぞれの帳票へ転記しているなら、項目と責任部署を並べます。最初に取得する部署、後工程が参照する場所、更新する人を決めると、同じ質問を繰り返す回数を減らせます。
日本看護協会の令和2年度報告書21〜25頁に掲載された公立羽咋病院の事例では、9枚の帳票を入退院支援シート1枚に集約しました。外来看護師、入退院支援看護師、薬剤師、医療サービス推進室、病棟看護師が入力した情報とアセスメントを1枚にまとめ、入院1件につき1枚を電子カルテにひも付けています。病棟だけで帳票を変えると他職種の業務が増えるため、関係部署を含めて項目ごとの取得・確認責任を決めます。
5. 医療材料を処置単位でまとめ、置き場所を揃える
処置のたびに複数の棚を回る、病棟ごとに置き場所が違う、補充切れに気づくのが遅い場合は、よく使う処置ごとに必要物品をまとめます。採血セットや末梢ライン確保セットのように、使用場面と必要数を決めて配置し、補充する担当と時刻も揃えます。
配置を変えた後は、物品を探した回数、欠品、使用期限切れによる廃棄、補充時間を改善前と比べます。取りやすさだけでなく、感染管理と保管条件も確認します。
6. 事務・周辺業務を洗い出し、職種間で分担する
看護師が担っている電話連絡、書類準備、物品補充、データ入力を並べ、看護判断が必要な業務と分けます。看護補助者やクラークへ移す場合は、依頼方法、完了条件、判断に迷ったときの戻し先をマニュアルにします。単に仕事を渡すだけでは、受け手の負担が増えて続きません。
タスクシフトでは、業務名だけでなく、依頼に必要な情報、完了の判断基準、看護師へ戻す条件まで書面にします。試行後は、看護師から移した時間だけでなく、差し戻しの件数と受け手の残業も確認します。
7. 勤務表は、配置条件と希望の受け付け方を先に揃える
勤務表作成では、夜勤回数、必要人数、経験者の配置、休暇希望など複数の条件を同時に扱います。先に希望の締切と書式を統一し、絶対に守る条件と、調整できる希望を分けます。作成ツールを使う場合も、配置条件が曖昧なままでは修正が減りません。
最初の指標は、勤務表の初稿作成時間、公開後の修正回数、条件違反、希望確認の往復回数です。小規模な外来やクリニックの勤務表については、クリニックのシフト作成を効率化する方法でも扱っています。
最初の改善対象は、頻度・負担・安全・試しやすさで選びます
時間が長い業務だけを選ぶと、件数は少なくても安全への影響が大きい確認作業を見落とします。候補ごとに、繰り返す頻度、看護師の負担、患者安全への影響、1病棟で試せるかを並べます。安全への影響が大きいものは、改善しないのではなく、委員会承認や多職種の参加を含む進め方に変えます。
候補を絞る質問
- 勤務ごとに繰り返し、合計時間が大きくなっている業務ですか。
- 転記、探し物、確認待ちなど、看護判断以外の負担を含みますか。
- 変更してはいけない安全確認と、変えられる手順を分けられますか。
- 1病棟や一部の勤務帯に区切り、元へ戻せる形で試せますか。
看護業務改善を4週間で試す進め方
改善案を思いついたら、変更前の記録を取ってから試します。次の4週間は目安です。勤務回数が少ない業務や、委員会承認が必要な変更は期間を延ばします。
- 1週目:対象業務の開始・終了時刻、件数、待ち、やり直し、時間外勤務を記録します。
- 2週目:変える手順、変えない安全確認、担当者、対象勤務、問題が出たときの戻し方を決めます。
- 3週目:1病棟や一部の勤務帯で試し、終業前に負担と問題を短く記録します。
- 4週目:改善前と同じ定義で比較し、続ける、条件を直す、元へ戻すのいずれかを決めます。
業務全体の整理方法は業務改善で最初に変える仕事の選び方、小規模院の受付・電話・予約を含む改善はクリニックの業務効率化ガイドで詳しく解説しています。
効果測定は、時間・安全・患者・働き方を一緒に見ます
「10分短くなった」だけでは、看護の質を保てたか判断できません。改善目的に合わせて、時間と安全の指標を最低一つずつ選びます。患者数や重症度、勤務者数が大きく違う日をそのまま比較しないことも大切です。
