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複式簿記とは?単式簿記との違いと仕訳の考え方を例で解説
複式簿記は、1つの取引を借方と貸方の2面で記録し、貸借対照表と損益計算書を作れるようにする記帳方法です。単式簿記との違い、仕訳の例、経営者が押さえる点を解説します。
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執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
複式簿記は、1つの取引を「お金がどう動いたか」と「なぜ動いたか」の2面で記録する方法です。左側を借方、右側を貸方と呼び、金額は必ず一致します。この仕組みで、貸借対照表(財産の状態)と損益計算書(利益)を同じ帳簿から作れます。
- 1つの取引を借方と貸方の2面に、同じ金額で記録します。
- 単式簿記は現金の出入りだけ、複式簿記は財産の状態と利益の両方が分かります。
- 貸借が合わなければ入力の誤りに気づけますが、合っていても科目の誤りは見つかりません。
単式簿記との違いは「原因まで記録するか」です
単式簿記は、現金や預金の出入りを1行ずつ書く家計簿のような記帳です。複式簿記は、お金の動きに加えて、その原因(売上なのか、仕入なのか、借入なのか)も同時に記録します。
たとえば備品を現金で買ったとき、単式簿記では「現金が減った」で終わります。複式簿記では「現金が減り、同じ額の備品や経費が増えた」と2面で残すため、後から財産の状態と利益の両方を追えます。
複式簿記と単式簿記の違い(記録の範囲・書類・手間)
| 比べる点 | 単式簿記 | 複式簿記 |
|---|---|---|
| 記録するもの | 現金・預金の出入り | 出入りと、その原因(資産・負債・純資産・収益・費用の増減) |
| 1つの取引の書き方 | 1行 | 借方と貸方の2面で同額 |
| 作れる書類 | 収支の一覧が中心 | 貸借対照表と損益計算書 |
| 入力の誤りの見つけやすさ | 見つけにくい | 貸借の合計が合わない誤りには気づける(科目の誤りなどは見つからない) |
| 手間 | 少ない | 科目の判断が要る。会計ソフトで軽くできる |
複式簿記の利点は、財産の状態と利益を同じ帳簿から出せることと、貸借の合計が合わない誤り(金額の入力ミスや転記漏れなど)に気づけることです。ただし、科目の選び間違いや借方・貸方に同額で入った誤りは合計が合うため、試算表だけでは見つかりません。一方で、取引ごとに科目を決める判断が必要になります。複式簿記は売掛金・買掛金などの科目を使えるため、発生主義(現金の動きでなく取引が発生した時点で記録する考え方)で売上や費用を記録しやすくなります。
勘定科目は5つのグループに分かれます
仕訳で使う勘定科目は、資産・負債・純資産・収益・費用の5グループに分かれます。それぞれ、借方と貸方のどちらに書くと増えるかが決まっています。
| グループ | 科目の例 | 増えるとき | 減るとき |
|---|---|---|---|
| 資産 | 現金、預金、売掛金 | 借方 | 貸方 |
| 負債 | 買掛金、借入金 | 貸方 | 借方 |
| 純資産 | 資本金 | 貸方 | 借方 |
| 収益 | 売上高 | 貸方 | 借方 |
| 費用 | 消耗品費、仕入 | 借方 | 貸方 |
勘定科目は、資産・費用なら増えたときに借方、負債・純資産・収益なら増えたときに貸方に書きます。減るときはその逆です。迷ったら、まず科目が5グループのどれかを確認します。
すべての取引は、借方と貸方の組み合わせが決まった取引の8要素で説明できます。資産・費用の増加と、負債・純資産・収益の減少が借方、その逆が貸方です。貸借平均の原理とは、どの取引も借方と貸方を同額で記録するため、全取引の借方合計と貸方合計が必ず一致するという原理です。試算表で貸借の合計を突き合わせるのは、この原理を使った確認です。
仕訳の例:3つの取引を2面で書きます
仕訳は、取引を「借方の科目・金額」と「貸方の科目・金額」にして1行で書いたものです。借方と貸方の合計は、必ず同じ金額になります。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 文房具を現金3,000円で買った | 消耗品費 3,000円 | 現金 3,000円 |
| 商品を100,000円で売り、代金は後払い | 売掛金 100,000円 | 売上高 100,000円 |
| 売掛金100,000円が預金に入金された | 普通預金 100,000円 | 売掛金 100,000円 |
商品を後払いで売ると、売掛金が借方に増えます。入金されたときに、同じ売掛金が貸方に減ります。売上の計上と入金を別々の仕訳で追えるのが、複式簿記の実務上の利点です。
仕訳から決算書までは、4つの段階でつながります
複式簿記では、取引を仕訳にしたあと、科目ごとに集計して決算書にします。流れは、仕訳帳、総勘定元帳、試算表、決算書の順です。
- 仕訳帳:取引を日付順に、借方と貸方の2面で書き並べた帳簿です。
- 総勘定元帳:仕訳を勘定科目ごとに集め直した帳簿で、科目ごとの増減と残高が分かります。
- 試算表:全科目の残高を一覧にした表です。借方の合計と貸方の合計を突き合わせます。
- 決算書:試算表をもとに、貸借対照表(財産の状態)と損益計算書(利益)を作ります。
仕訳帳と総勘定元帳は、複式簿記の中心になる主要簿です。これに加えて、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳などの補助簿を使うと、取引先ごとの残高や現金の動きを細かく追えます。補助簿の合計は、総勘定元帳の該当科目の残高と一致するはずです。
