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製造業

見積 受注率が分からない会社へ|見積台帳に残す項目と見る数字

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この記事は製造業のAI活用・業務効率化 完全ガイドの一部です。全体像を知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。

この記事のポイント

受注率が出せない原因は、見積書がないことではなく、出した見積の結果が紐づいていないことにあります。台帳に必要なのは結果と、失注理由の区分です。理由を区分で持つと集計でき、「未回答のまま止まっている」案件を負けと分けて数えられるようになります。

「うちの見積、どれくらい通っているんでしょうね」

製造業の経営者と話していて、この質問が出ることがあります。答えられない会社が多いのですが、見積を出していないわけではありません。むしろ毎週のように出しています。出した見積書のファイルも、フォルダの中に整然と並んでいます。

足りないのは書類ではなく、その後です。出した見積が通ったのか、断られたのか、まだ返事が来ていないのかが、どこにも残っていない。だから何件出して何件受注したのかを数えられず、負けた案件がなぜ負けたのかも、担当者に聞いてみるまで分かりません。

この記事では、出した見積の結果を追える台帳をどう作り、何を見るのかを整理します。特別な道具の話ではありません。列の設計と、誰がいつ埋めるかを決める話です。

見積書は残っているのに、結果が残っていない

見積の状況が見えない会社を見ていくと、だいたい同じ構造をしています。見積書という「成果物」は保存されているのに、その案件が最終的にどうなったかという「状態」がどこにも記録されていません。

  • 見積書のファイルは残っているが、通ったものと断られたものが同じフォルダに混ざっている
  • 受注したものは受注伝票や製造指示に進むので追えるが、受注しなかったものはそこで途切れる
  • 断られた理由は担当者が電話で聞いているが、その場で終わっていて社内に残らない
  • 返事が来ていない案件があること自体、本人以外は把握していない

つまり、記録が残っているのは「勝った側」だけです。負けた案件と止まっている案件は消えていきます。この状態で受注率を出そうとすると、分母が作れません。分母がないので比率も出ません。

経営側から見ると、これは判断材料が一つ欠けているという話ではなく、営業活動の結果がほぼ見えていない状態です。見えているのは受注した金額の合計だけで、その裏で何回勝負して、どんな負け方をしたのかが分かりません。

受注率が見えないと、値上げも選別も決められない

受注率を見る目的は、成績表をつけることではありません。値付けと取引先の判断に使うためです。

たとえば、出した見積がほとんど通っているなら、それは営業が強いのかもしれませんが、値付けが低すぎる可能性もあります。逆に、ある品種だけ通らないなら、その品種は自社の得意ではないか、相場から外れた値段を出しているかのどちらかです。

材料費や外注費が上がって値上げを検討するときも、判断材料はここにあります。今の値段でどれくらい通っているのかが分からないまま値上げに踏み込むと、上げすぎて仕事が止まるか、遠慮して上げ足りないかのどちらかになります。どちらも、あとから振り返っても原因が分かりません。

取引先の選別も同じです。手間がかかるのに通らない相手と、素直に通る相手を分けられないと、限られた見積作成の時間をどこへ配るかを決められません。「なんとなく忙しい」から抜けるには、勝ち方と負け方を数えられる状態が先に必要です。

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見積台帳に残す項目

台帳と呼ぶと大掛かりに聞こえますが、必要なのは1案件1行の一覧です。列は少なくてかまいません。むしろ多すぎると埋まらなくなります。

入れるものなぜ必要か
案件番号見積・受注・製造指示で共通の番号受注後の実績と突き合わせる唯一の手がかりになる
取引先/品名・品種相手先と、扱いを揃えられる品種の区分あとで勝ち負けを切る軸になる。ここが自由記述だと集計できない
提出日見積を出した日返事が来ていない案件を日数で拾えるようになる
提出金額/想定粗利出した値段と、そのときの見込み件数だけでなく規模でも勝ち負けを見られる
結果受注/失注/進行中の三択これがないと分母が作れない。台帳の中心はこの列
結果が出た日受注または失注が確定した日提出から決着までの期間が読める。長引く相手が分かる
失注理由の区分あらかじめ決めた選択肢から一つ負け方の構成が見える。自由記述だけにすると数えられない
担当見積を出した人結果欄を埋める責任者がはっきりする

