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設備点検業務のシステム化、ROIの計算方法|効果と費用の拾い方と記入表
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
設備点検業務のシステム化のROIは、削減できた作業時間を金額にした年間の効果から、年間の費用を引き、費用で割って出します。式そのものは単純で、つまずくのは効果として何を拾い、何を拾わないか、費用をどう分けるかです。
- ROIは(年間の効果 − 年間の費用)÷ 年間の費用。効果は、変わる作業の時間だけを金額にして足します。
- 費用は、初期費用を何年かで割った額に、毎月の利用料と改修費を足して出します。
- 計算の前に、何と比べるか(比較対象)と、何をもって成功とするか(成功の定義)を決めます。
点検表を紙で回している、結果をExcelに転記している、といった設備点検業務を仕組みに載せるとき、稟議や社内説明で必ず聞かれるのが「いくらで、いつ元が取れるのか」です。この記事は、その数字を現場の実測から組み立てる手順に絞っています。一般的な業務改善の費用対効果は業務改善のROIの測り方、AI導入の場合はAI導入のROIで扱っています。
ROIと回収期間は、2本の式で出します
ROIは、投資に対してどれだけ利益が残ったかを割合で示す指標です。設備点検のシステム化では、利益を「削減できた作業の金額換算」と読み替えます。回収期間は、初期費用を年間の差額で割り、何年で元が取れるかを見ます。
対象は、工場設備の日常・定期点検(点検表の記入、結果の記録、集計、提出)です。設備の修理や更新の計画までは含めません。計算の練習として、仮の数字を置きます。これは実績ではなく、式の動きを確かめるための例です。
| 項目 | 仮の数字 | 結果 |
|---|---|---|
| 年間の効果 | 転記と集計の月40時間が半分になり(月20時間の削減)、時間単価3,000円 | 20時間 × 3,000円 × 12か月 = 72万円 |
| 年間の費用 | 初期費用30万円を5年で償却(年6万円)+ 利用料・改修費で年12万円 | 6万円 + 12万円 = 18万円 |
| ROI | (72 − 18) ÷ 18 | 300%(年間の差額は54万円) |
| 回収期間 | 初期費用30万円 ÷ (年間の効果72万円 − 利用料・改修費12万円) | 30万円 ÷ 60万円 = 0.5年(約6か月) |
初期費用は、償却年数で割って年の費用に入れます。償却年数は、ソフトウェアの法定耐用年数(自社利用のソフトウェアは5年、国税庁)を目安にするか、契約期間に合わせます。回収期間は「初期費用 ÷ (年間の効果 − 利用料・改修費)」で、償却を除いた年間の差額で割ります。効果が小さい業務では、時間の削減だけで元を取るのは難しい場合があります。そのときは、効果を拾う業務を増やすか、費用の小さい方法(フォームと表の組み合わせなど)から始めるかを検討します。
金額を比べる前に、何と比べるかを決めます
金額を出すとき、点検担当者の人件費全体と比べる見方に入ると、数字が噛み合いません。比べるのは担当者の人件費全体ではなく、システム化で変わる作業の時間です。
たとえば点検そのもの(設備を目で見て、触って、確かめる時間)は、システムを入れても減りません。減るのは、記録を書き写す、集計する、提出する、漏れを探して督促するといった周辺の作業です。比較対象を「変わる作業」に絞ると、効果の小さな業務を過大に見積もることも防げます。
効果として拾うものと、拾わないものを分けます
設備点検でシステム化の効果として拾いやすいのは、次の4つです。上3つは時間を金額にでき、4つ目は金額にせず別枠で見ます。
| 項目 | 中身 | 計算 |
|---|---|---|
| 記録・転記の時間 | 点検のあとに紙やExcelへ書き写す時間、報告書をまとめる時間 | 点検1回あたりの分数 × 月の回数 × 時間単価 |
| 集計・提出の時間 | 月次の点検結果の集計、管理者への提出、取引先への報告 | 月の作業時間 × 時間単価 × 12 |
| 点検漏れ・遅れの対応 | 未実施の発見、やり直し、督促のやり取り | 件数 × 1件の対応時間 × 時間単価 |
| 異常の発見から対応までの日数 | 異常の記録が共有されるまでの待ち | 金額にせず、日数の変化を別枠で見る |
設備の故障が減ったことによる損失の回避は、金額が大きく見える反面、システム化だけが原因だと言い切るのが難しい効果です。突発停止の件数が前年より減ったとしても、設備の更新や季節の違いも効いています。ROIに含めるなら、根拠を添えて別の行にし、含めない場合の数字も並べて出します。
時間がかかる作業が、いちばん効果の出る作業とは限りません
業務の詰まりを聞くと、まず出てくるのは契約書の作成や資料づくり、転記のように、一番時間がかかる作業です。実際に時間は食っていますが、それが一番の問題とは限りません。設備点検でも、点検表の転記に月10時間かかっていても、困っているのは異常の記録が管理者に届くのが遅いことかもしれません。
そこで、ROIを出す対象を決める前に、現場で聞く質問を2つに分けます。「いちばん時間がかかるのはどの作業か」と、「遅れたり漏れたりすると困るのはどの作業か」です。同じ作業が両方に挙がるなら効果を出しやすく、別々なら、時間の削減とは別の指標(遅れの日数、漏れの件数)で成功を測る必要があります。
