クリニックの口コミを増やすとき、医療広告の規制対象になるのはどこからか|依頼・謝礼・転載の線引き
この記事は規制上どこまでやってよいかだけを扱います。集まった口コミへの返信の仕方や集患への活かし方は「クリニックの口コミを増やす依頼の仕方と返信の型|例文つき」で扱っています。
この記事のポイント
線を引いているのは「誘引性」の一語。患者が自分で書いた口コミは広告に該当せず、医療機関が費用負担・謝礼・掲載依頼といった便宜を図った瞬間に広告の側へ移る。そして広告に移ると、体験談は内容にかかわらず掲載できなくなる。
クリニックで「口コミを増やしたい」という話になると、必ず同じところで止まります。患者さんに声をかけていいのか。書いてくれた人に何か渡していいのか。もらった口コミを自院のサイトに載せていいのか。
この判断は感覚では決まりません。厚生労働省が示している医療広告ガイドライン(現在の正式名称は「医療広告等ガイドライン」)と、実際の指導事例をまとめた事例解説書に、かなり具体的な線が書かれています。この記事では、その2つに明示されている範囲だけを使って、口コミ施策のどこが可で、どこが不可なのかを整理します。
前提1:自院サイトも「広告」として規制される
まず土台の確認です。ガイドラインは、医療広告に該当するかどうかを次の3つの要件で判断するとしています。
① 誘引性:患者の受診等を誘引する意図があること
② 特定性:医業等を提供する者の氏名や名称、病院・診療所等の名称が特定可能であること
③ 内容:医業もしくは歯科医業、または病院もしくは診療所に関する内容であること
口コミの話では、②と③はたいてい自動的に満たされます。院名が出ていて、診療の話をしているからです。つまり可否のほぼすべてが①の誘引性で決まる、という構造になっています。
もうひとつ、規制の対象者にも注意が必要です。ガイドラインは、医師や医療機関だけでなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者や一般人等を含めて「何人も」広告規制の対象になるとしています。「代理店に任せているから」「書いたのは患者さんだから」で外れる話ではありません。
前提2:広告に該当すると、体験談は内容を問わず載せられない
誘引性の有無が決定的なのは、それが「載せられるかどうか」に直結するからです。ガイドラインは、患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告をしてはならない、としています。理由は、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるもので、誤認を与えるおそれがあるからです。
そして重要なのが、この一文です。ガイドラインは、体験談の記述内容が広告可能な範囲であっても、広告は認められないと明記しています。「書き方を工夫すれば載せられる」という余地は、ここには用意されていません。
加えて、医療機関が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容または効果に関する体験談については広告に該当する、とはっきり書かれています。自院サイトは例外になりません。
線はどこか:誘引性が生じる場面と、生じない場面
ガイドラインは、患者等が自ら掲載する体験談・手記等について、個人が病院を推薦したにすぎない場合は誘引性の要件を満たさず広告とは見なさない、としています。そのうえで、誘引性が生じる場合を具体的に挙げています。
| 場面 | ガイドライン上の扱い |
|---|---|
| 患者が自発的に、口コミサイトやSNSの個人ページに投稿した | 医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない |
| 医療機関からの依頼に基づいて書かれた | 誘引性を有するものとして取り扱うことが適当とされる |
| 医療機関から金銭等の謝礼を受けている、またはその約束がある | 同上(誘引性を有するものとして取り扱う) |
| 書き手が医療機関の経営に関与する者の家族等である | 病院の利益のためと認められる場合には、誘引性を有するものとして取り扱う |
| 自院のウェブサイトに体験談として掲載した | 広告に該当し、その上で禁止される |
読み取れる線はシンプルです。医療機関が投稿に関与した形跡があるかどうか。依頼、費用負担、謝礼の約束のいずれかが入った瞬間に、その口コミは「患者の感想」から「医療機関の広告」に移ります。そして移った先では、体験談は載せられない。ここが、口コミを増やす施策を設計するときの最初の分岐点です。
出典・一次情報
- 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(厚生労働省)
- 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)(厚生労働省)
- 医療法における病院等の広告規制について(厚生労働省)
制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。
クリニック・歯科医院のためのAI業務改善ガイド
医療広告の3要件と、体験談・ビフォーアフターの線引きを集患と口コミの章にまとめています。レセプトや人材を含む6領域から自院の詰まりを探せます
資料を無料でダウンロード事例解説書が「不可」として挙げているパターン
厚生労働省は、ネットパトロール事業で蓄積された事例をもとに事例解説書を公開しています。体験談まわりでは、次のような掲載の仕方が「広告が禁止される事例」として挙げられています。想像で外側を広げず、ここに載っているものだけを並べます。
| やり方 | 事例解説書での扱い |
|---|---|
| 口コミサイトの口コミを自院サイトに転載する | 治療内容または効果に関する体験談に相当する口コミの転載として、禁止事例に挙げられている |
| 有利な口コミだけを抜粋して掲載する | 医療機関にとって有利な口コミを抜粋して掲載する場合は誇大広告に該当する |
| 院長やスタッフ自身が体験談を書く | 患者等ではなく医療機関のスタッフ等が記載した体験談であっても規制の対象 |
| スタッフが患者の体験を代わりに書く | 患者等が記載した体験談と同様に認められない |
| 患者の直筆アンケートを写真やPDFで載せる | 直筆アンケートを転載する形で体験談を掲載しているものとして、禁止事例に挙げられている |
