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クラウド勤怠とは何か—中小企業の費用・法令要件・つまずく場所を一次情報で整理

12分で読める

先に結論

クラウド勤怠は、勤怠管理のソフトを自社サーバーに置かず、ブラウザやスマホから打刻・申請・集計を行う形のことです。価格は1人あたり月額300円前後を公式に提示している製品があり、費用そのものは中小企業でも詰まる場所ではありません。詰まるのは、自社の勤務ルールが製品の設定項目に収まるかどうかと、導入後に誰が何を確認するかの割り当てです。

「クラウド勤怠」で調べる方の多くは、紙のタイムカードやExcelでの集計が限界に来ていて、そろそろ何か入れないといけない、という段階だと思います。この記事では、よく聞かれる質問に順番に答えながら、価格の実際と、法令上そもそも何を満たさないといけないのか、そして入れた後に残る作業を整理します。

価格と法令要件については、提供元の公式ページと厚生労働省の資料にあたって確認できたものだけを書きます。出典のURLは記事中と末尾にまとめて置いています。

クラウド勤怠管理システムとは何ですか

勤怠管理のソフトウェアを自社のサーバーに置かず、提供元のサーバー上で動かして、ブラウザやスマートフォンから打刻・申請・集計を行う形の勤怠管理システムです。「クラウド型勤怠管理システム」「クラウド型の勤怠管理システム」という言い方もされますが、指しているものは同じです。

従来型(自社設置型・オンプレミス型)との違いは、置き場所と更新の担い手です。

比較項目クラウド型自社設置型
サーバー提供元が持つ自社で用意して運用する
費用の出方人数に応じた月額(初期費用0円を掲げる製品が多い)導入時にまとめて。以後の保守は別
法改正への対応提供元の更新で反映される改修の要否と費用を都度判断する
自社ルールの反映用意された設定項目の範囲まで改修すれば反映できるが、費用と期間がかかる
事業場外・在宅の打刻標準で対応している製品が多い外部から接続する仕組みを別に用意する

クラウドで業務システムを使うこと自体は、もう例外的な選択ではありません。総務省「令和7年版 情報通信白書」では、企業のクラウドサービス利用率は2024年時点で80.6%と示されています(原典は通信利用動向調査)。つまり判断材料は「クラウドでいいのか」ではなく、「どの製品が自社のルールに合うか」に移っています。

クラウド型の勤怠管理システムはいくらくらいしますか

1人あたり月額300円前後を公式に提示している製品があります。2026年8月13日時点で各社の公式料金ページに書かれている内容は次の通りです。

製品公式ページの記載初期費用・無料期間
KING OF TIME「300円/1人(月額・税別)」初期費用0円/30日間無料
freee勤怠管理Plus「1ユーザー 月額300円」初期費用ゼロ
マネーフォワード クラウド勤怠年払いでひとり法人プラン2,480円/月、スモールビジネスプラン4,480円/月、ビジネスプラン6,480円/月。「6名以上からは300円/名」1ヶ月無料

ここで見ておきたいのは、金額よりも課金の形が2種類あることです。人数だけで決まる形と、基本料金があって一定人数を超えると1人ずつ加算される形があります。従業員が5人の会社と50人の会社で、有利になる形が入れ替わります。人数が少ないうちは人数課金型が安く、他の労務・給与機能とまとめて使うなら基本料金型のほうが結果的に安く収まることがあります。

一方で、公式ページに書かれていない費用もあります。ICカードリーダーや生体認証端末などの打刻機器を買う場合の代金、初期設定を提供元や代理店に依頼する場合の費用、給与ソフトとの連携を作り込む場合の費用です。この3つは製品ページの月額には含まれていないことが多いので、見積もりを取るときに分けて聞くのが確実です。見積もりの読み方はシステム見積もりのセカンドオピニオンで観点を整理しています。

価格は変わるので、必ず公式で確認してください

上の金額は2026年8月13日時点で各社の公式ページに掲載されていた記載です。プラン構成も価格も改定されます。社内の稟議に使う数字は、この記事ではなく提供元の料金ページを見て入れてください。