| 見る面 | 指標の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 時間 | 記録、申し送り、探索、勤務表作成の所要時間 | 対象件数も記録し、1件当たりでも比べます。 |
| 安全 | 記録漏れ、誤入力、インシデント、差し戻し | 少ない件数だけで安全になったと言い切りません。 |
| 患者 | 待ち時間、説明開始までの時間、ベッドサイド時間 | 短縮が患者の利益につながったか確認します。 |
| 働き方 | 時間外勤務、休憩取得、負担感、欠勤 | 別職種へ負担を移していないかも見ます。 |
看護業務改善で避けたい進め方
- ツール導入を目的にする:重複や確認待ちの原因が残ると、入力先が一つ増えるだけになります。
- 時間だけを削る:必要な観察、患者説明、ダブルチェックを削らない境界を先に決めます。
- 看護部だけで変える:入退院、薬剤、物品、検査にまたがる業務は、関係職種の負担も確認します。
- 全病棟へ一度に広げる:1病棟で安全と効果を確かめ、条件が違う病棟では改めて試します。
- 改善前を測らない:基準がなければ、効果が出たのか忙しさが変わっただけなのか判断できません。
看護師の業務改善でよくある質問
看護師の業務改善は何から始めればよいですか?
まず1週間、業務ごとの開始・終了時刻、待ち時間、やり直し、時間外勤務を記録します。その中から、繰り返しが多く、患者安全への影響を管理しながら小さく試せる1業務を選びます。記録や申し送りを対象にする場合も、必要な観察・判断まで削らないことが前提です。
看護業務を効率化すると、看護の質が下がりませんか?
時間短縮だけを目標にすると、必要な確認まで省くおそれがあります。記録漏れ、インシデント、患者の待ち時間、ベッドサイドで過ごせた時間も一緒に測り、安全と看護の質が保たれているか確認します。
看護記録の業務改善にはどのような例がありますか?
記録様式の標準化、重複入力の削減、ベッドサイドでのリアルタイム入力、音声入力などがあります。先に記録の目的と必須項目を揃え、個人情報の扱いと誤変換の確認方法を決めてから試します。
看護師の業務改善で使える指標は何ですか?
記録に要した時間、時間外勤務、申し送り時間、物品を探した回数、入院時の重複入力数、勤務表の修正回数などが候補です。安全面では記録漏れ、インシデント、患者の待ち時間も確認します。
参考にした一次情報
- 厚生労働省「看護業務効率化先進事例収集・周知事業」
- 厚生労働省「看護現場におけるデジタルトランスフォーメーションの促進」
- 日本看護協会「看護業務効率化の推進」
- 厚生労働省 働き方・休み方改善ポータル「佐渡総合病院」
- いきいき働く医療機関サポートWeb「看護記録を手書きから音声入力へ変更した取組」
- 日本看護協会「令和2年度厚生労働省補助事業『看護業務効率化先進事例収集・周知事業』報告書」(2021年3月)
公開事例の成果は各施設の条件下で得られたものです。本記事の4週間の進め方と評価表は、事例を自院で検討するためにSalesDockが整理したもので、同じ成果を保証するものではありません。出典確認日:2026年10月3日。
CASE
実際の支援では、こう変わりました
人材紹介3ヶ月の伴走支援
サイトの文言変更を、担当者が一人で本番公開まで完了。
広告・マーケティング3ヶ月の伴走支援
見積書づくりで人が行うのは、粗利をどうするかの判断だけに。
外国人材の就職支援試作からの伴走支援
書類の回収・仕分けと履歴書づくりを、どこまで自動にし、どこを人が確認するかを決めて試作まで完了。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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