| 症例紹介の中に患者の言葉を差し込む | 患者の主訴として記載された体験談であっても規制の対象 |
| SNSで患者の投稿を自院アカウントから引用する | 他者の投稿を引用することで自院のサービス等の体験談を紹介している場合も違反となる |
この7つは、形は違っても中身はひとつです。誰の言葉かではなく、医療機関が「患者の感想」を自分の媒体で見せているかどうかで判断されています。だからスタッフの体験談も、代筆も、アンケートの写真も、SNSの引用も、同じ扱いになります。
口コミサイト側への働きかけも規制の対象になる
掲載だけでなく、外部サイトへの働きかけにも線が引かれています。事例解説書は、医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された体験談について、医療機関からの影響を受けずに患者やその家族が行う推薦に留まる限りは誘引性は生じず医療広告に該当しない、としたうえで、次の場合は医療広告に該当し禁止される広告になるとしています。
医療機関からの依頼によって、運営者が
- 体験談の内容を改編する
- 否定的な体験談を削除する
- 肯定的な体験談を優先的に上部に表示する
など、体験談を医療機関の有利に編集している場合
ただし、ここには例外も明示されています。当該体験談が名誉毀損等の不法行為に当たる場合は、医療機関による削除等の依頼は医療法違反には当たらない、とされています。事実無根の書き込みへの対応と、都合の悪い口コミを消しにいく行為は、扱いが分かれるということです。実際にどちらに当たるかは個別判断になるので、対応の前に専門家に相談してください。
ビフォーアフター写真は「付ける情報」で扱いが変わる
体験談とセットで論点になるのが治療前後の写真です。こちらは体験談と違い、全面的に不可というわけではありません。ガイドラインは、治療等の内容または効果について患者等を誤認させるおそれがある治療前後の写真等は認められないとしたうえで、次のように述べています。
| 扱い | 内容 |
|---|---|
| 虚偽広告として扱われる | あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真等 |
| 誇大広告として扱われる | 撮影条件や被写体の状態を変えるなどして撮影した術前術後の写真等を掲載し、その効果または有効性を強調すること |
| 禁止事例に挙げられている | 術前または術後(手術以外の処置等を含む)の写真やイラストのみを示し、説明が不十分なもの |
| 「誤認させるおそれがある写真等」に当たらないとされる | 術前または術後の写真に、通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合 |
さらに掲載場所についても指定があります。患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、たとえばリンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用してはならない、とされています。説明を「書いてある」だけでは足りず、写真と同じ強さで見えていることまで求められている、という読み方になります。
加えて、治療効果に関する事項はそもそも広告可能事項ではないため、限定解除の対象でない場合は術前術後の写真等は広告できない、とも書かれています。自由診療で写真を扱うなら、次の限定解除の要件が前提になります。
限定解除の要件(自由診療で写真や詳しい説明を出す場合)
広告可能事項の限定解除が認められるのは、次のすべてを満たした場合とされています。③と④は自由診療について情報を提供する場合に限ります。
① 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するものであること
医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること。
② 問い合わせ先を明示すること
表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること。問い合わせ先とは電話番号やEメールアドレス等をいう、とされています。
③ 治療内容と費用等の情報を提供すること(自由診療)
名称や最低限の内容・費用だけを示すのではなく、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間および回数を掲載すること。標準的な費用が明確でない場合は、最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)までの範囲を示すなどして分かりやすく示すこと。
④ 主なリスク・副作用等の情報を提供すること(自由診療)
利点や長所のみを強調せず、主なリスクや副作用などの情報も分かりやすく掲載すること。
ここで見落とされやすいのが①です。ガイドラインは、インターネット上のバナー広告や、検索サイトでスポンサーとして表示されるもの、検索サイトの運営会社に費用を支払うことで意図的に検索結果の上位に表示させたものは、①を満たさないと明記しています。同じ内容でも、自院サイトに置いた場合とリスティング広告として出した場合で、成立するかどうかが変わるということです。
「満足度」という数字の扱い
口コミを増やす話の延長で「満足度を出したい」となることがありますが、ここにも明確な線があります。ガイドラインは、患者満足度調査を実施している旨、当該調査の結果を提供している旨、または当該調査の結果の入手方法等については広告可能としつつ、当該調査の結果そのものについては広告が認められないとしています。
また事例解説書では、データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示す満足度の表示が、虚偽広告の事例として挙げられています。「調査をやっています」「結果はこちらで入手できます」までは書けても、数字そのものを掲げるのは別の話、という構造です。
もうひとつの法律:景品表示法のステルスマーケティング規制
口コミに対価を出す設計を考えるとき、医療法だけを見ていると片側しか見えません。消費者庁が所管する景品表示法では、令和5年10月1日から、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示が違反となっています。