過去にさかのぼって全部そろえようとすると、まず始まりません。今月以降に出す見積から1行ずつ足していけば十分です。数か月ぶん積み上がった時点で、傾向として読めるようになります。

失注理由は自由記述ではなく「区分」で持つ

台帳を作るときに一番差が出るのが、この列の設計です。失注理由を備考欄の自由記述にしてしまうと、読み物としては残りますが集計はできません。「価格が高いと言われた」「今回は他社さんで」「立ち消えになった」が同じ列に並んでいると、負け方の構成が出せません。

そこで、先に区分を決めます。細かくしすぎると選ぶ人が迷うので、迷わない粒度に留めるのが要点です。

区分意味溜まったときに考えること
価格値段が理由で他社に決まったその品種の値付けか、そもそも取りに行く相手かを見直す
納期希望納期に応えられなかった生産計画や着手の順番の問題。値段の話ではない
仕様が合わない設備・材質・公差などが自社で対応しきれない見積を出す前に断る判断ができないか、を考える
案件消滅相手側の都合で計画そのものが止まった自社の負けではない。混ぜると受注率が実態より低く見える
未回答のまま放置提出したが返事がなく、こちらも追っていない負けたのではなく、追う工程が抜けている

最後の「未回答のまま放置」は、多くの会社で存在しない扱いになっている区分です。しかし実際に台帳を埋めていくと、ここに案件が溜まります。これは負けた案件ではなく、勝負をしていない案件です。価格で負けているなら値付けの話になりますが、追っていないだけなら、電話一本で状況が変わることもあります。

区分を五つに分けておくと、自由記述は補足として書けば済みます。集計に使うのは区分、事情を思い出すために読むのが自由記述。役割を分けておくと、どちらも軽く運用できます。

見る数字は、受注率1本では足りない

台帳が埋まると受注率が出せますが、全体の受注率を一つ眺めても打ち手には結びつきません。同じ台帳から、少なくとも次の四つの角度で見ます。

  1. 件数ベースの受注率:出した本数のうち何本通ったか。営業活動の当たり方が見える
  2. 金額ベースの受注率:提出金額の合計のうち、受注した分がどれだけか。件数と向きが違うときは、大口で負けているサインになる
  3. 失注理由の構成:どの区分が多いか。価格が多い会社と、納期が多い会社では次の一手がまったく違う
  4. 取引先別・品種別の偏り:どこで勝ち、どこで負けているか。全体平均では必ず打ち消し合う

件数と金額を分けて見る理由は単純です。小さな案件をたくさん取っていれば件数の受注率は上がりますが、金額で見ると負けているという状態が起こります。逆もあります。二つを並べたときのズレのほうが、比率そのものより多くを教えてくれます。

また、進行中のまま日数が経っている案件の件数も、毎回見る対象に入れておきます。ここが膨らんでいるときは、受注率の分母が確定していないので、比率そのものが甘く出ています。

数字が読めるようになってから打てる手

数字が読めるようになると、これまで感覚で話していた論点が具体的になります。よく出てくるのは次のような場面です。

  • 通りすぎている品種がある:ほぼ全部通っているなら、値付けが低い可能性を疑う対象になります。次の数件で少し上げて出し、通り方の変化を台帳で確かめる、という試し方ができます
  • 価格で負け続ける品種がある:値段を下げて取り続けるのか、その品種の見積依頼は優先度を下げるのかを決める話になります。判断そのものは経営の話ですが、材料がなければ議論になりません
  • 追っていない案件が溜まっている:一番早く動くのはここです。新しい引き合いを増やす前に、提出済みで止まっているものを一巡見直すほうが手数が少なく済みます
  • 特定の相手で決着が長い:提出から結果までの期間が長い相手が分かると、追いかけるタイミングを決められます