試算表は、日々の仕訳と決算書の間にある確認表です。総勘定元帳に集めた現金、売掛金、借入金、売上高、費用などの残高を並べ、借方と貸方の合計が一致するかを確かめます。合計が一致しなければ、転記漏れや金額の入力誤りを探します。
試算表のうち、資産・負債・純資産の残高は貸借対照表へ、収益・費用の残高は損益計算書へつながります。つまり、1件ずつの仕訳が科目別の残高になり、その残高を組み替えることで、期末の財産の状態と期間中の利益を示す決算書になります。
試算表で借方と貸方の合計が一致していても、科目の選び間違いや同じ取引の二重計上は見つからないことがあります。貸借の一致を確認したうえで、残高の内容も確かめる必要があります。中小企業の決算書作成を含む会計の考え方は、中小企業庁の中小会計要領のページで公開されています。
経営者が複式簿記を知っておく理由は3つあります
入力そのものは会計ソフトや担当者が行うことが多く、経営者が毎日仕訳を切る必要はありません。それでも基本を押さえておく理由は次の3つです。
- 決算書が読める:貸借対照表と損益計算書が、同じ仕訳から出ていると分かります。
- 誤りに気づける:借方と貸方の合計が合わなければ、金額の誤りや入力の欠けがあります。ただし、合っていても科目の誤りや二重計上は見つかりません。会計ソフトでは、貸借が合わない仕訳はそもそも登録できないものが多くあります。
- 制度に対応できる:個人事業の青色申告特別控除は、最高額の適用条件のひとつが複式簿記での記帳です。要件は国税庁の案内で最新を確認してください。
個人事業主の青色申告では、記帳方法で控除額が変わります
個人事業主が青色申告をするとき、記帳の水準によって所得から引ける青色申告特別控除の額が変わります。個人事業主が青色申告で55万円または65万円の特別控除を受けるには、どちらも複式簿記(正規の簿記の原則)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を申告書に添付することが条件です。なお不動産所得の場合、この2つの控除は事業的規模でなければ受けられません。
| 控除額 | 記帳の条件 | 追加の条件 |
|---|---|---|
| 65万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付 | 電子帳簿保存、またはe-Taxでの申告など |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付 | 期限内の申告など |
| 10万円 | 上の条件に当てはまらない青色申告者 | 簡易な記帳でも可 |
表は国税庁『青色申告特別控除』の要点を短くしたものです。電子帳簿保存の要件や届出、現金主義を選んだ場合の扱いなど細かい条件は、申告する年分の国税庁の案内か税理士で確認してください。
現場で手間がかかるのは、科目の判断と元の請求書です
複式簿記の流れが分かっても、実際の記帳では、取引をどの勘定科目にするか、請求書や領収書の内容をどう読み取るかという判断が残ります。判断が曖昧な取引は、使う科目と確認する証憑を担当者や税理士と決めておくと、仕訳から試算表までの集計をそろえやすくなります。
請求書の読み取りや仕訳の補助にAIを使う場合の進め方は、経理仕訳をAIで先処理する運用と、会計AIを任せる前の準備にまとめています。
来週までに試す3つの確認
- 直近1か月の取引から5件を選び、借方・貸方に書き分けてみます。
- 会計ソフトの仕訳帳で、借方と貸方の合計が一致しているか確認します。
- 科目の迷いが多い取引を書き出し、担当者・税理士と判断ルールを1枚にします。
会計処理や税務の最終判断は、税理士などの専門家に確認してください。会計の位置づけは財務会計と管理会計の違い、ソフト選びは財務会計システムの選び方で整理しています。
確認した一次情報
- 国税庁『青色申告特別控除』 — 複式簿記での記帳が控除の条件に含まれることを確認しました。
- 中小企業庁『中小会計要領』 — 中小企業向けの会計の指針が公開されていることを確認しました。
制度、会計処理、法令の最終判断は、専門家と最新の公式資料で確認してください。本記事は個別の税務判断を代行するものではありません。
経理の入力を、数字が判断に届く形へつなぐ
SalesDockは、成長に経営管理と業務の整理が追いつかない中小企業を支援しています。仕訳や請求書の流れのどこで手間と誤りが出ているか、60分で一緒に切り分けます。
無料で相談するよくある質問
複式簿記とは何ですか?
1つの取引を「お金の出入り」と「その原因」の2面から、借方と貸方に同じ金額で記録する方法です。貸借対照表と損益計算書を作れます。
単式簿記との違いは何ですか?
単式簿記は現金や預金の出入りを1行で記録します。複式簿記は資産・負債・純資産・収益・費用の動きまで記録するため、財産の状態と利益を両方出せます。
複式簿記は会計ソフトを使えば知らなくてもよいですか?
入力の手間はソフトが減らしますが、科目の選び方や貸借のずれを見抜くには基本の理解が要ります。仕訳の判断が必要な場面は残ります。
個人事業主も複式簿記が必要ですか?
必須ではありませんが、青色申告特別控除の最高額を受ける条件のひとつが複式簿記での記帳です。控除の細かい要件は国税庁の案内か税理士に確認してください。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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