自己資本比率の計算方法|決算書のどの数字を使うか、計算例と月次で見る手順
貸借対照表の2つの数字から出し、決算を待たずに月次で追う方法
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
自己資本比率は、会社の資産のうち返済しなくてよいお金がどれだけあるかを示す割合です。割り算1回で出ますが、使う数字の取り方と、その後の見方で判断が変わります。
- 計算式は「自己資本(純資産)÷ 総資産 × 100」です。貸借対照表の純資産の合計と資産の合計を、同じ日付で使います。
- たとえば総資産5,000万円・純資産1,500万円なら、自己資本比率は30.0%です。
- 目安は業種で違います。同じ業種の統計と、自社の過去の推移の両方で見ます。
- 決算を待たず、月次の試算表から概算を出して毎月同じ表に残すと、悪化に早く気づけます。
この記事は自己資本比率の計算と見方を扱います。損益と資金の分け方は中小企業の管理会計、資金の動きを週単位で追う方法は13週資金繰り予測で扱っています。
計算式と、貸借対照表のどこを見るか
自己資本比率は、会社の資金の出どころのうち、借入のように返す必要がない部分が何割あるかを表します。式は「自己資本 ÷ 総資本 × 100」で、中小企業では純資産と資産合計で置き換えて計算します。
決算書の見る場所は次の2つだけです。
- 分子:貸借対照表の「純資産の部」の合計。資本金、利益剰余金などの合計です。
- 分母:貸借対照表の「資産の部」の合計(負債と純資産の合計と同じ額)。
- 日付:両方とも同じ決算日、または同じ月末の数字を使います。
損益計算書の売上や利益は式に入りません。ただし、利益は毎期の純資産を増やすので、結果として自己資本比率を動かします。
自己資本の出し方:純資産から除く項目と、そのまま使える項目
式の分子は、正確には自己資本です。自己資本は、純資産の部の合計から新株予約権と非支配株主持分(連結決算のみ)を除いた額です。総資本は、負債と純資産を合わせた額で、貸借対照表では資産合計と一致するので「総資本=総資産」として計算できます。新株予約権や連結の子会社がない多くの中小企業では、純資産の合計をそのまま分子に使って差し支えありません。
| 純資産の部の項目 | 分子での扱い | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 資本金・資本剰余金・利益剰余金 | 含める | 利益剰余金がマイナス(繰越損失)なら、その分だけ分子が減ります |
| 自己株式 | 差し引く(マイナス表示) | 決算書では純資産の部にマイナスで載っているので、合計をそのまま使えば反映済みです |
| 評価・換算差額等 | 含める | 保有する有価証券の評価損益などで、毎期動くことがあります |
| 新株予約権・非支配株主持分 | 除く | 該当するのは一部の会社です。決算書に項目があるかだけ確認します |
自己資本比率の分子に使う数字は、貸借対照表の「純資産の部」の合計欄です。新株予約権と非支配株主持分の項目が無ければ、その合計をそのまま分子にできます。項目があるときは、合計からその額を引いた金額が分子になります。決算書の様式で項目名が違うときは、純資産の部の小計の名前を税理士に聞くのが早いです。
Excelやスプレッドシートで計算する式
Excelで自己資本比率を計算するには、純資産をB2、資産合計をC2に入れ、「=B2/C2」と入力して、セルの表示形式を「パーセンテージ」(小数点以下1桁)にします。債務超過の目印は「=IF(B2<0,"債務超過","")」で出せます。割り算を1セルにしておくと、毎月の手計算の間違いが減ります。
自己資本比率:=B2/C2(セルの表示形式を「パーセンテージ」、小数点以下1桁にします)
債務超過の目印:=IF(B2<0,"債務超過","")
負債比率:=(C2-B2)/B2(純資産に対して負債が何倍か。純資産が0以下のときは計算できません)
負債比率は、自己資本比率の裏返しとして使われる指標です。計算例の会社(負債3,500万円・純資産1,500万円)なら約233%で、純資産の2.3倍強の負債がある状態を意味します。自己資本比率と同じ貸借対照表から出せるので、同じ表の隣の列に並べておくと、比率が動いた理由を借入側から見直せます。短期の支払余力は、流動資産を流動負債で割る流動比率で別に確認します。
数字を入れた計算例と、改善策の効き方
以下は計算の動きを見るための仮の数字です(実在の会社の数字ではありません)。総資産5,000万円、負債3,500万円、純資産1,500万円の会社を基準にします。
| ケース | 純資産 | 総資産 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|
| 現状 | 1,500万円 | 5,000万円 | 30.0% |
| 税引後利益300万円を内部に残す | 1,800万円 | 5,300万円 | 34.0% |
| 現預金で借入300万円を返済 | 1,500万円 | 4,700万円 | 31.9% |
| 赤字500万円を出す | 1,000万円 | 4,500万円 | 22.2% |
総資産5,000万円・純資産1,500万円(自己資本比率30.0%)の会社が、税引後利益300万円を内部に残すと34.0%に約4ポイント上がります。同じ300万円を現預金で借入返済に回した場合は31.9%で、上がり幅は約2ポイントです。比率を直接動かすのは、返済より利益の積み上げです。赤字は分子を減らすため、1期で8ポイント近く下がります。
返済は比率の改善幅が小さい一方で、現預金が減ります。返済して比率が上がっても、翌月の支払資金が足りなくなる会社もあります。実行の前に、返済後の週ごとの残高を13週資金繰り予測のような表で確かめます。