消費者庁の解説では、口コミ投稿に当たって星5を付けることが条件とされている場合、事業者が表示の内容を決定しているといえるため「事業者の表示」に当たると考えられる、とされています。一方で、投稿内容についての指示が含まれず、割引程度の対価である場合は、表示内容の決定に関与しているとはいえず、通常は「事業者の表示」には当たらないとされています。責任を負うのは事業者であり、投稿した個人ではない点も明示されています。
注意したいのは、医療広告の規制と景品表示法の規制は別々に効くという点です。景品表示法の側で「事業者の表示に当たらない」と整理できたとしても、医療広告ガイドラインの側で誘引性が認められれば、体験談としての規制は別に働きます。片方をクリアしたから大丈夫、という読み方はできません。
整理:どこで判断が分かれるか
ここまでを、口コミ施策を設計するときの順番に並べ直すと、確認すべきことは3つに絞られます。
1. その口コミに、医療機関からの依頼・費用負担・謝礼が入っているか
入っていれば誘引性の側に寄ります。ここが最初の分岐で、以降のすべてに効きます。
2. その口コミを、自院の媒体に載せようとしていないか
自院サイトへの掲載は広告に該当します。転載・抜粋・アンケートの画像化・SNSでの引用は、いずれも事例解説書で禁止事例に挙げられています。
3. 写真や数字を出すなら、付帯情報と掲載場所まで設計しているか
治療前後の写真は治療内容・費用・主なリスク・副作用等の詳細な説明とセットで、かつ小さな文字やリンク先へ逃がさないこと。満足度は結果そのものを掲げないこと。
この3つで多くの施策は仕分けできます。逆に言えば、仕分けの結果として「自院サイトに患者さんの声を並べる」という定番の施策は、ほぼ取れなくなります。口コミを増やす取り組みの設計は、そこを前提に組み直す必要があります。
まとめ
口コミを増やす施策の可否は、ほぼ「誘引性」の一点で決まります。患者が自分の判断で書いた口コミは医療広告に該当しない。医療機関が依頼・費用負担・謝礼といった便宜を図った時点で広告の側に移り、体験談は内容にかかわらず掲載できなくなる。
そして自院サイトは例外ではありません。転載も、抜粋も、スタッフの体験談も、アンケートの画像化も、症例紹介への差し込みも、SNSでの引用も、すべて禁止事例として挙げられています。治療前後の写真だけは、治療内容・費用・主なリスク等の詳細な説明を付し、掲載場所にも配慮した場合という条件付きで扱いが変わります。
そのうえで、ここに書いたのは公表資料に明示されている範囲の整理であり、個別の表現が規制に触れるかどうかの判断ではありません。自院の掲載内容について結論を出すときは、所管の保健所や、医療広告に詳しい弁護士等の専門家に確認してください。ガイドラインや事例解説書は改正されるので、判断の前に最新版に当たることも合わせておすすめします。
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参照した一次情報
※ 本記事は公表資料の内容を整理したものであり、法的助言ではありません。医療広告ガイドラインおよび事例解説書は改正されることがあります。実際の掲載可否については、最新版を確認のうえ、所管の保健所や専門家にご相談ください。
よくある質問
患者が自分で書いた口コミは、医療広告ガイドラインの規制対象になりますか?
厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、個人が運営するウェブサイト、SNSの個人のページ、第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載について、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しないとされています。逆に、医療機関からの依頼に基づくものや、金銭等の謝礼を受けている、またはその約束がある場合には、誘引性を有するものとして取り扱うことが適当だとされています。個別の判断は所管の保健所や専門家にご確認ください。
口コミサイトに投稿された自院の口コミを、自院サイトに転載してよいですか?
厚生労働省の事例解説書では、口コミサイトから治療内容または効果に関する体験談に相当する口コミを転載して自院サイトに掲載する例が、広告が禁止される事例として挙げられています。さらに、医療機関にとって有利な口コミを抜粋して掲載する場合は誇大広告に該当するとされています。ガイドラインでも、医療機関が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容または効果に関する体験談は広告に該当し、その上で禁止されるとされています。
口コミサイトの運営者に、低評価の口コミの削除を依頼してもよいですか?
厚生労働省の事例解説書では、医療機関からの依頼によって口コミサイトの運営者が体験談の内容を改編したり、否定的な体験談を削除したり、肯定的な体験談を優先的に上部に表示するなど、体験談を医療機関の有利に編集している場合は医療広告に該当し、禁止される広告になるとされています。ただし、当該体験談が名誉毀損等の不法行為に当たる場合は、医療機関による削除等の依頼は医療法違反には当たらないとされています。
ビフォーアフター写真は掲載できませんか?
治療等の内容または効果について患者等を誤認させるおそれがある治療前後の写真等は、広告として認められません。一方でガイドラインは、術前または術後の写真に、通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合はこれに当たらないとしています。掲載場所にも配慮が必要で、リンク先のページに逃がしたり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載する形式は採用してはならないとされています。なお治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、限定解除の要件を満たさない場合は術前術後の写真等は広告できません。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。
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