受注したあとの話、つまり通った見積が実際にどれだけ利益を残したかは別の論点になります。そちらは見積と実績の差異を突き合わせる手順で整理しています。引き合いから受注までの流れ全体をどう組むかは製造業の営業プロセスの作り方が近いテーマです。

誰が・いつ入れるかと、道具を選ぶ前に決めること

台帳が止まる理由は、ほとんどの場合「入力が面倒だから」ではありません。結果が出た瞬間に触る人が決まっていないからです。受注は伝票が動くので誰かが気づきますが、失注と未回答は誰も動かさなくても業務が回ってしまいます。だから残らない。

  • 提出したとき:見積を出した本人が、その日のうちに1行足す。ここを他人に任せると抜けます
  • 結果が出たとき:受注・失注を聞いた本人が結果欄と理由の区分を埋める。聞いた日に埋めるのが原則です
  • 月に一度:営業責任者と経営者が、受注率・失注理由の構成・進行中で止まっている案件を見る。日を固定します
  • その場で決めること:値付けを見直す/追いかける/この相手は優先度を下げる/今回限りとする、のどれかに落とす

見る場を月に一度置いておくと、埋まっていない行が人目に触れます。これが入力を続ける一番の力になります。逆に、誰も見ない台帳は必ず空欄が増えていきます。

道具については、最初からシステムを検討する必要はありません。この台帳はスプレッドシートでも成立します。列と区分が決まっていて、入力のタイミングが決まっていれば、集計は関数でもピボットでも足ります。逆に、区分と入力タイミングが決まっていない状態で仕組みを入れると、立派な画面に空欄が並ぶだけになります。実際、そうなった現場を何度も見ています。

私たちが道具の導入を推し進めるより先に業務プロセスの構造化に時間をかけるのは、この順番を逆にしたあとの立て直しが一番重いからです。何を残すか、誰がいつ埋めるか、月に一度何を決めるか。この三つが決まってから道具を選ぶと、選択肢もはっきりします。

まとめ

受注率が分からない会社に足りていないのは、見積書ではなく結果の記録です。出した見積を1行ずつ並べ、結果と失注理由の区分を残す。それだけで、値付けの高低や取引先の偏りが議論できる材料になります。

区分に「未回答のまま放置」を入れておくこと、受注率を件数と金額の両方で見ること、結果を誰がいつ埋めるかを決めること。この三つが、台帳が数字として使えるかどうかの分かれ目になります。

効果を確かめるときは、他社の水準ではなく自社の値で見てください。今の受注率、失注理由の構成、進行中のまま止まっている案件の数。始める前の値を控えておくことが、あとで変化を語れるかどうかを決めます。全体像から確認したい方は製造業のAI活用・業務効率化 完全ガイドもあわせてご覧ください。

よくある質問

見積の受注率は、何から数え始めればいいですか?

過去にさかのぼって全件をそろえる必要はありません。今月以降に提出する見積を1行ずつ記録し、結果が出たものから結果欄を埋めていくところから始まります。数か月ぶん積み上がった時点で、はじめて傾向として読めるようになります。

見積台帳には何を残せばいいですか?

案件番号、取引先、品名、提出日、提出金額、想定粗利、結果、結果が出た日、失注理由の区分、担当が最小構成です。ここから増やすより、この列が空欄なく埋まる状態を先に作るほうが効果があります。

失注理由は自由記述で書いてもらってはいけませんか?

自由記述だけにすると集計できません。価格、納期、仕様が合わない、相手の都合で案件が消えた、未回答のまま止まっている、といった区分を先に用意し、自由記述は補足として併記する形が現実的です。

件数の受注率と金額の受注率は、どちらを見ればいいですか?

両方見ます。件数だけだと大口案件の取りこぼしが薄まり、金額だけだと少数の大型案件に引っぱられます。二つを並べたときの向きの違いが、値付けや取引先の偏りを教えてくれます。

台帳の入力が続かない場合、何を直せばいいですか?

多くの場合、原因は入力の手間ではなく「結果が出た瞬間に触る人が決まっていないこと」です。誰が、どのタイミングで結果欄を埋めるのかを先に決め、その人が見る場を月に一度作ると止まりにくくなります。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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