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業務改善

販売管理ソフトを入れても手作業が残るのはなぜか|転記が残る3か所

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この記事の情報源について

この記事は、各製品の提供元が公式サイトで公開している情報を読み比べて整理したものです。私自身は販売大臣をはじめとする個別の販売管理ソフトを導入・運用した実務経験がないため、使用感や現場での所感は書いていません。書いているのは、公開情報から読み取れる事実と、経営管理・データ設計の側から見た「どこを見て選ぶか」という判断軸までです。価格・仕様は改定されることがあるため、判断に用いる際は各提供元の最新の案内をご確認ください。

この記事のポイント

転記が残るのは、製品の性能が足りないからではなく、その作業が製品の境界の外にあるから。入口(注文の受け取り方)、出口(銀行と会計)、例外(値引き・返品・相殺)の3か所は、いずれも相手か制度が絡むため、自社の製品選びだけでは閉じない。

販売管理ソフトを入れたのに、事務の作業量が思ったほど減らない。この話は珍しくありません。そして多くの場合、製品の選択を間違えたわけではありません。

残る手作業には共通点があります。相手か制度が絡む場所にある、ということです。自社の中で完結する作業はソフトを入れれば減りますが、相手の都合や外部のルールが入る場所は、製品を替えても減りません。

残りやすい場所は、だいたい3か所に整理できます。入口、出口、例外です。

1か所目|入口 — 注文の受け取り方は製品の外にある

販売管理ソフトは、受注が入力されたあとの流れを整えます。ただ、その受注がどういう形で届くかは製品の外側の話です。

中小企業庁は、中小企業においてFAXや電話を用いて企業間での受発注取引が行われているケースが一定数あるとしたうえで、電子受発注への対応が進展しつつあるとして、2021年時点で受注側の48.5%が電子受発注に対応していると紹介しています(中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化」。出典は「令和3年度取引条件改善状況調査」)。

半数近くが対応しているとも読めますが、逆に言えば半数程度は電子化されていないということでもあります。FAXや電話で届いた注文は、誰かが読んで、内容を確認して、ソフトに入力する。この作業は販売管理ソフトを入れても消えません。

さらにやっかいなのが、取引先ごとにやり方が違う場合です。A社はFAX、B社はメールの添付ファイル、C社は自社のWeb発注システムにこちらがログインして拾いにいく。取引先が10社あれば入口が10通りあり、それぞれで受け取り方も項目の並びも違います。

導入前に数えること:受注の入口を経路別に数え、それぞれの月間件数を出す。件数の多い順に並べると、どこを電子化すれば効くかが見える。

見落としやすい経路:営業が口頭で受けてメモで渡すもの、既存客からの追加注文の電話、取引先のポータル画面。いずれも記録に残りにくく、集計から漏れる。

切り分けの目安:件数の多い1〜2社が電子化に応じてくれるなら効果は大きい。応じてもらえないなら、その分は入力作業として残る前提で人員を組む。

EDIや共通の受発注の仕組みをどこまで使えるかは、「販売管理と受発注システムはどこまで重なるか」で扱っています。FAX受注そのものをどう減らすかは「FAX受注のデジタル化」でも整理しています。

2か所目|出口 — 入金消込は相手のデータに依存する

出口側で最も時間を使うのが入金の消し込みです。請求した金額と、通帳に入ってきた金額を突き合わせる作業。ここが自動化されない理由は、単純です。振込データに、どの請求に対する入金かという情報が乗っていないからです。

この問題に対する公的な仕組みが、全国銀行資金決済ネットワークが運営するZEDI(全銀EDIシステム)です。振込に金融EDI情報を添付できる仕組みで、業界横断的な標準として「DI-ZEDI」が制定されています。DI-ZEDIはデジタルインボイス標準仕様(JP PINT/JP BIS)に対応したフォーマットとされ、公式サイトのFAQには次の8項目が示されています。

項番項目
1請求書タイプコード
2請求書番号
3請求書発行日
4請求金額(税込)
5売手(受注)企業の登録番号
6買手(発注)企業の登録番号
7振込手数料負担
8備考

ここで重要なのは、同じFAQに書かれている次の内容です。「取引先(受取企業)がZEDIに対応していない場合でも、これまでどおり銀行口座に振込送金されますので問題ありません。ただし、ZEDIに対応していない取引先(受取企業)は金融EDI情報を確認することはできません」。また、売掛金の消込管理に活用する場合は、消込に必要なキー情報を何にするかをあらかじめ取引先と相談して決める必要があるとも書かれています(全国銀行資金決済ネットワーク「全銀EDIシステムとは」)。

つまり、消し込みの自動化は自社の製品選びだけでは閉じない。相手が対応していて、かつ何をキーにするかを合意している必要があります。販売管理ソフトの機能表に「入金消込」と書いてあっても、その前提が揃っていなければ、結局は目視で突き合わせることになります。

製品側でも、この機能は特別扱いされています。応研の販売大臣AXの価格ページでは「入金支払消込オプション」が本体とは別の有償オプションとして掲載されており、クラウド版は販売大臣AX Super クラウド専用(1年22,000円・税込)、パッケージ版はスタンドアロン132,000円(税込)から並んでいます。標準機能ではなく、選ぶグレードが変わる項目だということです。

振込手数料の扱いも消し込みを止めます。請求額から振込手数料が差し引かれて入金されると、金額が一致しません。DI-ZEDIの項目に「振込手数料負担」が入っているのは、この突き合わせが実務上の問題であることの表れとも読めます。

