SalesDock ロゴSalesDock
業務改善

業務改善報告書の書き方|書けるかどうかは、着手する前にほぼ決まっている

様式より先に、前の状態をどう残すか

11分で読める

業務改善報告書の結論|手が止まるのは、前の状態が残っていないから

業務改善報告書を前にして手が止まるとき、原因は文章力ではないことがほとんどです。項目としては何を書けばよいか見当がついていて、それでも埋まらない欄があります。だいたい「改善前」の欄です。改善そのものは終わっているのに、始める前がどうだったかを誰も記録していません。報告書が書けるかどうかは、書き始めた時点ではなく、着手した時点でほぼ決まっています。

  • 報告書の型はどこの様式でもほぼ同じ。書けなくなるのは項目が分からないからではなく、着手前の状態を誰も測っていないから
  • 着手前に決めるのは数え方だけでよい。件数・1回あたりの時間・止まっている場所・やり直しの数のうち、測れるものを2つ選んで一度数えておく
  • 数字にならない改善は、状態が変わった事実として書く。時間の削減量へ換算すると、根拠を聞かれたときに答えられなくなる

この記事は、社内向けに業務改善の結果を報告する立場の人を想定しています。決まった様式が社内にある場合はそれを使ってください。ここで扱うのは、様式の欄をどう埋めるかと、埋められる状態をどう作るかです。書式のダウンロードは用意していません。記入例は本文のなかに置いています。

業務改善報告書に書く6項目

社内様式の呼び方は会社ごとに違いますが、聞かれていることは共通しています。次の6つが埋まっていれば、読む側は判断できます。

項目書くこと抜けると起きること
1|対象と期間どの業務を、いつからいつまで扱ったか始点と終点が書いていないと、読む側が範囲を推測することになる
2|前の状態着手前に何がどうなっていたか。数と場面で書くここが空欄だと、後ろの成果がすべて印象になる
3|やったこと手順・担当・道具のどれを、どう変えたか「効率化した」ではなく、変えた対象を名指しする
4|後の状態同じ数え方で測り直した結果前と違う数え方をすると比較にならない
5|残っている課題直らなかったこと、新しく出てきたことここが無い報告書は、読む側に疑われる
6|次にやること誰が、いつまでに、何を報告で終わらせず、次の判断につなげる

多くの様式にはこのほかに、作成日、作成者、対象部署、承認欄が並びます。そこは埋めるだけなので迷いません。手が止まるのは2番目と4番目です。

着手する前に、数え方だけ決めておく

報告書で書きづらいのは、前と後を同じ物差しで並べる部分です。改善が終わってから前の状態を思い出そうとしても、記憶からは数が出てきません。着手する前に、次のうち測れるものを2つ選んで、一度だけ数えておきます。

  • 件数か回数:その業務が1週間または1か月に何回起きているか
  • 1回あたりにかかっている時間:担当者に聞くのではなく、実際に何件か測る
  • 止まっている場所:どの工程で待ちが発生し、誰の手元で滞留しているか
  • やり直しの数:差し戻し、再入力、再送付が何件あったか

全部を測る必要はありません。2つで足ります。大事なのは、どう数えたかをメモに残しておくことです。「1件あたりの時間」と書いても、依頼を受けてから完了までなのか、実際に手を動かしていた時間なのかで数字は変わります。後で同じ数え方に戻れないと、前後の比較が成り立ちません。

改善に着手する前の段階で、どの業務を選ぶか、何を判断基準にするかを決める手順は業務プロセス改善の進め方(ツールを入れる前に決める5フェーズと判断基準の作り方)にまとめてあります。効果の測り方もそこで扱っています。

前と後の書き方(記入例)

欄の埋め方は、抽象的な評価語を使わないだけでかなり変わります。同じ改善を2通りで書いてみます。

読み手が判断できない書き方:「請求業務が非効率だったため、フローを見直して効率化を図った。その結果、業務が大幅に改善された。」

判断できる書き方:「請求書の発行は月末3営業日に集中し、対象は月あたり120件前後。1件ごとに販売管理の画面と受注メールを見比べて金額を確認していた。見比べる作業をやめ、受注時に確定した金額をそのまま請求データへ引き継ぐ形に変えた。着手前に数えた差し戻しは1か月で11件、変更後の1か月は3件。残っている3件はいずれも受注時点の金額が仮のままだったもので、受注側の入力ルールが決まっていない。」

後者は長いですが、読む側は次の判断ができます。前者では、何を変えたのかも、どれくらい変わったのかも分かりません。数字が入っているかどうかより、何をどう数えたかが書いてあるかどうかが効きます。上の例で挙げた件数は書き方の見本で、どこかの会社の実測値ではありません。

効果を盛らないための3つの決めごと

報告書でいちばん信用を落とすのは、あとで根拠を聞かれて答えられない数字です。次の3つを守ると、そうなりません。

1つ目は、前後を同じ長さの期間で比べることです。改善前は忙しい月、改善後は落ち着いた月、という比べ方をすると、改善の効果と季節の差が混ざります。2つ目は、時間の削減を金額に換算しないことです。時給を掛けて年間の削減額を出すと数字は大きくなりますが、その分だけ人件費が減ったわけではないので、聞かれると崩れます。3つ目は、まだ確かめていないことを書かないことです。1か月しか回していないなら1か月ぶんとして書きます。