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クラウド型勤怠管理システムのメリットは

一番大きいのは、打刻の記録が客観的なデータとして自動的に残ることです。これは便利さの話であると同時に、法令上求められていることでもあります。

2019年4月1日から、労働安全衛生法とその規則により、すべての労働者(高度プロフェッショナル制度対象者を除く)について「労働時間の状況」を把握することが義務づけられています。把握の方法は原則として客観的な方法(タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など)とされ、やむを得ず客観的な方法で把握し難い場合にのみ自己申告制も可、という立て付けです。

重要なのは、その「やむを得ない場合」の範囲が狭く示されている点です。厚生労働省の資料では、次の場合は客観的に把握する手段がないとはいえない、と明記されています。

「客観的に把握する手段がない」とはいえない場合

  • 事業場外から社内システムにアクセスが可能
  • タイムカード等のデータがある
  • 事業者の現認による把握が可能

出典:浜松労働基準監督署「労働時間の状況の把握が義務化されています!」(安衛法66条の8の3、安衛則52条の7の3、H30.12.28基発1228第16号)

直行直帰や在宅勤務があるから自己申告にしている、という会社は少なくありません。ただ、社外から社内システムに入れる環境がすでにあるなら、それは自己申告でよい理由にならないと読めます。逆に言うと、クラウドで打刻できる環境を持つこと自体が、この要件に応える手段になる。ここがクラウド勤怠の一番実務的なメリットです。

集計が自動化されることも効きます。労働時間の状況からは、月1回以上・一定の期日を定めて時間外・休日労働時間を算定する必要があり、月80時間を超えた労働者には本人へ速やかに通知しなければなりません。手集計だとこの締めが月末にまとめて発生しますが、日々の打刻がデータで入っていれば、超えそうな人を月の途中で見つけられます。

クラウド型勤怠管理システムのデメリットは

価格が安いぶん、合わなかったときのしわ寄せが運用側に来ます。実際に相談を受けて多いのは次の4つです。

① 自社の勤怠ルールが設定項目に収まらない

クラウド型は用意された設定の範囲で運用します。変形労働時間制の独自の締め方、職種ごとに違う手当の付き方、日をまたぐシフトの扱いなど、自社固有のルールが表現できないと、その部分だけ別のExcelで管理することになります。導入したのに二重管理が残る、という状態はここから生まれます。

② 障害時に打刻できない

自社の通信が落ちても、提供元側で障害が起きても打刻が止まります。止まったときにどう記録して後から入れるか、その手順を決めていないと、事後の修正申請が大量に発生します。

③ 人数が増えると費用が比例して増える

人数課金は少人数のうちは安く見えますが、採用が進むと素直に増えます。初期費用が0円である代わりに、費用は使い続ける限り発生し続ける形です。3年、5年のスパンで見た総額で比べておくほうが判断を間違えません。

④ 記録の保存と取り出しが提供元の仕様に依存する

把握した労働時間の状況の記録は、作成して3年間保存する必要があります。解約したときに過去分をどの形式で取り出せるのか、取り出したものが保存要件を満たす形になっているのかは、契約前に確認しておくところです。

もうひとつ、デメリットというより誤解として多いのが「入れれば義務を満たせる」という受け取り方です。厚生労働省の資料では、客観的な方法で把握できる場合に自己申告制だけで労働時間の状況を把握することは認められないとされる一方で、客観的な記録と自己申告の間にズレが生じている場合には、その理由を労働者に確認し、未申請の労働時間を把握したときは労働時間として適正に算定すること、確認した結果も記録することが求められています。ツールは記録を作るところまでで、確認して埋める作業は残ります。誰がいつ見るかを決めずに導入すると、ズレたまま数字だけが溜まっていきます。

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クラウド勤怠管理システムのシェアは

公的機関が公表しているクラウド勤怠のシェア統計は、こちらで確認できた範囲では見つけられませんでした。「シェアNo.1」として流通しているのは、ベンダーが調査会社の有償レポートを根拠に自社サイトで表示している順位です。

