司法書士はAIをどう使う?登記・相続・商業登記で任せる作業と、人が持つ判断
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
司法書士の業務は、AIに丸ごと置き換わるものではなく、作業の一部をAIに渡し、確認と責任を人が持つ形で変わっていきます。まず下書きと突合から、匿名化した案件で試すのが現実的です。
- AIが支えやすいのは、登記申請書類や相続関係説明図の下書き、添付書類の漏れの確認といった、書式が決まった作業です。
- 登記の代理、依頼者の本人確認、書類の最終確認と責任は、司法書士が持ちます。
- 依頼者の情報には守秘義務があります。外部のAIには、氏名や住所を伏せた形で入れます。
「司法書士 AI」で調べる人は、事務所でAIをどこに使えるのか、使うと何が危ないのか、そもそも仕事は残るのか、を知りたいはずです。この記事は、司法書士の業務を分けたうえで、AIに渡しやすい作業と人が持つ判断を整理します。
個別の登記や法令の解釈を示す記事ではありません。事務所の業務を組み立てる側の話です。
司法書士の業務のどこにAIが入るか
法務省は、司法書士の業務を次のように説明しています(法務省「司法書士」)。
- 登記・供託の手続の代理。不動産の権利に関する登記のほか、会社・法人の登記も含まれます。
- 裁判所、検察庁、法務局に提出する書類の作成。登記申請書や、売買契約書などの登記原因証書も含まれます。
- 登記・供託に関する審査請求の代理。
- 簡裁訴訟代理等関係業務。法務大臣が必要な能力を有すると認定した司法書士に限られます。
司法書士の業務のうち、AIが支えやすいのは、登記申請書など裁判所・法務局に提出する書類の下書きの部分です。登記・供託の代理や、法務大臣の認定を受けた司法書士に限られる簡裁訴訟代理等関係業務は、AIに渡せる性質のものではありません。
場面別:AIに任せる作業と、人が持つ判断
次の表は、事務所の現場で使い分けやすいように、作業ごとに整理した当社の見立てです。公的な基準ではありません。
| 場面 | AIに任せやすい作業 | 司法書士が持つもの |
|---|---|---|
| 不動産登記 | 申請書の下書き、必要書類の一覧づくり | 申請内容の確認、本人確認、申請の代理 |
| 相続手続 | 戸籍の読み取り補助、相続関係説明図・財産目録の下書き | 相続人の確定、依頼者への説明、例外の判断 |
| 商業登記 | 役員変更などの書式への当てはめ、議事録の下書き | 登記事項の判断、変更日の確認 |
| 書類の突合 | 添付書類の漏れ、記載の食い違いの洗い出し | 食い違いの原因の判断と訂正 |
戸籍や登記事項証明書のような画像・PDFは、AIが読み取る段階で誤ることがあります。読み取った文字は、原本と突き合わせる工程を必ず残します。読み取りの限界はOCRによる業務データ入力の考え方でも整理しています。
AIに入れてはいけない情報・任せてはいけない行為
司法書士には守秘義務があるため、外部の生成AIには依頼者の氏名・住所・物件の所在を伏せた形で入れます。「A様」「甲不動産」のような記号に置き換え、入力内容が学習に使われないかを契約で確認し、AIの出力は必ず原本と照らします。具体的には次の3点です。
- 氏名・住所・物件の所在は伏せる。「A様」「甲不動産」のような記号に置き換えて入れます。
- 入力内容が学習に使われるかを、契約で確認する。事務所の契約として設定できるものを選びます。
- AIが出した文面は、必ず原本と照らす。最終の責任は事務所にあります。
任せてはいけない行為は、依頼者の本人確認、登記申請の代理、申請内容の最終確認です。司法書士の業務のうちこれらは、AIが下書きを出した後も、司法書士自身が行います。
士業全般の守秘義務とAIの扱いは士業のAI顧問活用でも取り上げています。
事務所で試す手順:1つの作業で測る
- 件数が多く、書式が決まっている作業を1つ選ぶ(例:相続関係説明図の下書き)。
- 完了した案件を匿名化して、AIに下書きを出させる。
- 実際の成果物とのズレを「読み取り」「書式」「例外」に分けて記録する。
- 下書きの確認にかかった時間を、手作業の時間と並べて測る。
AIの進め方の全体像は生成AI内製化のロードマップにまとめています。
まとめ
司法書士の業務では、書式が決まった下書きと突合から、AIが入っていきます。登記の代理と最終の確認は人が持ち、依頼者の情報は伏せて入れます。SalesDockは、成長に管理が追いつかない中小企業の経営管理・業務・データの整備を、接続コンサルとして月額で支援しています。士業の事務所であれば、AIを使う前に、業務の手順と確認の流れを文章にして整える領域です。
よくある質問
司法書士の仕事はAIでなくなりますか?
司法書士の仕事がAIで丸ごとなくなるわけではありません。書類の下書きや突合はAIが支えやすくなる一方、依頼者の本人確認や登記申請の代理は司法書士が担います。法務省は司法書士の業務を、登記・供託の手続の代理、裁判所・検察庁・法務局へ提出する書類の作成、審査請求の代理、簡裁訴訟代理等関係業務としています。
登記申請書をAIに作らせてよいですか?
下書きの土台づくりには使えます。ただし申請書の内容の確認と申請は司法書士が行います。戸籍や登記事項証明書のような画像・PDFは、読み取りの段階で誤りが出ることがあるため、原本と突き合わせる工程を必ず残します。
依頼者の個人情報をChatGPTなどに入力してよいですか?
司法書士には守秘義務があるため、外部のAIには依頼者の氏名・住所・物件の所在を伏せた形で入れるのが基本です。事務所で使うAIの契約内容(入力内容が学習に使われるか)も先に確認してください。
司法書士事務所は、まず何から試せばよいですか?
件数が多く、書式が決まっている作業を1つ選びます。たとえば相続関係説明図の下書きです。直近の完了案件を匿名化して試し、AIの候補と実際の成果物のズレを記録して、かかった時間を手作業と並べて測ります。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。
CASE
実際の支援では、こう変わりました
人材紹介3ヶ月の伴走支援
サイトの文言変更を、担当者が一人で本番公開まで完了。
防災メーカー3ヶ月の伴走支援
見積書づくりで人が行うのは、粗利をどうするかの判断だけに。
外国人材の就職支援試作からの伴走支援
書類の回収・仕分けと履歴書づくりを、どこまで自動にし、どこを人が確認するかを決めて試作まで完了。