3か所目|例外 — 毎月数件だけ出るものが全部を止める

3つ目は、件数としては少ないのに時間を食う場所です。値引き、返品、相殺、前受金、送料の立替、サンプル出荷。どの会社にも、毎月数件だけ発生する処理があります。

これらは標準的な業務フローから外れるため、製品の標準機能でそのまま扱えないことがあります。そのとき何が起きるか。例外がExcelに逃げる。そして逃げた先で管理が始まり、月末にソフト側の数字とExcel側の数字を突き合わせる作業が生まれます。

ソフトを入れる前と後で作業量が変わらない、という状態はこうしてできます。入力先が増えたぶん、むしろ増えることもあります。

逃がし先は3つしかない

① 製品の機能で吸収する(オプションやカスタマイズが要ることがある)/② 運用ルールで発生させない(例:値引きは単価を変更する形に統一し、値引行を使わない)/③ 別台帳で管理し、月次でまとめて反映する。

導入前にやること

直近3か月の伝票を見て、標準フローから外れた処理を全部書き出す。件数と、1件あたりにかかっている時間も添える。多くても10種類程度に収まるはずです。

デモで聞くこと

書き出した10種類を持って「これはどの画面でやりますか」と聞く。機能一覧を眺めるより、この10問のほうが製品の向き不向きが出ます。

②の「発生させない」は軽視されがちですが、効きます。例外の多くは過去の個別対応の積み重ねで、今も必要かどうかを誰も確認していないことがある。導入は、それを棚卸しするタイミングとしても使えます。

そのうえで、減る作業もある

3か所を挙げましたが、販売管理ソフトが効かないという話ではありません。自社の中で閉じている作業は素直に減ります。

受注から売上、売上から請求への転記。同じ内容を見積書・納品書・請求書に3回書く作業。月末に請求書をまとめて発行する作業。在庫の理論値の計算。このあたりは、伝票が1本の流れでつながっていれば人が触る必要がありません。

応研の販売大臣AXは特長として「受発注同時入力/売上仕入同時入力」を挙げており、弥生販売26は「集計・分析」レポートの標準搭載を機能として挙げています。OBCの商奉行iクラウドの主な機能には受注管理・売上処理・請求処理・入金処理が並びます。いずれも社内で完結する範囲です。

導入の効果を見積もるときは、この社内で閉じている作業だけを対象に計算するほうが実態に近くなります。入口・出口・例外の3か所を効果に含めると、想定より減らなかったという結果になりやすい。

システムがあるのに転記が残る構造は、業種を問わず起きます。不動産の現場で同じことが起きる例は「不動産の業務ソフトに残る手作業」で、転記そのものをどう減らすかは「Excel転記作業の自動化」で扱っています。

まとめ

残る手作業は3か所です。入口は、注文がFAXや電話で届く限り入力が残る。中小企業庁の紹介では、2021年時点で受注側の電子受発注対応は48.5%です。出口は、入金消込が相手の振込データに依存する。ZEDIの仕組みはありますが、取引先が対応していなければ金融EDI情報は確認できません。例外は、標準フローから外れた処理がExcelに逃げる。

いずれも製品の性能の問題ではなく、境界の問題です。だから導入前にやることは、製品の比較よりも、この3か所の棚卸しになります。入口を経路別に数える。消込のキーを取引先と決められるか確認する。例外を10種類書き出す。

そのうえで、減る作業だけを効果として見積もる。そうすれば、導入後に「思ったより減らなかった」とはなりません。

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※ 本記事の統計・仕組みに関する記述は、中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化」および全国銀行資金決済ネットワーク「全銀EDIシステムとは」の2026年8月11日時点の掲載内容に基づきます。電子受発注の対応率48.5%は同ページが引用する「令和3年度取引条件改善状況調査」(中小企業庁、2021年)の数値で、2021年時点のものです。製品機能・価格に関する記述は応研「使用機器・価格|販売大臣AX」ほか各社公式ページによります。

よくある質問

販売管理ソフトを入れても、なぜ入力作業が残るのですか?

注文の受け取り方が製品の外側にあるためです。中小企業庁は、中小企業においてFAXや電話を用いた企業間の受発注取引が一定数あるとしたうえで、2021年時点で受注側の48.5%が電子受発注に対応していると紹介しています(令和3年度取引条件改善状況調査)。裏を返すと半数程度は電子化されていないということで、FAXや電話で届いた注文は、誰かが読んでソフトに入力することになります。この入力は販売管理ソフトを入れても消えません。

入金消込は販売管理ソフトで自動化できますか?

製品側に機能があっても、相手側の振込データに情報が乗っていなければ自動では突き合わせられません。全国銀行資金決済ネットワークのZEDI(全銀EDIシステム)は振込に金融EDI情報を添付する仕組みで、標準仕様のDI-ZEDIには請求書番号や登録番号などの項目が定義されています。ただし公式サイトのFAQには、取引先(受取企業)がZEDIに対応していない場合は金融EDI情報を確認できないと明記されています。消込の自動化は自社の製品選びだけでは完結せず、取引先との合意が要る領域です。

導入前に決めておくべきことは何ですか?

例外の逃がし先です。値引き、返品、相殺、前受金、送料の立替など、毎月数件だけ発生する処理を製品の標準機能で扱えないとき、どこで吸収するかを先に決めます。決めずに導入すると、例外が全部Excelに戻り、結果としてソフトとExcelの二重管理になります。逃がし先の選択肢は、製品の機能で吸収する・運用ルールで発生させない・別台帳で管理して月次でまとめて反映する、の3つです。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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