報告を受ける側の立場でいうと、成果が控えめでも根拠が書いてある報告書のほうが、次の予算をつけやすくなります。数字を大きく見せる必要はありません。

数字にならない改善をどう書くか

属人化の解消や、判断基準を決めた種類の改善は、時間や件数で表しにくいものです。この場合は、状態が変わったことを事実として書きます。

  • 手順が文書になり、担当以外が読める場所に置かれた
  • これまで口頭で確認していた判断が、条件として書き出された
  • 同じ質問が担当者へ来る回数が減った
  • 担当が休んだ日に、その業務が止まらずに回った

どれも数字ではありませんが、前の状態と並べれば変化として読めます。無理に時間の削減量へ換算しないほうが、報告書としては強くなります。手順や判断を揃えていく作業そのものの進め方は業務標準化の進め方(どこまで揃えるかを先に決めてから、手順書を作る)で扱っています。

報告書と提案書は、書く時点が違う

社内では両方を「改善の書類」とまとめて呼ぶことがありますが、読み手が見ている点が違います。提案書は着手前に書き、これから何をどう変えるかの承認をもらいます。読み手が見るのは、実現できそうかどうかです。報告書は実施後に書き、結果を共有します。読み手が見るのは、本当に変わったのかどうかです。

実務としては、提案書を書く段階で前の状態を記録しておくと、報告書の2番目の欄がそのまま埋まります。提案の側の書き方と例文は改善提案の書き方と例文(通る提案に共通する4点セットと、ネタが出ないときの探し方)にまとめてあります。

報告のあとに何も起きない、を避ける

報告書を出したあと、何も起きないまま次の改善が始まらないことがあります。原因はたいてい、6番目の「次にやること」が「引き続き改善を進める」で終わっていることです。ここは、誰が、いつまでに、何をやるかまで書きます。書けないなら、その場で決められる人に決めてもらってから提出します。

もう1つよくあるのが、報告書が個人のパソコンの中だけに残る形です。次に同じ業務を触る人が前回の記録を探せないと、また前の状態から測り直すことになります。置き場所は、その業務の手順書と同じ場所にしておくと見つかります。

そもそもどの業務から手を付けるかで迷っている段階なら、3分の事業基盤診断が使えます。選択式の設問に答えると、先に整える業務と、いまは触らない業務が分かれます。何から始めるかで止まっている場合は「業務改善やらなきゃ」と思い続けて半年、何も変わっていない会社へも合わせて読んでみてください。

来週の一歩:次に触る業務の、数え方だけ決める

いま書いている報告書に前の状態が無い場合、その1枚は場面で書いて出すしかありません。そのうえで、次に触る業務について、着手する前に数え方を決めておきます。決めるのは2つだけです。何を1件と数えるか、いつからいつまでを1回ぶんとするか。

決めたら、その日のうちに一度数えてメモに残します。所要は30分ほどです。この30分があるかないかで、次の報告書を書くときの手間がまったく変わります。改善そのものより先に、この30分を予定に入れてください。

よくある質問

業務改善報告書と業務改善提案書は何が違いますか?

書く時点と目的が違います。提案書は着手する前に書き、これから何をどう変えるかの承認をもらうためのものです。報告書は実施したあとに書き、結果を共有して次の判断につなげるためのものです。同じ業務でも読み手の関心が違い、提案書では実現できるかどうか、報告書では本当に変わったのかどうかが見られます。前の状態の記録は両方で使うので、提案書を書いた段階で残しておくと報告書が楽になります。

効果を数字で出せない改善は、報告書に書けませんか?

書けます。時間や件数で表せない改善はよくあります。その場合は、状態が変わったことを事実として書きます。手順が文書になった、判断が条件として書き出された、担当が休んでも止まらなかった、といった書き方です。無理に時間の削減量に換算すると、根拠を聞かれたときに答えられません。数字が無いことより、根拠のない数字が入っているほうが信用を落とします。

改善前のデータを取っていません。今から書けますか?

推定値を入れて埋めるのは避けてください。代わりに、前の状態を場面で書く方法があります。どの工程で誰が何をしていたか、何が起きて困っていたかを具体的に書けば、読む側は比較できます。そのうえで、今回は着手前の数字を取っていないと報告書に明記します。次の改善では、着手前に数え方を決めてから始めると、同じ苦労をしなくて済みます。

報告書はどれくらいの分量が適切ですか?

A4で1枚から2枚に収まる分量が扱いやすいです。読む側が知りたいのは、何がどう変わったかと、次に何をするかの2点です。経緯を詳しく書くほど、その2点が埋もれます。詳しい記録を残したい場合は、報告書とは別に作業のメモを置き、報告書からはその場所だけを示す形にしてください。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

代表者情報を読む →

この記事の数値について

本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。