費用は、作る費用と直し続ける費用に分けます
費用側は、初期費用と毎月かかる費用を別の行にします。見積もりを「作る費用」と「直し続ける費用」の2本に分けて確認すると、後から増える費用を見落としにくくなります。
| 項目 | 中身 | 金額の出どころ |
|---|---|---|
| 初期費用(1回) | 要件整理、画面や帳票の設計、開発または設定、現場への導入 | 見積もりの買い切り部分 |
| 利用料(毎月) | クラウドの利用料、ライセンス、通信費 | 契約書の月額 |
| 改修・運用(毎月) | 点検項目の追加、設備の入れ替えへの対応、現場からの要望 | 月額の伴走に含めるか、都度の見積もりか |
| 社内の時間 | 点検項目の洗い出し、入力の教育、移行期間の二重入力 | 担当者の人数 × 時間 × 時間単価 |
設備点検は、設備の入れ替えや点検項目の変更が起きる業務です。作った直後ではなく、1年後に項目が変わったときの改修費が見えていないと、ROIが後から崩れます。初期費用の安さだけで選ばず、改修を誰がいくらで対応するかを、導入前に費用の行へ入れてください。
成功の定義を、導入前に2人で決めます
ROIの数字が計算できても、成功の基準が決まっていなければ、半年後に「うまくいったのか」を誰も言えません。
設備点検なら、「転記と集計の時間が半分以下」「点検漏れが月1件以下」のように、測れる言葉で書きます。発注側と実務を担う側(または支援側)の二者で、導入前に合意しておきます。確認の手順は検収の進め方にある、合意した基準と実測結果を並べる考え方がそのまま使えます。
そのまま使える記入表
次の表をコピーして、対象の点検業務1つ分を埋めます。右の列は、埋めるときの注意です。例の欄は仮の記入例で、実績ではありません。
| 欄 | 記入例(仮) | 埋めるときの注意 |
|---|---|---|
| 対象の業務 | 工場設備の月次点検(30台) | 対象を1つに絞る |
| 今のやり方 | 紙で点検、事務所でExcelへ転記 | 誰が何分かけるかまで書く |
| 比較対象 | 転記と集計にかかる時間 | 人件費全体ではなく、変わる作業だけ |
| 年間の効果(円) | = 削減時間 × 時間単価 × 12 | 拾った項目だけ足す |
| 年間の費用(円) | = 初期費用 ÷ 償却年数 + 年間の利用料 + 年間の改修費 | 初期費用は償却年数で割って年の費用に入れる |
| 償却年数 | 5年 | ソフトウェアの法定耐用年数5年、または契約期間に合わせる |
| ROI | = (効果 − 費用) ÷ 費用 | 償却で年あたりにそろえた1本の式で出す |
| 成功の定義 | 転記時間が半分以下、点検漏れが月1件以下 | 導入前に二者で合意する |
全部の欄が埋まらなくても構いません。埋まらない欄は、現場で測っていない数字がどこかを示しています。専用システムを選ぶ前に、点検の回答をフォームで集めて表にする方法は現場の報告を1枚に集める設計にまとめています。設備投資そのものの判断は設備投資の判断基準が参考になります。
来週は、点検1種類の実時間を2週間測り始めます
まず点検業務を1種類だけ選びます。記録の転記、集計、提出に、誰が何分かけているかを、2週間だけ手書きで残します。それが記入表の「今のやり方」と「年間の効果」の元の数字になります。システムの見積もりを取るのは、その後で十分です。
SalesDockは、経営管理・業務・データ・仕組みが成長に追いつかない中小企業に、業務構造を先に言葉にしてから仕組みを作る形で支援しています。点検業務のシステム化も、比較対象と成功の定義を決めるところから一緒に整理できます。
NEXT STEP
点検業務の効果と費用を、一緒に整理する
対象の点検業務と現在のやり方を見ながら、比較対象、成功の定義、効果と費用の拾い方を60分で整理します。
無料相談を申し込む設備点検のROIでよくある質問
設備点検業務のシステム化で、ROIはどの期間で見ればよいですか?
初期費用を償却年数で割り、年あたりの費用にそろえた1本の式で見ます。初期費用が重いと、1年目はマイナスになりやすい点には注意してください。償却年数は先に決めておきます。ソフトウェアの法定耐用年数5年か、契約期間に合わせるのが目安です。
金額にならない効果は、ROIに入れなくてよいですか?
計算には入れず、別枠で記録します。異常の発見から対応までの日数や、点検漏れの件数は、金額に無理に換算すると根拠の弱い数字になります。ROIは金額で拾えた分だけで出し、残りは件数や日数のまま添えます。
紙の点検をスマホに変えるだけでも、システム化と呼べますか?
呼べます。点検項目を入力フォームにして回答を表に集めるだけでも、転記と集計の時間は変わります。専用の保全システムを入れるかは、その時間がどれだけ減るかを測ってから決めても遅くありません。
ROIの数字は、どこまで信用してよいですか?
この記事の式と記入表は考え方の枠組みで、実際の削減時間は現場で測るまで分かりません。導入前に2週間ほど実時間を記録し、導入後に同じ方法で測り直した差を使ってください。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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