目安の読み方:数字より、比べる相手を決める
「何%なら安全か」は、よく聞かれますが決まった線はありません。比べる相手は、同じ業種の統計と、自社の過去の推移の2つです。在庫や設備を多く持つ業種と、人の力が中心の業種では、同じ比率でも意味が違います。
- 同業との比較:公的統計(財務省の法人企業統計、中小企業庁の中小企業実態基本調査など)の業種別・規模別の値と並べます。調査年度と対象の規模を確認します。
- 自社の推移:直近3期分を同じ表に並べ、下がっている理由が赤字か、設備投資か、役員報酬や配当かを分けます。
- マイナスの場合:債務超過です。資金調達や取引条件に影響するため、決算を待たず金融機関や顧問税理士に早めに相談します。
比率が低くても、利益が出て現預金が回っていれば直ちに危険とは限りません。反対に、比率が高くても売掛金の回収が遅れて現預金が尽きる会社はあります。自己資本比率は、資金繰りの代わりではなく、資金繰りと一緒に見る数字です。
自己資本比率を上げる3つの選択肢
改善策は、分子を増やすか、分母を減らすかの二つに分かれます。
- 利益を残す:売上総利益の改善、固定費の見直し、役員報酬と配当の水準の見直し。時間はかかりますが、利益が売掛金や在庫に回らず現預金として残れば、現預金も増えます。
- 増資・資本性の資金:分子と分母が同時に増えます。出資者との関係や持分の調整が必要なので、顧問税理士や専門家と進めます。
- 不要な資産を減らし負債を返す:使っていない設備や過剰な在庫を整理し、その現金で借入を返します。現預金が薄くならない範囲に限ります。
決算を待たず、月次で追う手順
自己資本比率は決算書で確定しますが、年1回の確認では下がり始めた時期が分かりません。月次の試算表から概算を出し、毎月同じ表に残すと、悪化の前に手が打てます。決算後に初めて数字を見ると、打てる手が限られることがあります。
表に残す列は次のとおりです。毎月同じ列で更新すると、2年後に比べられます。
| 列 | 入れる内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 対象月・区分 | 月末の日付と、試算か確定か | 2026-09末・試算 |
| 純資産 | 試算表の純資産合計 | 1,500万円 |
| 資産合計 | 試算表の資産合計 | 5,000万円 |
| 自己資本比率 | 純資産 ÷ 資産合計 | 30.0% |
| 前月差・理由 | 増減と、利益・返済・その他の別 | −0.5pt・賞与支給 |
| 対応・担当・期限 | 次に何をするか1行 | 来月の返済額を確認・経理・10/15 |
月次の試算表は、決算で減価償却や引当金が調整される前の数字のことがあります。試算の行と確定の行を分けて残し、決算後に確定値で置き換えます。試算表の作り方が整っていない場合は、管理会計の整え方から始めるほうが早いこともあります。
数字を毎月見る仕組みを、一緒に整える
SalesDockは、経営管理の数字を月次で集めて見られる形に整える支援をしています。いまの帳簿や表の状態から、何を毎月追うかを一緒に決めます。
無料で状況を相談する一次情報・公式情報
業種別の自己資本比率は、各調査の最新版で調査年度と対象規模を確認してください。この記事の計算例は仮の数字です。
自己資本比率の計算でよくある質問
自己資本比率の計算式は何ですか?
自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本(総資産)× 100 です。中小企業では、貸借対照表の「純資産の合計」を「資産の合計」で割る形で計算するのが一般的です。分母と分子は同じ日付の貸借対照表から取ります。
自己資本比率は何%あれば安全ですか?
一律の合格ラインはありません。業種によって資産の持ち方が違うため、同じ業種の公的統計と、自社の過去の推移の両方で見ます。自己資本比率が低くても、利益が出ていて売掛金の回収と支払の見通しが立っていれば、直ちに問題とは言えません。反対に、比率が高くても現預金が先に尽きる会社はあります。
債務超過だと自己資本比率はどうなりますか?
純資産がマイナスになるため、自己資本比率もマイナスになります。債務超過は、資産を全部売っても負債を返しきれない状態です。金融機関との相談や資金計画の見直しを、決算を待たずに始める合図になります。
自己資本と純資産は同じですか?
新株予約権や連結決算の非支配株主持分がない会社では、純資産の合計がそのまま自己資本になります。これらがある場合は、純資産の合計からその分を除いた額が自己資本です。判断に迷うときは、決算書の純資産の部の内訳を顧問税理士に確認します。
自己資本比率は決算書がないと計算できませんか?
確定した数字は決算書で出ますが、月次の試算表(貸借対照表)があれば月ごとに概算できます。ただし減価償却や賞与引当などが決算で調整される会社では、月次の数字は目安として扱い、決算後の確定値と分けて記録します。
自己資本比率を上げる一番確実な方法は何ですか?
利益を出して内部に残すことです。増資は分子と分母が同時に増え、借入の返済は分母が減ります。どれを選ぶかは資金繰りへの影響が違うため、返済で現預金が減る場合は先に資金繰り表で確認します。
同じテーマの記事
全体像は中小企業の管理会計の始め方|部門・商品・顧客の最小管理単位を決めるにまとめています。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
代表者情報を読む →この記事の数値について
本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。