たとえばKING OF TIMEは、公式サイトで「富士キメラ総研『ソフトウェアビジネス新市場 2026年版』勤怠管理ソフトSaaS/PaaS市場 利用ID数 2025年度実績 ベンダーシェア」を出典としてシェアNo.1と表示しています。出典が明示されているのは誠実な書き方ですが、順位の元になった数値そのものは有償レポート側にあり、こちらでは確認できません。

市場そのものの規模について、公開されている一次情報として近いのは富士経済グループのプレスリリースです。2024年8月14日公表の「ソフトウェアビジネス新市場 2024年版」では、労務管理(SaaS/PaaS)の2028年度の市場を940億円、2023年度比3.9倍と予測しています。これは勤怠管理単体の数字ではなく労務管理としての区分なので、そのまま勤怠管理の市場規模として使うことはできません。

実務としては、シェアは「その製品がすぐに終わらないか」を推し量る材料にはなりますが、自社に合うかどうかとは別の話です。次のランキングの話と合わせて、判断材料の順番を整理します。

クラウド勤怠管理システムでおすすめのランキングは

この記事では順位付けをしていません。比較サイトのランキングは掲載条件や広告出稿の影響を受けることがあり、順位の算出方法が明示されていないものも多いためです。順位を見て絞るより、次の順番で自社の条件に照らすほうが早く決まります。

無料期間中に確かめる順番

  1. 一番面倒な勤務パターンを1つ選んで登録する。平均的なパターンではなく、変形労働時間制、深夜・休日をまたぐシフト、直行直帰など、いま手作業で吸収しているものを選ぶ
  2. そのパターンで1か月ぶんの打刻を入れ、集計まで通す。途中で手入力の補正が必要になったら、それが導入後も毎月残る作業になる
  3. 給与ソフトに渡す形で出力してみる。項目が足りない、並びが合わない、といったズレはこの段階でわかる
  4. 現場の人に打刻してもらう。管理側の画面が良くても、打刻が面倒だと打刻漏れが増えて修正申請が増える
  5. 解約時のデータ持ち出し方法を問い合わせる。3年間の保存義務がある記録なので、出せる形式を書面で確認しておく

2番目で引っかかる会社が多いです。逆に言えば、無料期間に平均的なパターンだけ試すと、導入後に一番困る場所が見つからないまま契約することになります。

既製のクラウド勤怠で足りなくなるのはどんなときか

ほとんどの会社は既製のクラウド勤怠で足ります。人数課金で月数千円から始められて、法改正の追随も提供元がやってくれるので、これを自前で作る理由は基本的にありません。

足りなくなるのは、勤怠ルールそのものが会社の運営の一部になっている場合です。当社で医療・美容分野の医療法人向けに勤怠システムを開発した事例では、既製の勤怠ツールを入れていたものの、自社独自の勤怠ルールを製品側で表現できず、管理したい情報も項目として持てない状態が続いていました。結果としてツールの外で別管理が発生し、運用側でその差を吸収し続けていました。

このケースでは、ツールに業務を合わせるのをやめて、自社のルールがそのまま乗る形で勤怠システムを開発しています。スマホからの打刻に対応し、申請から承認までを同じ場所で完結させました。他の事例は導入事例のページに置いています。

判断の順番としては、まず既製品を無料期間で試す。上の5ステップで2番目に引っかかり、その補正作業が毎月まとまった時間になるなら、そこで初めて作る選択肢が出てきます。最初から作る話にするのはおすすめしません。Excelから何かに移す判断の基準はExcelでの管理、いつ卒業すべき?に整理しています。

出典・一次情報

取得日は2026年8月13日。価格・プラン構成・法令の運用は変わります。判断の前に公表元でご確認ください。

まとめ

クラウド勤怠は、勤怠管理のソフトを自社サーバーに置かず、ブラウザやスマホから打刻・申請・集計を行う形のことです。1人あたり月額300円前後を公式に提示している製品があり、初期費用0円を掲げるものも多いので、費用が導入の障壁になることは中小企業でも多くありません。

一方、2019年4月から労働時間の状況の把握が義務化され、原則は客観的な方法とされています。社外から社内システムに入れる環境があるなら、自己申告のままでよい理由にはなりにくい。この点だけでも、打刻をデータで残す仕組みを持つ意味はあります。

製品選びは順位ではなく、自社の一番面倒な勤務パターンが設定項目に収まるかで決めるのが確実です。無料期間にそこを試して、毎月の補正作業がどれだけ残るかを見てから契約する。そのうえでどうしても収まらない部分が業務の中心にあるなら、そこだけ作るという選択肢が出てきます。

よくある質問

クラウド型の勤怠管理システムはいくらくらいしますか

1人あたり月額300円前後を提示している製品があります。KING OF TIMEは公式ページで「300円/1人(月額・税別)」「初期費用0円」「30日間無料」と案内しています。freee勤怠管理Plusも公式の料金ページで「1ユーザー 月額300円」「初期費用ゼロ」と記載しています。一方、マネーフォワード クラウド勤怠のように基本料金+従量課金の形もあり、公式の料金ページではひとり法人プラン2,480円/月、スモールビジネスプラン4,480円/月、ビジネスプラン6,480円/月(いずれも年払い時)で「6名以上からは300円/名」と案内されています。人数課金か基本料金込みかで、少人数のときの総額がかなり変わります。

クラウド勤怠管理システムとは何ですか

勤怠管理のソフトウェアを自社サーバーに置かず、提供元のサーバー上で動かして、ブラウザやスマートフォンから打刻・申請・集計を行う形の勤怠管理システムです。従来の自社設置型(オンプレミス型)と違い、自社でサーバーを用意せず、法改正への対応も提供元の更新で反映されます。「クラウド型勤怠管理システム」「クラウド型の勤怠管理システム」も同じものを指しています。

クラウド型勤怠管理システムのメリットは

打刻の記録が客観的なデータとして自動で残ること、集計が自動化されること、事業場外や在宅の労働時間も同じ仕組みで把握できることです。厚生労働省の資料では、労働時間の状況は原則として客観的な方法(タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など)で把握することとされており、「事業場外から社内システムにアクセスが可能」な場合は客観的に把握する手段がないとはいえないと明記されています。クラウドで打刻できる環境を持つこと自体が、この要件に応える手段になります。

クラウド型勤怠管理システムのデメリットは

自社の勤怠ルールが製品の設定項目に収まらないと、運用側で吸収する手間が残ることです。他に、通信やサービス側の障害時に打刻ができなくなること、人数課金のため従業員が増えると費用が比例して増えること、記録の保存や取り出しを提供元の仕様に依存することがあります。労働時間の状況の記録は3年間保存する必要があるため、解約時にデータをどう持ち出せるかは契約前に確認しておくところです。

クラウド勤怠管理システムのシェアは

公的機関が公表しているクラウド勤怠のシェア統計は、こちらで確認できた範囲では見つけられませんでした。市場シェアとして流通しているのは、ベンダーが調査会社の有償レポートを根拠に自社サイトで表示している順位です。たとえばKING OF TIMEは、富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2026年版」勤怠管理ソフトSaaS/PaaS市場 利用ID数 2025年度実績 ベンダーシェアを出典としてシェアNo.1と表示しています。順位の元になった数値そのものは公開されていないため、選定の根拠にはしにくい情報です。

クラウド勤怠管理システムでおすすめのランキングは

順位そのものより、自社の勤怠ルールが設定項目に収まるかで決まります。比較サイトのランキングは掲載条件や広告出稿の影響を受けることがあり、順位の算出方法が明示されていないものも多いためです。この記事では順位付けはしていません。代わりに、無料期間中に自社の一番面倒な勤務パターン(変形労働時間制、深夜・休日をまたぐシフト、直行直帰など)を実際に登録してみて、追加入力なしで集計まで通るかを確かめる進め方を書いています。

既製のクラウド勤怠を入れれば、労働時間の把握義務は満たせますか

打刻の仕組みを入れただけでは足りません。厚生労働省の資料では、客観的な方法で把握できる場合に自己申告制だけで労働時間の状況を把握することは認められないとされ、記録の作成と3年間の保存、月1回以上・一定の期日を定めた時間外・休日労働時間の算定、月80時間を超えた労働者への速やかな通知まで求められています。ツールを入れた後に、誰がいつ何を確認するかという運用の割り当てが必要です。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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